東大生の家は急がなかった。忙しくても続けられる「読み聞かせ」のあたたかい時間

東大生の家は急がなかった。忙しくても続けられる「読み聞かせ」のあたたかい時間

東大生の家庭は、一般家庭の約2倍も読み聞かせをしていた──。現役東大生の母親60人を対象にした調査で明らかになった事実です。週に3日以上読み聞かせをしていた家庭は、東大生家庭で85%にものぼりました。(プレジデント社、2019年)*1

漢字を覚え、どんどん教科書を音読できるようになる小学校低学年。東大生の家庭は、子どもがひとりで読めるようになってからも、読み聞かせを家庭の習慣にしていました。

とはいえ、毎日仕事と家事でクタクタ。そんな時間、いまの自分にあるかなと感じる方も多いかもしれません。それでも大丈夫です。
この記事は、長時間の読み聞かせを推奨するものではありません。忙しい毎日のなかで、いまの自分にできるかたちで取り入れる方法を、研究の知見と一緒に探っていきます。

東大生家庭の「読み聞かせ文化」── 数字が物語ること


この調査が示しているのは、東大生家庭で読み聞かせが単発ではなく、日常のリズムに組み込まれていたという事実です。週に3日以上というのは、3日に1度よりも多い頻度。生活のなかに自然と本の時間があったのです。

さらに、現役東大生100人を対象にした別のアンケートでは、子どもの頃に親にしてもらって感謝している教育のトップに「絵本の読み聞かせ」が挙がっています。100人中40人がこの項目を選んだという結果は、読み聞かせが何年経っても子どもの心に残る、家庭ならではの体験であったことを物語っています。(くもん出版、2015年)*2

ここで「自分には到底ムリ」と思う必要はありません。
東大生家庭の共通点は「毎日30分」のような一定の時間ではなく、子どもがひとりで読めるようになっても、家族のリズムに本の時間が残っていたという、ささやかな日常の積み重ねでした。忙しい毎日のなかでも、わずかな時間を本に向けるだけで、その体験は子どもの心に長く残ります。


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小1・小2は「聴いて理解する力」が「自分で読む力」より高い時期


小学校に入ると、子どもは文字を声に出して読めるようになります。しかし、文字をたどる作業そのものにエネルギーを使うため、頭のなかで物語を味わうところまで届きにくいのが、この時期の特徴です。「自分で読めた」ことと「内容を深く理解した」ことのあいだには、まだ隔たりがあるのです。

つまり、「短い時間でも読んであげること」には、子どもがひとりで黙読することと違う、確かな価値があります。

幼児期から小学校2年生まで子どもを追跡した縦断研究では、家庭での絵本との関わりが、語彙力と読みの伸びを予測することが示されました。
(カナダ カールトン大学、モニーク・セネシャル教授ら)*3 ここでいう「家庭での絵本との関わり」には、親が読んで聞かせる時間も含まれています。

海外の大規模なメタ分析でも、親子の読み聞かせは「家庭での読書経験の連続体」の一部であり、発達全体を通じて言葉の力を支えると報告されています。(オランダ ライデン大学、アドリアナ・バス教授ら)*4 つまり、たとえ短い時間でも、読み聞かせを重ねた日々が、そのまま子どもの言葉の力になっていきます。


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日本の小学校低学年でも、読書との関わりが言葉の力を育てる


日本人の小学生を対象にした研究もあります。研究チームは、小学1年生から6年生までの児童992名を対象に、読書量と言葉の力の関係を調べました。(北里大学、猪原敬介准教授ら)*5 興味深いのは、読書時間や読んだ冊数だけでなく、「図書室での貸出冊数」「読んだ本のタイトルをどれだけ覚えているか」など、複数の指標で読書量を測ったことです。

結果として、どの指標で測っても読書量は語彙力・文章理解力と正の相関があり、それは小学1年生の段階からすでに見られることが示されています。
早い時期から本に触れる経験が、言葉の理解力につながっていく姿が、日本の子どもにおいても確かめられたのです。

ここで大切なのは、「本に触れる」のはひとり読みだけではないということ。親が読んでくれる読み聞かせも、子どもが本の世界と出会う大切な入り口です。仕事から帰った夜、たとえ1冊の途中まででも、子どもにとっては「本に触れた時間」になります。▼ あわせて読みたい

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短い時間でも、親子で味わう読み聞かせ3つのかたち


ここまで読んで、「やっぱり読み聞かせは大事なんだな」とは思いつつ、「でも、毎日なんて無理」と感じている方もいらっしゃるはず。じつは、読み聞かせは長時間でなくても、5分の場面を一緒に味わうだけで親子の豊かな時間になります。ここからは、短いからこそ楽しめる3つのかたちをご紹介します。

