「10歳までにたっぷり愛された記憶」が一生を支える——ハーバード大学の研究が示す、たったひとつの答え

「10歳までにたっぷり愛された記憶」が一生を支える——ハーバード大学の研究が示す、たったひとつの答え

「英語は早いほうがいい」「プログラミングもそろそろ」——SNSを開くたび、”いまやるべきこと” が流れてきて、胸がざわつく。そんな夜はありませんか。

習い事の送迎に追われて、気づけば今日、子どもとゆっくり話していない。「わたし、ちゃんとできてるのかな」と、寝顔を見ながら不安になる。

そんなお母さんにこそ知ってほしい研究があります。ハーバード大学が80年以上にわたり人の一生を追いかけてきた研究が示す答えは、意外なほどシンプルなものでした。

85年間、人の一生を追いかけた「世界最長」の研究


ハーバード成人発達研究は、1938年にはじまった世界でもっとも長く続く縦断研究のひとつです。数百人の人生を、10代から80代・90代まで追跡し続けてきました。


成績、収入、職業、健康、結婚——膨大なデータのなかで、幸福な人生をもっともよく予測したのは、学歴でも年収でもなく「温かい人間関係」でした。

なかでも注目したいのが、子ども時代の親子関係です。子ども時代に親との関係が温かかった人ほど、60年以上たった80代で、パートナーと安定した信頼関係を築いている傾向が示されたのです。(ハーバード大学医学大学院、精神科教授ロバート・ウォールディンガー氏ら)*1子ども時代の「愛された記憶」は、想像よりずっと遠くまで届くのかもしれません。

「10歳までにたっぷり愛された記憶」が一生を支える——ハーバード大学の研究が示す、たったひとつの答え


親の温かさは、大人になってからの「幸せ」と関連していた


「でも、それって一部のエリートの話でしょう?」と思うかもしれません。

ハーバード大学の別の研究チームは、約4,000人の一般の人々を対象に、子ども時代に感じた親の温かさと、中年期の心の状態との関係を調べました。その結果、親の温かさを多く感じて育った人ほど、中年期に情緒面・心理面・社会面のすべてで良好な状態(フローリッシング)にある傾向が示されています。(ハーバード大学、研究員イン・チェン氏ら)*2

ここで大切なのは、「温かさ」の中身です。
この研究で測られたのは、特別な教育でも高価な体験でもなく、愛情を示す、教える、話を聞く——日常の小さな関わりの積み重ねでした。

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なぜ「10歳まで」が貯めどきなのか


発達心理学では、10歳前後は「9歳の壁」とも呼ばれる節目です。このころから子どもは自分を客観的に見はじめ、友だちとの世界が急速に広がっていきます。

つまり10歳ごろまでは、子どもにとって親が世界の中心にいる時期。「見て見て!」に「見てるよ」と返す、失敗した日に「おかえり」と抱きとめる——そのひとつひとつが、本人も覚えていないような形で “心の貯金” になっていきます。


研究でわかっていること

同じハーバード成人発達研究のデータでは、子ども時代に養育的な環境で育った男性ほど、大人になってから困難への向き合い方が柔軟で、中年期の親子関係の質や結婚生活の安定にもつながる傾向が報告されています。(ハーバード大学医学大学院、研究員マイケル・ネバレズ氏ら)*3


ただし、これは「10歳を過ぎたら手遅れ」という意味ではありません。研究が示しているのはあくまで傾向であり、人間関係の温かさは何歳からでも積み上げられます。
「いまがいちばん貯めやすい時期」——そのくらいの受け止め方でちょうどよいのです。

「10歳までにたっぷり愛された記憶」が一生を支える——ハーバード大学の研究が示す、たったひとつの答え


今日からできる「愛の貯金」は、たった10秒


「温かい関わりが大事」と言われても、毎日忙しくて余裕がない。それが本音ですよね。でも、研究が示す「温かさ」は量より質。だから、いまの生活に足すのは、ポイントを抑えるだけで充分です。


① 寝る前の「ぎゅっ」を10秒だけ長くする

言葉はいりません。10秒の抱擁は、子どもに「自分はここにいていい」という感覚を残します。


② 「今日いちばん笑ったこと」をひとつ聞く

夕食のとき、宿題のあと、お風呂のなか。
質問はひとつでよいのです。答えを最後まで聞くことが、そのまま「気にかけているよ」のメッセージになります。


③ 叱った日こそ、寝る前にひとこと

「今日は怒っちゃったけど、大好きだよ」。この一往復があれば、叱った記憶は「見捨てられた記憶」にはなりません。▼ あわせて読みたい

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***
英語も、プログラミングも、たしかに子どもの未来を広げてくれるかもしれません。でも、何十年分もの人生データが教えてくれたのは、「何を習わせたか」ではなく「どれだけ温かく関わったか」が一生を支えるということでした。今日、寝る前に10秒だけ長く抱きしめる。それはハーバードの研究者たちが人の一生を追いかけて見つけた、いちばん確かな “先行投資” なのかもしれません。


FAQ(よくある質問)
Q. うちの子はもう10歳を過ぎています。手遅れでしょうか?

A.手遅れではありません。研究が示すのは「幼少期は特に影響が残りやすい」という傾向であり、温かい関係は何歳からでも築き直せます。思春期に入っても、話を最後まで聞く・味方でいると伝えることは充分に届きます。


Q. 毎日叱ってばかりです。愛情が足りていないのでしょうか?

A.叱ることと温かさは両立します。研究で測られた「温かさ」は、完璧な子育てではなく、気にかける・受け止めるといった日常の関わりの総量です。叱った日の寝る前のひとことだけでも、関係の土台は守られます。



Q. 共働きで一緒にいる時間が短いのですが、大丈夫でしょうか?

A.時間の長さより関わりの質が大切だと考えられています。短い時間でも「今日いちばん笑ったこと」を聞く、10秒長く抱きしめるなど、質の高い一往復を意識してみてください。


(参考)
*1 Waldinger, R. J., & Schulz, M. S. (2016)|The Long Reach of Nurturing Family Environments. Psychological Science, 27(11), 1443-1450.
*2 Chen, Y., Kubzansky, L. D., & VanderWeele, T. J. (2019)|Parental warmth and flourishing in mid-life. Social Science & Medicine, 220, 65-72.
*3 Nevarez, M. D., Morrill, M. I., & Waldinger, R. J. (2018)|Thriving in midlife: The roles of childhood nurturance and adult defense mechanisms. Journal of Research in Personality, 74, 35-41.
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