0〜13歳「体・脳・心」の発達早見表。いま何が伸びる時期かが1枚でわかる
「もう3歳なのに、まだハサミがうまく使えない」「習い事、始めるならいまなのかな」「最近やけに反抗的だけど、時期のせい?」
子どもの年齢がひとつ上がるたびに、「この年齢で何ができていればいいのか」が気になります。
ただ、子どもの体・言葉・脳・心は、同じ速さでは育ちません。脳医学者で東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏は、「使う脳の部分によって、伸ばしたい能力によって、成長の始まるタイミングは違います」と述べています。*1
指先が器用になる時期、言葉が伸びる時期、感情を抑える力が育つ時期。それぞれ別々にやってきます。
だとすれば、「できないこと」をひとつ数えるより、「いま何が伸びている時期なのか」を知っておくと、子どもの見え方が変わります。この記事では、体・言葉・脳・心の4列で、0歳から13歳までを1枚の表にまとめました。
体・言葉・脳・心は、同じ速さでは育ちません
脳の発達には順番があります。
文教大学教授で小児科医の成田奈緒子氏は、脳を「体の脳」(脳幹・間脳・小脳)、「おりこうさん脳」(大脳新皮質)、「心の脳」(主に前頭葉)の3段階に分け、「これらの発達は1〜3の順番でしか進まない」と断言しています。(参考: こどもまなびラボ|【発達黄金期に脳を刺激する7つの方法】)
運動は運動で、別の道筋をたどります。運動能力にもっとも寄与する神経の発達は、生まれてから8歳頃までに約80%、12歳前後で約90%に達します。9〜12歳頃には、新しい動きをその場で覚える「即座の習得」ができるようになります。(リーフラス株式会社の市川雄大氏)
心の育ちについては、心理学者エリク・H・エリクソンが人の一生を8つの発達段階に分け、各段階で向き合う「発達課題」を示しています。*2
同じ子どものなかで、この3つが別々のテンポで進んでいるわけです。
0〜13歳「体・言葉・脳・心」の発達早見表
年齢の区切りは、エリクソンの段階、成田氏の3段階、ゴールデンエイジの区分が重なる位置で、7つに分けました。
年齢体(運動)言葉・思考脳心0〜1歳半
乳児期脳から筋肉への「情報の通り道」である神経系が急速に育ちはじめる視覚・聴覚など五感が発達。
読み聞かせや歌で耳を育てる「からだ脳」(脳幹・間脳・小脳)が育つ。スキンシップで出るオキシトシンの分泌量は1歳頃にほぼ決まる乳児期:信頼感 対 不信感。ケアを受けて「期待」を得る1歳半〜3歳
幼児前期歩くようになり活発に。散歩も公園遊びも立派な運動しゃべるようになる。要求をそのまま言葉や行動に表す「からだ脳」が育つ。生活リズムと五感の刺激が栄養。知識の詰め込みはNG幼児前期:自主性 対 羞恥心。「イヤ」「自分で」から「意欲」を得る3〜5歳
遊戯期指先の器用さ「巧緻性」の発達ピーク。
積み木・お絵かき・工作「どうして?」の質問が連発し、ごっこ遊びに熱中。絶対音感は4〜5歳に獲得しやすい「おりこうさん脳」(大脳新皮質)の成長が始まる。知的好奇心の最適期は3〜6歳。「体の脳」のピークは5歳頃まで続く遊戯期:自発性 対 罪悪感。「目的意識」を得る5〜7歳
学童期の入り口プレゴールデンエイジ(5〜9歳)。投げる・走る・跳ぶなど「36の基本動作」を遊びで。鬼ごっこ、ボール遊び、縄跳び、スキップ言語能力が発達し、口が達者に。言い訳や反論も増える「おりこうさん脳」の成長期。
大脳皮質と小脳が鍛えられ、言語と手先の微細な動きが伸びる。楽器や運動を始めると基礎的な能力になる学童期(5〜12歳):勤勉さ 対 劣等感。課題を仕上げて「能力」を得る7〜10歳
学童期神経の発達は8歳頃までに約80%。9歳からゴールデンエイジへ言語の発達がピーク。大人と変わらない話し方をし、相手によって言葉を使い分ける。聴覚は8歳頃までに完成「こころ脳」(社会の脳)が成長。表情を読む・我慢する・想像する力が伸び、集中力・自制心が鍛えられる自己肯定感が高まり、自立と自律が進む。「自分でやりたい」。
