「上の子がかわいく思えない」を抱えたときに。ひとりで背負わず、自分を責めずに乗り越える心の持ち方

「上の子がかわいく思えない」を抱えたときに。ひとりで背負わず、自分を責めずに乗り越える心の持ち方

下の子が寝たあと、ふと上の子の寝顔を見て、「今日もきつく言いすぎたな」と胸が痛む。同じようにかわいいはずなのに、上の子にだけ、心が固くなってしまう瞬間がある。そしてそれを誰にも言えないまま、ひとりで飲み込んでいませんか。

その重さは、あなたひとりで背負うものではありません。今日は、近くにいるパートナーに正直に打ち明けること、そして過去の写真を見返して自分を肯定することという、2つの方法を一緒に見ていきます。理屈で気持ちを立て直そうとするより、ずっと自然に、心の温度が変わっていくことがあります。

「言えない」気持ちこそ、ひとりで抱え込まないでいい


まず知っておいてほしいのは、口に出せない感情を抱えること自体が、心理学では「言いにくい母親の感情」として古くから注目されてきたテーマだということです。

学童期の子どもを育てるフィンランドの母親たちに、「口にしてはいけない」と感じている感情を書き出してもらった研究があります。


多くの母親が、子どもへの複雑な思いを抱えており、それは母親と子どもの利害がぶつかる場面で自然に生まれる、ごく当たり前の反応だと示されました。(フィンランド ヘルシンキ大学、クリスティーナ・ヤンフネン研究員ら)*1
つまり、あなたが抱えているその気持ちは、隠すべき異常なものではなく、子育てに自然についてくるものなのです。だからこそ、ひとりで抱えておく必要はありません。

「上の子がかわいく思えない」を抱えたときに。ひとりで背負わず、自分を責めずに乗り越える心の持ち方


自分を責めすぎないことが、すべての出発点


ここで、いちばん大切なことをお伝えします。上の子にイライラしてしまう自分を、これ以上責めないでください。

「こんな気持ちを持つわたしはダメな母親だ」と自分を罰しても、状況は何ひとつ良くなりません。むしろ自己批判は、心の余裕をうばい、子どもへの接し方をかたくしてしまいます。

子育てで罪悪感を感じた場面でも、自分にやさしい言葉をかけた親は、そうでない親にくらべて、その感情が明確にやわらいだことが示されています。
(イギリス シェフィールド大学、フューシャ・シロワ博士ら)*2
下の表のように、自分を責める言葉を、自分をねぎらう言葉に置きかえてみてください。つい責めてしまう言葉自分をねぎらう言葉こんなふうに思うなんて母親失格だこう感じてしまうくらい、いま疲れているんだなどうして優しくできないんだろう毎日、本当によくやっているよわたしだけがこんな親だ同じ気持ちを抱える親はたくさんいる

パパに話す目的は「解決」じゃなくていい


つらい気持ちは、信頼できる相手に話すだけで、いくらか軽くなります。これは多くの人が経験的に知っていることですが、研究では、その効果には「聞き手の応じ方」が関わることもわかってきました。

つらい体験を打ち明けたあと、聞き手が共感的に受けとめると、その場での気持ちはやわらぎました。さらに、聞き手が「こう考えてみたら」と一緒に意味を捉え直してくれたときには、より深い心の回復につながったと報告されています。(ベルギー ルーヴァン・カトリック大学、ベルナール・リメ教授ら)*3
ここで大切なのは、パパに話す目的を「解決してもらうこと」に置かなくていい、ということです。アドバイスをもらえなくても、「そう感じてるんだね」と受けとめてもらえるだけで、気持ちは確かに軽くなります。だから、こう切り出してみてください。
「ちょっと、聞いてほしいことがあって」。

打ち明けることには、もうひとつ意味があります。

未就学児を育てる254名の母親を対象にした研究では、父親が育児にかかわり、夫婦が協力して子育てに向き合えていると感じられることが、母親のストレスの軽さにつながっていました。(ポルトガル ISPA大学、ドラ・ドルシ研究員ら)*4
正直に話すことは、上の子への関わりを少しパパに引き受けてもらう入り口にもなります。


