【W杯対戦国】ブラジルって、どんな国?「楽しむ子」がいちばん伸びる、「ジョガボニート」と子育ての話

【W杯対戦国】ブラジルって、どんな国?「楽しむ子」がいちばん伸びる、「ジョガボニート」と子育ての話

ブラジルに学ぶ「楽しい」の育て方。世界一のサッカーは笑い声から生まれた。

日本時間6月30日の未明、サッカー日本代表が決勝トーナメントの1回戦で、サッカー王国・ブラジルと対戦します。午前2時のキックオフですから、リアルタイムで見るのはなかなか大変な時間帯ですね。寝顔の横でこっそり結果だけ確認する、という朝になるご家庭も多いかもしれません。

たとえ試合を見られなくても、相手の国のことを少しだけ知っておくと、子どもと結果を話すときの楽しみが増えます。

ブラジルは、世界最多の5回もワールドカップで優勝してきた国です。でも今日お伝えしたいのは、強さの秘密を分析する話ではありません。
ブラジルのサッカーの根っこには、じつは「楽しむこと」を何より大切にする考え方があって、それが私たちの子育ての肩の力を、ふっとゆるめてくれる。そんな話です。

その前に、ちょっとだけブラジルってどんな国?


試合の話に入る前に、子どもと一緒に「ブラジルってこんな国なんだよ」と話せるよう、いくつかのことをまとめてみました。地球のちょうど反対側にある、にぎやかで陽気な国です。

テーマこんな国です場所と時間日本のほぼ真裏。日本が昼なら、ブラジルは夜になります。お祭り世界一にぎやかな「リオのカーニバル」。色とりどりの衣装で街じゅうが踊ります。
音楽とダンスサンバのリズム。蹴りと踊りがまざった「カポエイラ」というスポーツもあります。自然「地球の肺」とよばれるアマゾンの大きな森。長い砂浜のビーチもたくさん。ことばポルトガル語。「ありがとう」は「オブリガード」と言います。
そして、子どもと盛り上がりやすいのが食べものの話です。ブラジルのごはんは、お肉たっぷりで、にぎやかで、どこか日本の食卓にも通じるところがあります。


食べものどんな料理?シュラスコ大きなお肉を串にさして焼く豪快なバーベキュー。お店では目の前で切り分けてくれますフェジョアーダ黒い豆とお肉をコトコト煮こんだ、ブラジルの国民食。ごはんにかけて食べますポン・デ・ケージョもちもちのチーズパン。日本でも見かけることが増えた、子どもにも人気のおやつですアサイーアマゾンでとれる紫色の果実。冷たいボウルにして食べる、あまずっぱいスイーツです
ごはんを家族みんなで囲んで、にぎやかにおしゃべりしながら食べる。じつはこの「みんなで楽しむ」空気が、ブラジルのサッカーの根っこにもつながっています。 
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「ジョガボニート」という、楽しむための言葉


ブラジルには「ジョガボニート(jogar bonito)」という言葉があります。「美しくプレーする」という意味で、ただ勝てばいいのではなく、見ている人もやっている本人もワクワクするようなプレーを大切にする、という価値観です。


勝つためだけのサッカージョガボニート結果がいちばん大切過程のワクワクを大切にする教えこんで上達させる夢中で遊ぶうちに身につくひとりで黙々と練習する仲間と笑い合いながら磨く
おどろくのは、あの華やかなドリブルやフェイントの多くが、整然とした英才教育のなかで生まれたわけではない、ということです。子どもたちは路上や砂浜で、ボールひとつを追いかけて夢中で遊びます。狭い場所でぶつからずにかわす工夫や、足の裏でボールを止める感覚は、誰かに細かく教わったものではなく、楽しい遊びをくり返すなかで自然と身についていきました。

ブラジルらしい独特のリズム感のあるプレーは、サンバやカポエイラといった、暮らしに根づいた文化のなかから生まれてきたともいわれています。(オーストラリア クイーンズランド大学、ジェームズ・ヴォーン研究員ら)*1

つまり、彼らは必ずしも「うまくなるために練習させられた」のではなく、「楽しくて夢中で遊んでいたら、いつのまにかうまくなっていた」のです。世界一のサッカーは、反復だけでなく、笑い声のなかから育ってきた。そう考えると、子育てのなかで私たちが大切にすべきものが、少し見えてくる気がします。

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「楽しい」は、上達の遠回りではありません


熱心に子育てをしていると、つい「楽しんでいるだけで、本当に身につくのかな」と心配になる瞬間がありますよね。
せっかく習い事を始めたのに、ふざけてばかりに見える。勉強より遊びを優先したがる。まわりの子はもっと真剣にやっているように見えて、わが子だけ呑気に映る。そんなとき、もっと真剣に取り組ませなきゃ、と焦る気持ちが湧いてくる。それは、あなたが子どもの将来を本気で考えているからこそ生まれる気持ちです。そのうえで、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。「楽しい」は、上達への遠回りではない、ということです。

