幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法
我が子が、果たして順調に言葉や文字を覚えてくれるだろうか――。幼い子どもを持つ心配性の親なら、そんな不安を抱えているかもしれません。そこで、発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、言葉や文字を子どもに効果的に教える方法を聞きました。まずは、その前の段階、まだしゃべらない子どものコミュニケーションについて教えてもらいます。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
赤ちゃんのときの動作に言葉を覚える前兆を見る
まだしゃべらない子どもでも、あとあときちんと話せるようになるかどうかを確認する方法があります。その方法は、生まれて間もない赤ちゃんの段階でもできることです。対話の基本はキャッチボールのように交互に話すことですよね?Aさんが話しているときはBさんが聞く。そして、Aさんが話し終わったあとでBさんが話す。
それと同じことが赤ちゃんの行動にも見られるのです。親が「○○ちゃん、かわいいね」というと、赤ちゃんは親を見てじっとしている。そして、いい終わったあとに自分の手足を動かす。こういう答えるような動作が見られるようでしたら、心配ありません。こうした行動から、その子どもには対話へと発達するベースが備わっていることがわかるのです。
また、2、3歳になってもなかなかしゃべらないとなると、やはりおうちのかたは心配でしょう。その段階になるまでに、発達上の問題がないかをチェックする方法があります。赤ちゃんは1歳になる前頃から「指さし」をするようになります。
あるいは、はっきりとした指さしをしなくても、親が見る方向を一緒に見ます。
たとえば、お母さんが犬を見て、「あ、ワンワンがいるよ」といったとします。その言葉を聞いて、子どもはお母さんが見ている方向を見る。これは「共同注視」と呼ばれます。別のパターンとしては、親の前でテレビを見ていた子どもが、ある場面で親のほうを振り返るということもあります。これは、まだしゃべれなくても、「面白いよね?」「お父さんも見ているよね?」と伝えようとしているということで、「社会的参照」と呼ばれ、他の霊長類にはあまり見られない、人間の子ども特有の行動です。これらは「前言語的コミュニケーション」と呼ばれる行動で、いわば「言語のもと」