親への反発が格段に増える10〜12歳
学童期の後半ゴールデンエイジ(9〜12歳)。「即座の習得」ができ、覚えた動きは一生忘れない。神経系は12歳頃までにほぼ完成思考やコミュニケーションを担う前頭前野が著しく発達しはじめる(10歳〜)「心の脳」(主に前頭葉)の発達ピークは10歳以降。感情のコントロール・思考・判断を担う学校では理性的、家庭では甘えが出る。勤勉さ 対 劣等感は12歳まで続く12〜13歳
青年期の入り口ポストゴールデンエイジ(12〜14歳)。骨格・筋力・心肺機能の成長が著しく、複雑な動作やスタミナの練習が効く理解力が備わり、試合を振り返って反省点を挙げられる「心の脳」の発達が続く。「おりこうさん脳」のピークは18歳頃まで。13歳頃までに脳をつくる栄養素をとる青年期(12〜18歳):アイデンティティー 対 混乱。
「自分ってなんだろう」から「忠誠」を得る
横に読むと、同じ年齢の子のなかで同時に進んでいることがわかります。縦に読むと、たとえば「体」の列だけを追って、12歳までの流れをつかめます。そして境目はグラデーションです。前出の市川氏も、各期間を「明確にわけられるものではありません」と話しています。
年齢帯ごとに、伸びている最中のものを見ていきます
0〜1歳半:世界を信じる力と、五感が育ちますエリクソンの「乳児期」の発達課題は「信頼感 対 不信感」。泣いて助けを求め、応えてもらう経験を重ねることで世界への信頼感が育ち、「期待(hope)」という力を得ます。
脳の側では、スキンシップが大きな役割を果たします。肌に触れられるとオキシトシンが分泌されて情緒が安定し、その分泌量は1歳頃にほぼ決まるといいます。
(身体心理学者で桜美林大学教授の山口創氏)
抱きしめる、手をつなぐ。それがこの時期の脳育てです。脳医学者の林成之氏は0〜3歳を「五感」が発達する時期としており、読み聞かせや歌が耳を育てます。*3
1歳半〜3歳:「イヤ」と「自分で」が意欲になります
歩き、しゃべり、何にでも「イヤ」と言う。エリクソンの「幼児前期」の発達課題は「自主性 対 羞恥心」です。着替えを自分でやろうとする子に機会を与え、ちょうどいいタイミングで手を貸せば、子どもは「意欲(will)」を獲得します。逆に、先回りしてなんでもやってあげると、意欲は育ちません。
脳は「からだ脳」が育つ時期です。成田氏によれば、生活リズム、食事、ふれあい、散歩など五感からの刺激が何よりの栄養で、知識の詰め込みは要りません。わがままはおおらかに受け止め、我慢できたときにほめる。この時期に必要なのは、そのくらいです。
(参考: こどもまなびラボ|子どもの能力を驚異的に伸ばす「育脳」)
3〜5歳:指先と好奇心のピークがやってきます
瀧氏によると、指先の器用さ「巧緻性」をつかさどる運動野は、3〜5歳に発達のピークを迎えます。積み木、お絵かき、ハサミで切る遊びが、この時期の脳にもっとも効きます。「まだハサミがうまく使えない」3歳児は、遅れているのではなく、いままさに練習の真っ最中ということになります。
ピークはもうひとつあります。瀧氏は「3〜6歳頃の未就学時期は知的好奇心を伸ばすのに最適」と述べています。「どうして○○なの?」と質問が続く時期で、エリクソンの「遊戯期」とも重なります。発達課題は「自発性 対 罪悪感」、ここを越えると「目的意識(purpose)」という力が身につきます。
5〜7歳:多様な動きを体に入れる「プレゴールデンエイジ」が始まります
順天堂大学スポーツ健康科学部長の吉村雅文氏の定義では、5〜9歳がプレゴールデンエイジ、9〜12歳がゴールデンエイジです。日本女子体育大学学長の深代千之氏は「運動神経の伝導速度に生まれつきの個人差はない」と言いきります。*4差をつくるのは、幼少期の運動環境だということです。
人間の基本的な動きは「36の基本動作」に分類でき、幼少期からバランスよく身につけることが望ましいとされています。(山梨大学学長の中村和彦氏) *5
