「急な不機嫌」や「パニック」の原因は頭痛?頭痛専門医に学ぶ、子どものSOSへの気づき方【学会レポート2】

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神経発達症(発達障害)と頭痛の深い関係


一般的な子どもの頭痛の7〜8割は、生活へのアドバイスや適切な薬物療法で改善に向かいます。しかし、なかなか治らない難治例の背景には、さまざまな共存症が隠れていることが多いと下村先生は指摘しました。難治性の慢性連日性頭痛の背景として、以下のような要因が挙げられます。

    ●起立性調節障害
    ●神経発達症(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)など)
    ●睡眠障害
    ●不登校や心理社会的要因
    ●精神疾患や環境要因

海外のデータ等によると、頭痛の症状がある子どもは神経発達症を共存している割合が高く、逆にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のある子どもは、一般人口に比べて頭痛の症状が出やすいことが分かっています。特にASDのお子さんは、感覚過敏の影響もあり、慢性的な痛みを訴えやすい傾向があるそうです。

神経発達症と頭痛が合併しやすいメカニズムは完全に解明されていませんが、

    ●感覚処理の苦手さや感覚過敏
    ●特定の神経伝達物質(ドーパミンなど)の機能的な特徴
    ●衝動を抑えることの難しさや、ストレス耐性の低さ
    ●不安を抱えやすい特性

などの共通項が背景にあると考えられています。

先生の臨床経験上、片頭痛の症状がある子どもには、ある共通した性格傾向が見られるといいます。

それは、非常に真面目な子が多く、学級委員長やクラブの部長などを務めていたり、周囲の価値観を過剰に取り入れてしまうために自分の感情に気づいて言葉にすることが苦手だったり、ネガティブなことを周囲に言えないなどです。


「みんなと同じように学校に行きたい」と頑張りすぎるあまり過剰適応の状態になり、それがストレスとなって頭痛を悪化させるという悪循環に陥っている子どもが多くいるようです。

「痛い」と言えない子どものサインとは?


重要となるのが、「言語化が難しいお子さんの頭痛」への気づきです。

お子さんの中には、頭痛があっても「痛い」と適切に表現できないケースがあります。言葉を獲得していない年齢の子や、コミュニケーションに困難さがある子の場合、頭痛が興奮や攻撃行動、パニックとして現れることがあります。下村先生は、ASD・ADHDとてんかんのある子どものケースを紹介しました。この子は、月に数回、大声を上げて自分の頭を叩いたり、他者を叩いたりするパニック症状がありました。よく観察すると、パニックになる前におとなしくなり、不機嫌になる様子が見られ、さらに嘔吐することもあったため、「片頭痛の痛みでパニックになっているのではないか」と推測しました。不機嫌になったタイミングで頭痛薬を飲ませたところ、パニックを防ぐことができたそうです。


また、下村先生は、ADHDの治療薬の副作用として頭痛が現れることもあるため、服薬のタイミングと行動の変化を慎重に見極める必要があると言います。

「痛い」と言葉で伝えられない子どもたちが発する、頭痛の可能性を示すサインには以下のようなものがあります。

    様子・行動の変化:急に不機嫌になる、口数が減る、おとなしくなる
    環境への反応:部屋にこもる、暗くて静かな場所に行きたがる(孤立)
    生活習慣の変化:睡眠パターンが乱れる、食事の量が減る
    パニック・自傷:理由のわからないパニック、自分の頭を叩く、他害行為

下村先生ご自身も、お子さんが小児期に頭痛を発症した際、すぐには気づけなかった経験を語られました。娘さんに「なぜ痛いと言わなかったの?」と尋ねたところ、「昔からあるから、痛いのは当たり前だと思っていた」と返ってきたそうです。子どもにとって自分の身体症状を言葉で伝えることは難しいことがわかります。

頭痛を多角的に捉え、生活の質(QOL)を高める


子どもの頭痛診療の目的は、単に痛みを取ることだけではなく、子どものQOL(生活の質)を向上させ、日常生活を少しでも楽にしてあげることです。
頭痛を単に身体症状のひとつとして捉えるのではなく、神経発達症の特性や、起立性調節障害、睡眠、心理社会的なストレスといった背景を含めて包括的に捉える視点が大切です。もしお子さんが、理由のわからない不機嫌やパニック、不調を抱えている場合、その背景に「頭痛」が隠れていないか、一度立ち止まって観察してみてはいかがでしょうか。


(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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