誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方

誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方

「今年は何をプレゼントしよう」。そう思ってスマホのアルバムをさかのぼると、去年の誕生日の写真が出てきます。ろうそくの火をうまく吹き消せなくて、息だけが「ふーっ」と出ていた顔。クリームを鼻の頭につけたまま笑っていた顔。「もうこんなに大きくなった」と、指が止まります。

この1年、この子がいちばんよく言っていた言葉は何だったでしょう。「ねえ、みてみて」。「じぶんでやるの!」。
「なんで? なんで?」。朝の支度のたびに、お風呂のたびに、何百回と聞いた言葉です。「こんなこと言ってたな、忘れたくない」と、ふと思います。

では、去年の誕生日のころ、この子がよく言っていた言葉は思い出せますか。

多くの親が思い出せません。写真は顔を残してくれますが、言葉は残してくれないからです。毎日一緒にいて新しい言葉を聞いているぶん、去年の言葉は今年の言葉に上書きされていきます。

そこで、誕生日に手紙を書いてみませんか。
長い手紙でなくていい。3行で足ります。今年できたこと、今年よく言っていた言葉、親が嬉しかった瞬間。この3行を毎年書きためて、いつか、たとえば10年後の誕生日にまとめて渡す。そんな提案です。

去年の口ぐせを思い出せないのは、記憶の仕組みのせいです


「あんなに毎日聞いていたのに」と、少し落ち込んだ方もいるでしょう。これは愛情の量の話ではなく、記憶の仕組みの話です。

19世紀の心理学者エビングハウスは、人の記憶が思い出す機会のないまま急速に薄れていくことを「忘却曲線」として示しました。
脳は、思い出されなかったことを手放していきます。子どもの口ぐせも同じで、「かわいいな」と思った瞬間の記憶も、思い出す機会がなければ1年のうちに輪郭がぼやけていきます。

ただし、「思い出す」機会を一度つくるだけで、記憶は長く残ります。


誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方
研究でも、こう言われています情報はただ受け取るより、「自分のなかから引き出す」練習をしたときのほうが記憶に残りやすい。この「引き出す」練習は心理学で「検索練習」と呼ばれ、その効果が長く持続することが報告されています。*1


こどもまなびラボでは以前、この仕組みを子どもの記憶に使う方法を紹介しました(参考: こどもまなびラボ|いつかふたりで笑えるように。子どもの思い出を残す3つの習慣)。帰り道に「今日の一番を教えて」と聞くだけで、あの日の記憶が長く残る、という話です。


同じことが、親の記憶にも言えます。誕生日に「今年、この子はなんて言ってたっけ」と1年をさかのぼる。その数分が、あなた自身の検索練習になります。そして紙に書いておけば、脳が手放したあとも言葉は残ります。

手紙は、脳が手放す前に一度だけ紙に置いておくための道具です。

誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方


長く書こうとするから、白紙になる。手紙は3行でいい


「手紙」と聞くと、便箋いっぱいに、この子への想いを書かなくてはいけない気がします。「生まれてきてくれてありがとう」から始めて、成長をつづって、願いを書いて。そう考えたところで、ペンが止まります。
ケーキの片づけを終えた夜に、それだけの気力は残っていません。

多くの親が、こうして「今年も書けなかった」を繰り返します。書きたい気持ちがないのではなく、「きちんとした手紙」というハードルが高すぎるのです。

3行でいい。書くのは「想い」ではなく、「今年のこの子の姿」です。想いは、3行の姿のなかに勝手ににじみます。


【1行目:今年できたこと】例)「補助輪なしで自転車に乗れた」「ひとりで髪を洗えるようになった」【2行目:今年よく言っていた言葉】例)「ちょっとまって、いまいいとこ」「なんで?」「ママ、みてて」

【3行目:親が嬉しかった瞬間】例)「熱を出した日に『ママもねてね』と言ってくれた」

1行目の「今年できたこと」は、写真に残らないほど小さくていい
逆上がりや発表会のような、写真に残る出来事でなくてかまいません。「にんじんを1口食べた」「朝、自分で靴下をはいた」。
写真に残らないほど小さいことこそ、10年後には貴重になります。ひとつだけ選んで書きます。

2行目の「今年よく言っていた言葉」は、3行のなかでいちばん消えやすい
できたことは写真や動画にも残りますし、嬉しかった瞬間は親の胸に残ります。口ぐせだけは、来年には別の口ぐせに置き換わっていて、どこにも残りません。

「なんで?」ばかりだった年。「自分で!」と手を払われた年。「あのね、あのね」と話しはじめて、結局なにを言いたいのかわからなかった年。その年の声を、言葉のまま書きます。
かっこよく言い換えなくていい。「うんちー!」と叫んで走り回っていた年なら、それをそのまま。10年後にいちばん笑うのは、たぶんその行です。

3行目の「親が嬉しかった瞬間」は、あなたの記録になる
「寝る前に、急にぎゅっとしてくれた」「帰り道で、向こうから手をつないできた」。この子が何かを達成した話ではなく、あなたがふっと嬉しくなった瞬間を書きます。

