子どもの「てんかん」と「発達障害」の関係は?専門医が語る正しい理解と支援のあり方【学会レポート3】

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子どもは一生の中で最も「けいれん」を起こしやすい時期


てんかんの主な症状として知られる「けいれん」ですが、実は子どもは一生の中で最もけいれんを起こしやすい時期にあります。特に5歳までに、すべての子どもの5〜10%が何らかのけいれんを経験するといわれています。

けいれんを目の当たりにするとつい驚き焦ってしまいますが、小児のけいれんの多くは発熱などによって引き起こされる「熱性けいれん(熱性発作)」であり、年齢とともに自然に治っていく良性のものです。宮本先生は、けいれんを大きく2つの種類に分けて考えることが大切だと語ります。

宮本先生は、けいれんの違いについてこのように説明します。

子どもの「てんかん」と「発達障害」の関係は?専門医が語る正しい理解と支援のあり方【学会レポート3】

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目の前の子どもがけいれんを起こした際、医師はまず「今は脳のSOS状態か、そうでないか」を見極めます。SOSでなければ、多くは大人になれば自然に治っていく「良性のけいれん(体質)」である可能性が高いと説明されました。

てんかんの体質と薬の役割:「コップの水」の例え


「良性のけいれん」が特定の誘因(熱など)で起きるのに対し、誘因がなくても発作を起こすのが一般的な「てんかん」です。
宮本先生は、てんかんの体質や薬の働きについて、「頭の中のコップと水」に例えて患者さんに説明しているそうです。

    ●コップ:その子が持っている発作への耐性(大きさは人それぞれ)
    ●水:発作を起こすエネルギーのようなもの(量は人それぞれ)
    ●発作が起きる仕組み:熱や寝不足など何らかの要因によりコップが揺さぶられ、水がこぼれると「発作」が起きる

てんかんの薬によって「コップの中の水の量を減らす」ことができます。水を減らせば多少揺さぶられても水はこぼれず、発作を防げるという仕組みです。コップを大きくするものではありませんが、年齢を重ねて成長していくと、自然とコップ自体が大きくなります。大きくなれば、薬で水を減らさなくても水がこぼれなくなり、これが「てんかんが治った(寛解・消失した)」状態だといいます。

「てんかん」と「発達障害」は関係しているのか?


外来で非常に多く寄せられるのが、「発作を繰り返したから発達が遅れたのでしょうか?」「発達障害があるからてんかんになったのでしょうか?」という保護者からの質問です。

宮本先生は、自閉スペクトラム症(ASD)や知的障害(知的発達症)がある場合、てんかんの合併率が高いのは事実であると述べました。しかし、両者の関係性については以下のように解説しています。


    ●重度で長時間の脳波異常が続く一部のてんかん症候群などを除き、すべてのてんかんや脳波異常が発達遅滞や発達障害を引き起こすわけではない。
    ●てんかんが発達障害を起こしているわけでも、発達障害がてんかんの原因というわけでもない。
    ●何らかの原因が脳にあり、その結果として、てんかんと発達障害の両方が現れている可能性がある。

つまり、どちらかが直接的な原因になっているというよりは、何か別の要因がある可能性があるということです。だからこそ、日頃から「年齢相応の発達をしているか」を評価し、不安があれば小児神経科医に相談することが重要だと強調されました。

治療の本当の目的は「自己実現」を支えること


難治性のてんかんなどを除き、子どものけいれん性疾患の多くは大人になれば治るものであり、過度に日常生活を制限する必要はありません。宮本先生は、小児てんかん治療の真の目的を次のように語りました。

「治療の目標は、単に発作を抑制することだけではありません。
健全な自己肯定感を育み、能力にふさわしい自己実現を達成してほしいと願っています」

勉強も、スポーツも、やりたい趣味も諦める必要はありません。てんかんによる制限は必要最小限にとどめ、「なりたい自分になるための努力」を思い切り行える環境を保障してあげることが、医療者や周囲の大人にできる最大の支援です。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。
論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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