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運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった

運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった

「うちの子、運動が苦手で……」

走るのが遅い、ボールがうまく投げられない、体育の時間を嫌がる——。4〜10歳の子をもつ保護者から、こうした悩みはよく聞かれます。

けれど、スポーツの現場では、まったく逆の光景が見られることも少なくありません。最初はできなかった子が、ある時期からぐっと伸びていく。じつは、運動の「できない」は、才能の入口である場合も多いのです。

本記事では、スポーツ教育指導者・翁長明弘氏監修のもと、運動が苦手な子にこそある強み、家庭でできる基本の動き、子どもの可能性を伸ばす関わり方をわかりやすく解説します。


監修者プロフィール

運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった

翁長明弘

スポーツ教育指導者

元プロバスケットボール選手。競技経験を生かし、現在はスポーツ教育指導者として活動。
バスケットボール指導を軸に、走る・跳ぶ・止まるといった基礎的な体の使い方やコーディネーション能力の育成にも注力している。子どもひとりひとりの「できない」を成長の入口と捉え、自己肯定感を高めながら、ワクワクしながら挑戦できる環境づくりを大切にしている。これまでに全国大会出場へ導いた指導経験もあり、運動を通じて子どもが健やかに育つための“生きる力”を伝えている。

「運動が苦手=才能がない」は本当?


4〜10歳は、体の発達に大きな個人差が出る時期。同じ年齢でも、体の大きさや動きのぎこちなさはまったく違います。

この時期の「できる・できない」は、才能の差ではなく、発達のタイミングの差であることがほとんどです。

運動が得意に見える子も、たまたま早くコツをつかんだだけかもしれません。一方で、うまくできない子は「どう動かせばいいか」を試行錯誤する時間が長くなります。
この試行錯誤こそが、あとから大きく伸びる土台になっていくのです。

文部科学省の「幼児期運動指針」でも、幼児期から学童期にかけての運動能力は、生まれつきの才能よりも、経験の量と質に大きく影響されると考えられています。つまり、いま「できない」ことは、これから「できるようになる」可能性を秘めているのです。

運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった

“できない子” にこそある2つの強み

強み1:体の使い方を覚える力が育ちやすい
運動が苦手な子は、失敗する回数が多くなります。でもそれは、「体の使い方を学ぶ回数が多い」ということでもあります。どう動いたらいいのか、どこに力を入れたらいいのか——。考えながら体を動かす経験は、体の感覚を育てるうえでとても大切です。

筑波大学の研究では、運動のばらつき(失敗を含む試行錯誤)が大きいほど、運動学習が効率的になることが明らかになっています。
一度でうまくいってしまうより、何度も失敗しながら修正していく過程で、より深い運動感覚と身体コントロール能力が身につくのです。

強み2:成功体験が深く自信につながる
簡単にできた経験よりも、「できなかったことが、できるようになった経験」のほうが、強く心に残ります。苦手を乗り越えた体験は、「やればできる」という自己肯定感や粘り強さにつながりやすく、運動だけでなく、その後の学びや挑戦にもよい影響を与えるのです。

心理学では、この「努力によって達成した成功体験」が、子どもの成長型マインドセットを育むことがわかっています。「自分は努力すれば成長できる」という信念は、運動能力だけでなく、学習全般や社会性の発達にもプラスに働きます。

運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった


4〜10歳の運動が苦手な子に必要なのは「上手さ」より「経験の量」


この年代で一番大切なのは、フォームの正しさや結果ではありません。さまざまな動きを、たくさん経験することです。

文部科学省の「幼児期運動指針」でも、この時期は多様な動きを獲得する重要な時期として位置づけられています。
走る、跳ぶ、投げる、捕る、蹴る、回るなど、基本的な動きのパターンを豊富に経験することが、将来のあらゆるスポーツの土台になるのです。

特に、次の4つは多くのスポーツに共通する基本の動き。遊び感覚で取り入れられます。

【走る】早く走る土台になる「スキップ」
腕を大きく振りながら、片足ずつリズムよく前に進みます。ポイントは速さではなく、弾むように体を上下させること。

スキップは、脚のバネ、体のリズム、腕と脚の連動を同時に使う動きです。「スキップには足が速くなるポイントがギュッと詰まっている」と翁長氏は語ります。実際、翁長氏が代表を務めるバスケットボールスクール Sports Intersection Basketball Academyでもスキップ運動を積極的に取り入れており、未就学児や低学年の子どもが、何度も楽しく「スキップ競争」をしているうちに、自然にかけっこが速くなるのだとか。