10年後にこの手紙を読むのは、思春期のまっただなかにいる子どもです。そのとき胸に残るのは、「自分が何をできたか」より、「そのとき親がこんなふうに喜んでいた」という一行かもしれません。3行目は、この子への手紙であると同時に、あなたが確かにこの子を愛していた、その記録でもあります。

誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方


書いたら、渡す日は決めなくていい。保管は3つの手順で


便箋である必要はありません。メッセージカードでも、手帳を1枚ちぎったものでもかまいません。しまい方も決めておきます。

    • ✓封筒の表に、子どもの名前と「◯歳の誕生日」、日付を書く
    • ✓毎年同じ場所(お菓子の缶、クリアファイル1冊)に、上から重ねていく
    • ✓しまう前に、スマホで1枚だけ写真を撮っておく(引っ越しや紛失の保険に)

「10年後に渡す」と書きましたが、渡す日は決めなくてかまいません。渡さずに、あなたが読み返すだけの手紙になってもいい。ただ、10年ぶんの封筒が缶のなかに重なっている光景を、想像してみてください。1通目には「ふーっ」と息だけが出ていた顔が、10通目には「別に」と言いながらケーキを食べる姿が、あなたの3行で残っています。

書けなかった年があっても、翌年にさかのぼって書く必要はありません。空いた年は空いたまま。「この年は書く余裕がなかったんだな」ということも、10年後に読めば、ひとつの記録です。

***

「こんなこと言ってたな、忘れたくない」。そう思ったこと自体が、この1年、この子の声を聞いていた証拠です。去年の言葉はもう戻りませんが、今年の言葉は、まだあなたのなかにあります。

今夜、子どもが寝たあとに、3行だけ。「今年できたこと」「よく言っていた言葉」「嬉しかった瞬間」。誕生日がまだ先なら、今日の日付で1通目にしてしまってもいい。書いたら封筒に入れて、缶のなかにしまっておいてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 字が下手で、手紙を書くのが気が引けます。スマホのメモでもいいですか?
A. スマホのメモでもかまいません。ただ、10年後に「親の字」で残っているものは、それだけで少し別のものになります。字の上手・下手は関係ありません。迷うなら、スマホのメモに下書きして、封筒に入れるぶんだけ手で写す、くらいの気楽さで十分です。Q. 子どもが2人以上います。1人ずつ書かないといけませんか?
A. 1人ずつ、それぞれの誕生日に書くのがいちばんシンプルです。3行なので、人数が増えても負担はそれほど変わりません。「上の子のぶんは書けたけれど、下の子は書けなかった」という年があってもいいのです。空いた年は空いたままにしておいてください。Q. もう小学生です。いまから始めても遅くありませんか?
A. 何歳からでも始められます。去年までのぶんを書き足す必要はなく、次の誕生日の1通が1通目で十分です。小学生になると「今年よく言っていた言葉」の中身が幼児のころとは変わってきて、それもまた読み返したときの面白さになります。Q. 手紙を書いていることを、子どもに伝えてもいいですか?
A. どちらでもかまいません。「大きくなったら渡すね」と伝えると、子どもが楽しみに待ってくれることもありますし、そっと書きためて、渡す日にはじめて見せるのもひとつです。ご家庭の空気に合うものを選んでください。
*1 Racsmány, M., Conway, M. A., & Demeter, G. (2010)|Consolidation of episodic memories during sleep: Long-term effects of retrieval practice. Psychological Science, 21(1), 80-85.
(参考)こどもまなびラボ|いつかふたりで笑えるように。子どもの思い出を残す3つの習慣


{ "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [ { "@type": "Question", "name": "字が下手で、手紙を書くのが気が引けます。スマホのメモでもいいですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "スマホのメモでもかまいません。ただ、10年後に「親の字」で残っているものは、それだけで少し別のものになります。字の上手・下手は関係ありません。迷うなら、スマホのメモに下書きして、封筒に入れるぶんだけ手で写す、くらいの気楽さで十分です。" } }, { "@type": "Question", "name": "子どもが2人以上います。1人ずつ書かないといけませんか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "1人ずつ、それぞれの誕生日に書くのがいちばんシンプルです。3行なので、人数が増えても負担はそれほど変わりません。「上の子のぶんは書けたけれど、下の子は書けなかった」という年があってもいいのです。空いた年は空いたままにしておいてください。" } }, { "@type": "Question", "name": "もう小学生です。いまから始めても遅くありませんか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "何歳からでも始められます。去年までのぶんを書き足す必要はなく、次の誕生日の1通が1通目で十分です。小学生になると「今年よく言っていた言葉」の中身が幼児のころとは変わってきて、それもまた読み返したときの面白さになります。" } }, { "@type": "Question", "name": "手紙を書いていることを、子どもに伝えてもいいですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "どちらでもかまいません。「大きくなったら渡すね」と伝えると、子どもが楽しみに待ってくれることもありますし、そっと書きためて、渡す日にはじめて見せるのもひとつです。ご家庭の空気に合うものを選んでください。" } } ]}

The post 誕生日に、子どもへ手紙を書く。10年後に渡すための「3行でいい」書き方 first appeared on STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ.

提供元の記事

提供:

StudyHackerこどもまなび☆ラボ

この記事のキーワード