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「こんなに小さかったのに」が、心をゆるめる


気持ちを少し外に出せたら、もうひとつ試してほしいことがあります。アルバムを開いて、上の子が生まれたばかりのころの写真や動画を、ゆっくり見返してみるのです。

ある先輩ママが、こんな話をしてくれました。上の子をかわいく思えない時期に、ふと、上の子が生まれたときの写真とムービーを見返したのだそうです。
すると、「こんなに小さかったのに、大きくなったなぁ」「わたし、よく育てたなぁ」と、自分をほめたい気持ちでいっぱいになった。そして自分を肯定できたとたん、上の子と下の子がいる「いま」が、急にとても幸せなものに見えてきた、と。

これは、特別なことが起きたわけではありません。過去の温かい記憶にひたる「ノスタルジア」には、心の幸福感を高める働きがあることが、心理学の研究でわかっています。

611名を対象にした調査では、ノスタルジアを感じやすい人ほど、心の幸福感が高い傾向にあり、その背景には「これが本当の自分だ」という自分らしさの感覚があることが示されました。(イギリス サウサンプトン大学、コンスタンティン・セディキデス教授ら)*5
なかでも、自分で撮った個人的な写真は、その人だけの記憶を生き生きとよみがえらせ、当時の感情を「もう一度味わう」体験につながります。赤ちゃんのころの上の子の動画には、小さな手も、たどたどしい歩き方も、そしてその子を抱きしめていたあのころの自分自身も、ちゃんと残っています。


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大切なのは「子ども」より先に「自分」を認めること


ここでひとつ、見落としがちな視点があります。
先輩ママの言葉が「わたし、よく育てたなぁ」だったことを、思い出してください。

心が動いたのは、上の子への愛情を無理に呼び起こしたからではなく、自分自身をねぎらえたからでした。自分を責めている間は、上の子のかわいさは見えてきません。でも、「ここまでよくやってきたね」と自分を認められたとき、不思議と、目の前の子どもたちが愛おしく見えてくる。順番は、いつも自分が先なのです。

今日できる、ふたつの小さな一歩


難しいことは何もいりません。たとえば、解決を求めずにパートナーに話して、ただ受けとめてもらう。それだけで肩の荷が軽くなることもあります。
あるいは、子どもたちが寝たあとに、アルバムをいちばん古いところまでさかのぼって、上の子が生まれたころの写真や動画を少し見返してみましょう。
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「ごめんね」を探す必要はありません。ただ、「ここまで育てたんだな」と、そのころの自分に語りかけるだけでいい。今日から、上の子を見る視点をほんの少しだけ変えてみる。それだけで、明日からの心の温度は変わっていきます。FAQ(よくある質問)
夫に話したら、責められたりしないか不安です。

A.切り出すときに「解決してほしいわけじゃなく、ただ聞いてほしい」と先に伝えておくと、相手も受けとめモードで聞きやすくなります。いきなり全部でなく、「最近ちょっと疲れてて」から始めてもかまいません。



これで上の子可愛くない症候群は治りますか?

A.完全に消し去る方法というより、その時々の心の温度を上げる「お守り」として考えてみてください。湧いてくる感情そのものは自然なものなので、無理に治そうとせず、楽になる手立てを増やしていくのがおすすめです。


 

(参考)
*1 Rotkirch, A., & Janhunen, K. (2010)|Maternal guilt. Evolutionary Psychology, 8(1), 90-106.
*2 Sirois, F. M., Bögels, S., & Emerson, L.-M. (2019)|Self-compassion Improves Parental Well-being in Response to Challenging Parenting Events. The Journal of Psychology, 153(3), 327-341.
*3 Nils, F., & Rimé, B. (2012)|Beyond the myth of venting: Social sharing modes determine the benefits of emotional disclosure. European Journal of Social Psychology, 42(6), 672-681.
*4 d’Orsi, D., Veríssimo, M., & Diniz, E. (2023)|Father Involvement and Maternal Stress: The Mediating Role of Coparenting. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(8), 5457.
*5 Kelley, N. J., Davis, W. E., Dang, J., Liu, L., Wildschut, T., & Sedikides, C. (2022)|Nostalgia confers psychological wellbeing by increasing authenticity. Journal of Experimental Social Psychology, 102, 104379.
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