鬼ごっこ、ボール遊び、縄跳び、スキップ。運動の専門家がそろってすすめる遊びです。脳は「おりこうさん脳」の成長期に入り、言語能力が発達して口が達者になります。反論してきたら、まず子どもの意見を聞く。「失敗して、考えさせて、行動を変えさせる」の繰り返しが脳を育てます。
7〜10歳:言葉がピークを迎え、「こころ脳」が育ちます
成田氏が「こころ脳」と呼ぶ「社会の脳」が育ちはじめる時期です。成田氏は「心の脳」の本格的な発達ピークを10歳以降としていますが、土台は7歳頃からつくられます。言語の発達はピークを迎え、大人と変わらない話し方をし、相手によって言葉を使い分けるようになります。表情を読み取る、我慢する、想像する。こうした力が伸び、コミュニケーション能力や自制心が鍛えられます。
この時期の脳に「指示・命令」は避けるべきだと成田氏は言います。「どうしたいの?」と聞いて自分で決めさせ、親はサポートに回る。勉強や習い事より、責任をもって家事を担当することが「こころ脳」を鍛えるそうです。親への反発もこの時期から格段に増えますが、それは自立と自律が進んでいる途中の姿でもあります。
10〜12歳:動きを一生ものにする「ゴールデンエイジ」の本番です
9〜12歳頃のゴールデンエイジは、一生に一度の「運動神経が伸びる黄金期」です。新しい動作を何度か見ただけで身につける「即座の習得」ができ、覚えた動きは一生忘れません。神経系は12歳頃までにほぼ100%まで発達するとされています。*6
脳では、10歳を過ぎると思考やコミュニケーションを担う前頭前野が著しく発達します。成田氏のいう「心の脳」の発達ピークも10歳以降で、その前に3つの脳の土台ができている必要があります。学校では理性的にふるまえる一方、家庭では甘えが出る時期でもあります。
12〜13歳:体が大きく変わり、「自分とは何か」を問い始めます
12〜14歳頃は「ポストゴールデンエイジ」とされます。理解力が備わって複雑な動作のトレーニングができるようになり、骨格や筋力、心肺機能の成長も著しい時期です。(アークアスリート代表・樋口彰美氏)
遺伝子の影響が表れる13歳頃までに、脳をつくる栄養素を十分にとることもすすめられています。(管理栄養士・小山浩子氏)
心は、エリクソンの「青年期」に入ります。発達課題は「アイデンティティー 対 アイデンティティーの混乱」。「自分ってなんだろう」と思い悩み、確信できれば「忠誠(fidelity)」という力を得ます。ここから先は、親が伸ばす時期ではなく、子どもが自分で選ぶ時期です。
表は、いまの年齢の行から読みます
「うちの子は、ひとつ前の行のことがまだできていない」と思った方もいるかもしれません。ただ、表に出てくる専門家はそろって「遅れても取り戻せる」と言っています。瀧氏は6歳を過ぎても刺激を与え続ければ脳は成長すると述べ、前出の中村氏は「運動神経はどんな子でもよくなります!」と断言しています。*5
ピークは「伸びやすい時期」であって、締め切りではありません。
- ✓いまの年齢の行を横に読み、伸びている最中のことに遊びや声かけを合わせる
- ✓ひとつ前の行に、まだ薄いところがあれば遊びで足す。急ぐ必要はない
- ✓次の行の準備はまだしない。行が変わってから始めても間に合う
「習い事、始めるならいま?」の答えも、表のなかにあります。瀧氏は、ある能力がいちばん伸びやすい時期にその能力に関わる習い事を始め、次の時期には別の習い事を試す、その繰り返しが能力を効率よく伸ばすと述べています。*1
3〜5歳なら指先、5〜9歳なら多様な動き、7〜10歳なら言葉と家事。「何を」より「いつ」を、表の行が教えてくれます。
***
「もう3歳なのに」と数えていた月日は、指先と好奇心がいちばん伸びていた時間でもありました。今夜、お子さんの年齢の行をひとつ読んで、明日の遊びをそこに合わせてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 表の年齢より遅れている気がします。取り戻せますか?
