児童学の専門家が推奨。「転んでも立ち上がれる子」を育てる家庭の3つの習慣
子どもが転んでしまったとき、注意されたとき、友だちのひと言でしょんぼりしてしまう……。そんな姿を見ると、「うちの子、気持ちが折れやすいのかな」と心配になることがありますよね。
でも、ここでいう「タフな子」とは、決して「泣かない子」「強がる子」のことではありません。教育・心理学の世界では、レジリエンス(心理的回復力)と呼ばれる、「落ち込んでも、自分の力で立ち直る力」のことを指します。
そしてこの“立ち上がる力”は、生まれつき決まっているわけではなく、あとから育てられる「スキル」だということが、多くの研究で明らかになっています。*3
本記事では、国立青少年教育振興機構理事長・鈴木みゆきさんのインタビュー内容をもとに、子どもが「転んでもまた歩き出せる子」になるための、今日からできる3つの体験を紹介します。
① 自然体験 ―五感をフル稼働!「やり抜く力」の練習に
キャンプや山登りだけが自然体験ではありません。近所の公園の土のエリア、小川や河原、草が生えた斜面など、ちょっと“自然っぽい”場所は、子どもの脳にとって格好の学びの場です。
葉っぱが揺れる音、小川のせせらぎ、虫や鳥の声。季節や時間帯で変わる光と影、風の強さや匂い……。自然のなかには、子どもの感性に訴えかける複雑な刺激がたくさんあります。こうした環境に身を置くことで、「感じる力」や好奇心が高まり、心の柔らかさが育つことが分かっています。*1
また、自然のなかでは、子どもにとってちょうどいい「困難」に何度も出会います。
- 坂道やでこぼこ道を、転びそうになりながら登りきる
- 少し怖かった岩場を、自分の足で慎重に移動してみる
- ドキドキしながら虫に触ってみる
こうした小さなチャレンジをくぐり抜けるたびに、子どもは「こわかったけど、できた」「工夫したらできた」という感覚を蓄えていきます。これはまさに、のちのち「やり抜く力」「タフさ」につながる土台です。*1
今日からできる!自然体験の取り入れかた
- 公園の「土のエリア」を歩いてみる:
あえて舗装されていない道を一緒に歩く。段差や石をよけるだけでも、立派なチャレンジです。 - 小さな丘や築山にのぼる:
「ここまで行けたね」「さっきより早く登れたね」と、達成感を言葉にしてあげましょう。 - 季節の変化を探す:
「今日の風、昨日とちょっと違うね」「葉っぱの色が変わってきたね」と、感じたことを一緒に言葉にします。
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② 小さな成功体験 ― “できた!”が心の土台をつくる
日常の中で生まれるささやかな成功体験は、子どものレジリエンス(心理的回復力)を高める大切な材料です。特別な出来事でなくても、「昨日より一歩進めた」という実感が積み重なるたびに、子どもの心の芯は強くなっていきます。*3
研究では、成功体験が多い子ほど、失敗からの立ち直りが早いことが分かっています。大切なのは「結果」ではなく、「そこまでの過程」です。
小さな成功体験の具体例
- 靴を自分で履けた・服を自分で選べた
- パズルを最後まであきらめずにやりきれた
- 昨日より少し長く練習できた
こうした積み重ねが、「わたしは・ぼくはやればできる」という自己肯定感を育み、のちの立ち上がる力の土台になります。
*3
今日からできる!成功体験のつくり方
- 「ちょっとだけ難しい」ことを任せる:
昨日より少し背伸びするくらいが成功体験の種。 - 比べるのは「ほかの子」ではなく「昨日の自分」:
「ここ、前よりできたね」と変化を一緒に見る。 - プロセスをほめる:
「工夫したね」「あきらめなかったね」。努力そのものを言葉に。
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③ 家でのお手伝い ― “役に立てた”が自信とタフさを育てる
お手伝いは、もっとも身近で、もっとも効果の大きいレジリエンス・トレーニングです。国立青少年教育振興機構の調査では、お手伝いの習慣がある子ほど、生活習慣が整い、学力も高い傾向が示されています。*4
「ありがとう」と言われる経験や、自分に任された役割をやりとげる経験は、子どもの “自己効力感” をぐっと底上げします。
お手伝いで育つ力
- 「役に立てた」という実感(自己肯定感)
- 段取り・見通しを立てる力(生活習慣)
- うまくいかないときに工夫する力(タフさ)
完璧にできる必要はありません。
むしろ、少し失敗するくらいがちょうどいい経験になります。
今日からできる!年齢別・始めやすいお手伝い
- 3〜5歳:食器を運ぶ、テーブルをふく、タオルを丸める、靴をそろえる など
- 6〜8歳:洗濯物を干す/取り込む、味噌汁をよそう、豆腐やきゅうりを切る
- 9〜12歳:献立を一緒に考える、買い物メモを作る、「干す→たたむ→しまう」まで任せる
ポイントは、“できたかどうか”より“やろうとしたこと”を認めること。
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親だけでなく、「いろんな大人」とのつながりがタフさを支える
地域の大人・少し年上のお兄さんお姉さんとの関わりも力になる子どものレジリエンスを支えるのは、親の愛情だけではありません。鈴木みゆきさんは、親以外の大人や、少し年上の子との関わりが、子どもの「協働力」や社会性を育てると指摘しています。*2
キャンプや地域活動、学校以外の場での体験を通じて、子どもは
- 「自分の話を聞いてくれる大人は、親以外にもいる」
- 「助けてくれる人、応援してくれる人がまわりにいる」
という感覚を育てていきます。これは、つらいことがあったときに「一人で抱え込まず、誰かに頼っていいんだ」と思える力となり、心のタフさを支えてくれます。*2
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「タフな子」と聞くと、泣かない・弱音を吐かないイメージを持ちがちですが、ここで目指したいのは「落ち込むこともあるけれど、また立ち上がれる子」です。
タフさは、親がすべてを守り続けることで育つのではなく、「ちょっと背伸び」「ちょっと失敗」をくり返す中で育つ力です。
自然の中で思い切り遊ぶこと。「やってみたい!」という気持ちを応援すること。家族の一員として「ありがとう」と言われる経験を重ねること。
そんな何気ない日々の体験が、子どもの心のキャパを少しずつ広げ、転んでもまた立ち上がれる “タフな子” へと育てていきます。
(参考)
*1STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「体験」が、子どもたちのやり抜く力や感じる力を育んでいく――子どもに自然体験をさせることの教育効果
*2STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていく――親以外の人との交流によって広がる子どもの視界
*3STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの人生を充実させる前向き思考の「自己肯定感」――体験によって養う「自信」と「立ち上がる力」
*4STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由
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