コツやり方楽しみどころ❶ 「5分で読める1冊」を本棚に揃える短い絵本や1話完結の物語を数冊、本棚に用意しておく忙しい夜でもすぐ手が伸び、完結まで読み切る満足感が残る❷ 「続きはまた明日」を約束にする少し長めの児童書を、毎晩「今日はここまで」と章の終わりで切る「明日はどうなる?」というワクワクが、翌日への小さな約束になる❸ 親が「聞き手」になる時間をつくる子どもが昼間に読んだ本を、寝る前に「今日の場面、教えて」と聞かせてもらう布団で聴くだけでOK。
子どもの語りに、その日いちばん心に残った瞬間が映る1. 「5分で読める1冊」を本棚に揃えておく
短い絵本や1話完結の物語をいくつか本棚に用意しておくと、忙しい夜でも「これにしよう」とすぐ手が伸びます。完結する1冊を読み切る満足感は、長編を途中で切るよりずっと深いもの。子どもにとっても「最後まで聞けた」という心地よさが残ります。

2. 「続きはまた明日」を約束にする
少し長めの児童書を選んだら、毎晩「今日はここまで」と章の終わりで切るのも楽しみ方のひとつ。「明日はどうなるんだろう」というワクワクが、翌日への小さな約束になります。続きを心待ちにする時間そのものが、親子の宝物になります。

3. 親が「聞き手」になる時間をつくる
子どもが昼間に読んだ本を、寝る前に「今日の場面、教えて」と聞かせてもらう時間。親は布団に入ったまま、相槌を打ちながら聴くだけでOKです。
子どもの語りには、その日いちばん心に残った瞬間が映ります。声を出すのは子ども、心を寄せるのは親──そんな役割もまた、親子で楽しめるかたちです。
***
読み聞かせに必要なのは、長い時間ではありません。寝る前の数分でも、週に2 〜 3回でも、子どもとの本の時間は確かな力を持ちます。完璧な日でなくていい、いまできるかたちで── そんな小さな積み重ねが、何年経っても子どもの心に残る、家族の記憶になります。

FAQ(よくある質問)
忙しい毎日のなかで読み聞かせを取り入れるとき、保護者からよく寄せられる質問にお答えします。


Q. 平日は時間がとれません。週末だけでも意味はありますか?

A. 意味はあります。
読み聞かせは「毎日10分」が義務ではなく、頻度と継続が大切です。週末に2〜3回でも、寝る前の数分でも、子どもにとって「家族と本の時間がある」という感覚が、言葉と心の土壌を育てます。


Q. 5分しかとれない日でも効果はありますか?

A. はい。研究では「家庭で本に触れる経験」そのものが言葉の力につながると示されています。1ページだけ、表紙の話だけでも、本を間にした親子の時間として価値があります。


Q. 小1・小2でひとりで読めるのに、読み聞かせは甘やかしになりませんか?

A. 甘やかしにはなりません。小学校低学年の子どもは文字を読む作業そのものに集中力を使うため、物語の理解は「聞く」ほうがまだスムーズな時期です。読み聞かせは、ひとり読みの邪魔をするものではなく、言葉の力を育てる土壌になります。


Q. どんな本を選べばいいでしょうか?

A. 子ども自身が「読んで」と持ってきた本を読むのが基本です。学年向けより少し難しい本でも、聞いて理解するなら問題ありません。子どもの好奇心が向く本を尊重してあげてください。


 

(参考)
*1 プレジデントベイビー (2019)|プレジデントBaby 0歳からの知育大百科 2019完全保存版「現役東大生の母親60人へのアンケート」. プレジデント社.
*2 くもん出版 (2015)|KUMON now! 大学生意識調査 東京大学編 Vol.072「子どものころ、親にしてもらって感謝している教育とは?」. 株式会社くもん出版.
*3 Sénéchal, M., & LeFevre, J.-A. (2014)|Continuity and change in the home literacy environment as predictors of growth in vocabulary and reading. Child Development, 85(4), 1552-1568.
*4 Mol, S. E., & Bus, A. G. (2011)|To read or not to read: A meta-analysis of print exposure from infancy to early adulthood. Psychological Bulletin, 137(2), 267-296.
*5 猪原敬介・上田紋佳・塩谷京子・小山内秀和 (2015)|複数の読書量推定指標と語彙力・文章理解力との関係:日本人小学校児童への横断的調査による検討. 教育心理学研究, 63(3), 254-266.

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