A. 表の区切りは専門家の区分に合わせた目安です。市川雄大氏は各期間を「グラデーション」と表現し、ピークが早い子も遅い子もいると話しています。瀧靖之氏は6歳を過ぎても刺激を与え続ければ脳は成長すると述べ、深代千之氏は「生まれつき運動神経が悪い人はいない」と断言しています。まずは、ひとつ前の行にある遊びをひとつ足すところから始めてみてください。
Q. 習い事は何歳から、何を始めるのがいいですか?
A. 瀧靖之氏の考え方は、ある能力がいちばん伸びやすい時期に、その能力に関わる習い事を始めることです。3〜5歳は巧緻性と聴覚のピークなので、工作や楽器が合います。5〜9歳のプレゴールデンエイジは、特定スポーツの反復練習より、全身を使う多様な動きができるものが向いています。9〜12歳のゴールデンエイジは複数のスポーツに挑戦させたい時期で、元メジャーリーグ日本担当スカウトの小島圭市氏は、活躍するトップアスリートのほとんどが幼少期に2〜3種類のスポーツを経験していると話しています。
Q. ゴールデンエイジの年齢が、本や記事によって違うのはなぜですか?
A. 専門家によって1〜2歳の幅があるためです。吉村雅文氏はプレ5〜9歳・ゴールデン9〜12歳、市川雄大氏はプレ5〜8歳・ゴールデン9〜12歳、樋口彰美氏はプレ3〜6歳・ゴールデン6〜12歳、深代千之氏はプレ3〜5歳・ゴールデン6〜8歳としています。共通するのは「12歳頃までに神経系の発達がほぼ完了する」という点で、12歳までに多様な運動経験を積むことに意味があるのはそのためです。
Q. 反抗的になってきました。表のどこを見ればいいですか?
A. 7〜10歳の行の「心」の列です。成田奈緒子氏によれば、この時期は心が不安定になったり親に反発したりすることが格段に増える一方、自己肯定感が高まり自立と自律が進む時期でもあります。指示・命令を避け、「どうしたいの?」と聞いて自分で決めさせること、弱音を吐いたときはまず共感して安心させること。それがこの時期の関わり方です。
*1: 瀧靖之(2016),『「賢い子」に育てる究極のコツ』, 文響社.
*2: Erik H. Erikson(1950), Childhood and Society(邦訳: 『幼児期と社会』全2巻, みすず書房, 1977〜1980年)
*3: 林成之(2011),『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!脳を鍛える10の方法』, 幻冬舎新書.
*4: 深代千之(2018),『子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル』, カンゼン.
*5: 中村和彦(2013),『運動神経がよくなる「からだ遊び」』, PHP研究所.
*6: 髙橋宏文(2018),『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』, メディア・パル.
(参考)こどもまなびラボ|【発達黄金期に脳を刺激する7つの方法】好奇心が伸びるのは3歳~、「心の脳」の発達ピークは10歳~。/子どもの能力を驚異的に伸ばす「育脳」。脳の発達段階と年齢に適したサポートを/エリクソンの「発達段階」を知ろう。年齢別「発達課題」はクリアできてる?/子どもの運動能力が飛躍的に伸びる! ゴールデンエイジよりも重要な「プレ・ゴールデンエイジ」の過ごし方/子どもの運動能力が上がる! ゴールデンエイジとプレゴールデンエイジの過ごし方/「運動神経のいい子」特徴6つ。12歳までに運動神経はもっと伸ばせる!
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