「子どもの発想力は「9歳までのヒマな時間」で育つ。退屈の意外な効果
「ママ、ヒマ〜」。夏休みも終盤にさしかかったいま、この言葉を1日に何度聞いたか分からない。そんな方も多いのではないでしょうか。「何かさせてあげなきゃ」と焦ったり、「もう自分で考えて」とイライラしたり。その気持ち、子どもの時間を大切に思っているからこそ生まれる、とても自然なものです。
でも、じつは心理学の研究では、「退屈」はただのムダな時間ではなく、子どもの発想力を育てる大切な入り口であることが分かってきています。とくに、自分で遊びを生み出す力がぐんと伸びる9歳ごろまでの時期に「ヒマだなあ」を経験しておくことは、子どもにとって貴重な財産になるのです。
今日は、「ヒマ〜」に罪悪感を抱かなくていい理由と、退屈を発想力に変える小さなコツをお届けします。
「退屈した人のほうが、アイデアが出た」という実験
「退屈なんて、ないほうがいいに決まっている」。そう思いますよね。ところが、この常識をくつがえす実験があります。
研究では、参加者に電話帳の番号を書き写すという退屈な作業をしてもらったあと、プラスチック製のカップの使い道をできるだけたくさん考えるという創造性の課題に取り組んでもらいました。すると、退屈な作業をしたグループのほうが、しなかったグループよりも多くのアイデアを出したのです。(セントラル・ランカシャー大学、心理学者サンディ・マン氏)*1
鍵になるのは「空想」だと考えられています。退屈すると、頭は自然とあれこれ空想を始めます。この心の散歩が、思いがけない発想への近道になっているというわけです。
子どもがゴロゴロしながら天井を眺めている時間。あれは何もしていないのではなく、頭のなかで発想の材料をかき混ぜている時間なのかもしれません。
退屈は「新しい何かを探しに行く」ためのエンジン
さらに面白いのは、退屈が「前向きなエネルギー」を持っているという発見です。
心理学の実験では、退屈な状態にある人は、リラックスしている人よりも、離れたもの同士を結びつけて考える連想力の課題で高い成績を示しました。退屈は「新しい経験を探しに行こう」という気持ちに火をつける状態だからだと分析されています。(ペンシルベニア州立大学、心理学者カレン・ギャスパー氏)*2
つまり、「ヒマ〜」と言っている子どもの心のなかでは、「何か面白いことないかな」というアンテナがぐるぐる回り始めているのです。
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なぜ「9歳まで」が大事なの?
幼児期から小学校低学年は、遊びを「与えられるもの」から「自分でつくり出すもの」へと変えていく時期です。
この時期に退屈と出合い、自分なりの遊びをひねり出した経験は、「自分は何もないところから何かを生み出せる」という手応えとして積み重なっていきます。
感情研究の立場からも、退屈には「いまの活動から次の目標へと人を動かす機能がある」と指摘されています。退屈は欠陥ではなく、次の行動を探させるための、心に備わったナビゲーションだというのです。(テキサスA&M大学、心理学者シェーン・ベンチ氏)*3
高学年になると、塾や習い事、友だち付き合いで予定は自然と埋まっていきます。だからこそ、時間にゆとりのある9歳までの「ヒマ」は、あとからは手に入りにくい貴重な体験なのです。
「ヒマ〜」と言われたら。今日からできる3つの工夫
とはいえ、「ヒマ〜」を放置するのは親として落ち着かないもの。そこで、なにかを我慢するのではなく、工夫を3つご紹介します。
1. すぐに答えを出さず「10分待つ」
「ヒマ」と言われたら、「何か思いつくかもよ。
ちょっと待ってみよう」とだけ返して、10分ほど見守ってみてください。多くの子は、そのうち自分なりの遊びを見つけ始めます。見つけたら「それ、自分で考えたの?」とひとこと。発想したこと自体を認めてもらえた経験が、次の「ひねり出す力」につながります。
2. 「退屈グッズ」をひとつ転がしておく
段ボール、輪ゴム、紙とペン。目的の決まっていない素材をリビングの隅に置いておくだけで大丈夫。「これで遊びなさい」と言わないのがコツです。指示のない素材は、空想の受け皿になってくれます。
3. ママも一緒に「ボーッとする」
ソファで5分、親子でゴロンと天井を眺めてみる。「何も思いつかないね〜」と笑い合うだけでも、「退屈は悪いことじゃない」というメッセージが伝わります。じつはこれ、家事に追われるママ自身の頭を休める時間にもなります。
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夏休みの残り、予定表に空白があっても焦らなくて大丈夫。その空白こそが、子どもの発想力の練習場です。次に「ママ、ヒマ〜」が聞こえてきたら、心のなかでこうつぶやいてみてください。「お、発想力が育ち始めたな」と。あなたが今日まで子どもと過ごしてきた時間のなかに、もう充分すぎるほどの土台ができています。
あとは、少しだけ待ってあげるだけでいいのです。
FAQ(よくある質問)
Q. 「ヒマ」と言われるたびに動画を見せてしまいます。よくないでしょうか?
A. 忙しいなかで動画に頼るのは自然なことですし、罪悪感を抱く必要はありません。ただ、動画は刺激を与え続けるため、空想が始まりにくいのも事実。1日のどこかに「画面のない空白の時間」がひとつあれば充分です。
Q. 待ってみても、遊びを見つけられずグズグズします。
A. 退屈から遊びを生み出す力にも個人差と練習が必要です。最初は「段ボールあるよ」と素材だけ指さすなど、小さなヒントを出してあげて大丈夫。
回数を重ねるうちに、ヒントなしで動き出す日が増えていきます。
Q. もう10歳を過ぎています。手遅れですか?
A. まったく手遅れではありません。紹介した研究の多くは大人を対象にしたもので、退屈が発想を後押しする働きは何歳になっても働きます。「9歳まで」は時間のゆとりがある時期の目安であって、締め切りではありません。
(参考)
*1 Mann, S., & Cadman, R. (2014)|Does Being Bored Make Us More Creative?. Creativity Research Journal, 26(2), 165-173.
*2 Gasper, K., & Middlewood, B. L. (2014)|Approaching novel thoughts: Understanding why elation and boredom promote associative thought more than distress and relaxation. Journal of Experimental Social Psychology, 52, 50-57.
*3 Bench, S. W., & Lench, H. C. (2013)|On the Function of Boredom. Behavioral Sciences, 3(3), 459-472.
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