スキップには、「高いスキップ」と「速いスキップ」の2種類があり、それぞれ違った力が鍛えられます。


高いスキップで鍛えられる力

腕を大きく振りながら、できるだけ高く跳ぶように意識します。高いスキップをするには、足で地面をしっかりと踏み込み、大きく振った腕で体を引き上げる必要があります。この腕振りは、速く走るためにかかせない「推進力」を生み出す動きです。そして、高く跳ぶために地面を強く蹴る力は、走るときの蹴り出し力と同じ。ジャンプ力アップにも効果的です。

速いスキップで鍛えられる力

今度は高さではなく、できるだけ速く前に進むことを意識します。速いスキップでは「瞬発力」が鍛えられます。
速いスキップをするには、体を前へ、速く運ぶ動きが必要です。この動作が速くなればなるほど、かけっこも速く走れるようになります。

【止まる】走ってピタッと止まる「ストップ遊び」
軽く走ったあと、合図でその場にピタッと止まります。この動きで、体のバランスを保つ力が育ちます。止まる力は、走る・跳ぶ・方向を変える動きすべての基礎。「止まれる子」は、運動全体が安定しやすくなります。

急に止まる動作では、体幹の筋肉やバランス感覚が総動員されます。この能力は、サッカーやバスケットボールなど、方向転換が多いスポーツでは特に重要です。


【跳ぶ】その場でできる「両足ジャンプ」
両足をそろえて、その場でジャンプします。着地するときは、音を立てずに静かに降りるのがポイント。脚の力だけでなく、体全体をコントロールする感覚が育ちます。この感覚は、走るスピードや瞬発力にもつながります。

静かに着地する練習は、衝撃を吸収する能力を高めます。これは将来、ケガの予防にもつながる大切な身体能力です。

【投げる】タオルでできる「投げる動き」
丸めたタオルを、前に向かって投げます。腕だけで投げるのではなく、体をひねってから投げることを意識してみましょう。投げる動きは、腕・体幹・足を連動させる練習になります。ボールがなくても、体の使い方は十分に学べます。

投げる動作は、全身の協調性を育てる最適な運動のひとつ。足から腰、体幹、肩、腕へと力を伝えていく感覚は、あらゆるスポーツの基本になります。

運動が苦手な子ほど、あとで伸びる。4〜10歳の「できない」は才能の入口だった


保護者ができる3つのサポート


ここまで、運動が苦手な子にこそある強みや、家庭でできる基本の動きを紹介してきました。では、こうした運動を日常に取り入れながら、保護者としてどのように子どもに関わればよいのでしょうか。

特別な道具や技術は必要ありません。日々の声かけや関わり方を少し変えるだけで、子どもの運動への意欲は大きく変わります。


1. 「できた?」ではなく「やってみた?」と声をかける

結果よりも、挑戦したことに目を向けます。

2. 比べるなら昨日のわが子

兄弟や友達と比べる必要はありません。

3. 合わない習い事は変えていい

4〜10歳では、環境が変わっただけで一気に伸びることも珍しくありません。


運動が苦手な子の場合、「習い事をさせれば伸びるかも」と考える保護者も多いでしょう。もし運動系の習い事を検討しているなら、翁長氏からのアドバイスがあります。


まず、習い事を始めたきっかけよりも、入会後に教室に来ることに毎回ワクワクできているかが大事です。次第にワクワクが消えてしまう子を見ていると、親御さんの理想が高く、それを押しつけたり、うまくできない子どもを怒ったりしているように感じますね。そうなってしまうと、ワクワクしているときに比べて成長のスピードも遅れていくでしょう。


子どもに「できないこと」がたくさんあるのは当然です。子どもは学びながら、成長している途中なのですから。だからこそ、常にポジティブな声かけをしてあげてほしい。「〜〜をしなさい!」ではなく、子ども自身が「〜〜を頑張るぞ!」「〜〜をやりたい!」と思えるような声かけが理想です。

習い事というのは、子どもの忍耐強さを試したり鍛えたりするものではありません。ワクワクする気持ちによって引き出された力が、「自分はできる!」という自信と自己肯定感のもととなり、子どもの人生をより豊かにしてくれるのです。

***
運動が苦手に見える時期があっても、心配はいりません。この年代で大切なのは、「できる・できない」よりも、体を動かす経験を積み重ねることです。

4〜10歳の子どもの運動能力は、まだまだ発達の途中。焦らず、楽しみながら、さまざまな動きを経験させてあげることが、将来の運動能力の土台をつくります。いまできなくても大丈夫。子どもの可能性は、あとから大きく開いていきます!

(参考)
文部科学省|幼児期運動指針
筑波大学|運動のばらつきが卓越した運動学習能力を生む~構成論的「失敗のすすめ」~
TED Talks|キャロル・ドウェック: 必ずできる! ― 未来を信じる「脳の力」
Sports Intersection Basketball Academy

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