幼児から小学校低学年くらいの子どもを対象にした研究をまとめた分析では、大人がすべてを教えこむやり方よりも、子どもが自分で選んで楽しみながら学ぶ「ガイドされた遊び」のほうが、算数の基礎や、頭を切りかえる力(実行機能)をより伸ばす場合があることが示されています。
(イギリス オックスフォード大学、キャサリン・スキーン博士ら)*2

楽しいからこそ、子どもは自分から何度も試し、工夫し、集中する。やらされている勉強はすぐに飽きてしまっても、好きで始めたことは時間を忘れて続けられる。あの夢中の時間こそが、じつはいちばん深く力を育てているのです。


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「うまくやらせよう」を、ひとつ手放してみる


スポーツの分野でも、似たことが確かめられています。5歳から10歳の子どもを対象にした研究では、楽しさを中心にすえた遊びのような運動プログラムが、ボールを扱う運動の力だけでなく、考える力の発達にもよい影響を与えることが示されました。とくに、ふだんから外でのびのび遊んでいる子ほど、その効果が大きかったそうです。(イタリア ローマ・フォロ・イタリコ大学、カテリーナ・ペッシェ教授ら)*3

ここで大切なのは、特別な道具も、お金のかかる教室も必要ない、ということです。必要なのは、子どもが夢中になる時間を、大人が少しだけ邪魔せずに見守ること。


「もっとこうしたら」「こうやるんだよ」と教えたくなる気持ちを、いったん横に置いてみる。「うまくやらせよう」という気持ちをひとつ手放すだけで、子どもの夢中はぐんと深まります。手放すのは、子どもへの愛情ではありません。手放すのは、「私が完璧に導かなきゃ」という、あなた自身の肩の荷のほうかもしれません。


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そして、ジョガボニートにはもうひとつ、大切な顔があります。それは「みんなで楽しむ」ということ。ブラジルのサッカーは、ひとりの天才が孤独に磨いた技ではなく、仲間や近所の人たちと笑い合いながらボールを蹴る、にぎやかな時間のなかで育ってきました。子育ても、本当は同じなのかもしれません。あなたひとりが完璧に伸ばしてあげなくていい。家族や、友だちや、いろいろな人と一緒に楽しむなかで、子どもは育っていきます。むしろ、お母さんが肩の力を抜いて笑っている姿こそ、子どもにとっていちばん安心できる風景です。あなたが楽しそうにしていることが、子どもの「楽しい」を何より育てます。


6月30日の未明、日本代表はそんな国を相手にピッチに立ちます。試合の前後に、子どもと「この国ではね、楽しく遊んでいるうちに世界一になったんだよ」とブラジルのことを少しだけ話してみる。うまくやらせることより、一緒に楽しむこと。その視点は、子どもにとっても、そしてあなた自身にとっても、ずっと長く残るものになります。

FAQ(よくある質問)
Q. 楽しく遊んでばかりで、練習や勉強をしません。それでも上達するのでしょうか。

A. 幼児から低学年のうちは、「楽しい」「夢中になれる」という体験そのものが、いちばんの土台になります。研究でも、楽しみながら自分で取り組む学びが、力を深く育てることが示されています。すぐに上達が目に見えなくても、夢中になっている時間は決してむだではありません。まずはその姿を、安心して見守ってあげてください。


Q. 子どもが嫌がっている習い事は、やめさせてもいいのでしょうか。

A. 一概にやめるべきとは言えませんが、「楽しい」という気持ちが土台になることは確かです。一度、子ども自身に「どこが楽しい?」「どこが嫌?」と聞いてみると、続け方のヒントが見つかることがあります。お休みをはさんで気持ちが戻ることもあるので、本人の声を聞きながら、無理のない線を一緒に探してみてください。


Q. 子どもが夢中で遊んでいると、つい口を出したくなります。見守るコツはありますか。

A. 子どもが黙々と取り組んでいるときは、「楽しそうだね」と短く声をかける程度にとどめて、あとはそっとしておくのがおすすめです。ただし、危ないことや、お友だちとのトラブルがあるときは、止めて大丈夫。安全を守ることと、夢中を見守ることは、両立できます。


(参考)
*1 Vaughan, J. et al. (2021)|Football, Culture, Skill Development and Sport Coaching: Extending Ecological Approaches in Athlete Development Using the Skilled Intentionality Framework. Frontiers in Psychology, 12, 635420.
*2 Skene, K. et al. (2022)|Can guidance during play enhance children’s learning and development in educational contexts? A systematic review and meta-analysis. Child Development, 93(4), 1162-1180.
*3 Pesce, C. et al. (2016)|Deliberate Play and Preparation Jointly Benefit Motor and Cognitive Development: Mediated and Moderated Effects. Frontiers in Psychology, 7, 349.

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