運動に無縁だったから、本気でサッカーしたい我が子のサポートの仕方が分からない問題
親が学生時代に運動とは無縁だったから、子どものサポートが分からない。本気でサッカーをしたい息子が移籍したがっているけど、どうサポートしたらいい?というお母さんからの相談。
同じような悩みを抱える方もいらっしゃるのでは?
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにどんなサポートが良いのかアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<サッカーママからのご相談>
この春から4年生の息子は、2年生の時から地域のサッカーチームでサッカーをしています。
私は運動には全く縁がなく、サッカーをやりたい、今のチームに入りたいと言ったのも彼の意思によるものです。
3年生の夏頃より、別のチームに移りたいと言うようになったのですが最初は聞き流していました。
今のチームは家から近い場所で練習でき、お友達もいるので私も安心だからです。
ただ、彼が真剣な様子なのでしっかり話を聞くと「強くなりたい、もっと上手になりたいからチームを変わりたい」と強い意思があることがわかりました。
親として、どうサポートすべきなのでしょうか。アドバイスいただけたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
4年生の息子さんは「強くなりたい、もっと上手になりたいからチームを変わりたい」と自分がどうしたいかという意思をハッキリ表明しています。とても主体的に考えている様子がお母さんのメールから伝わります。 失敗を恐れたり、親の顔色をうかがったり、他の仲間がどうするかを見て同調圧力に従ったりするそぶりが見られません。
多くの親御さんが「どうしたいのかわからない」「うちの子は自分(の意思が)がないんです」と嘆かれるなか、非常に頼もしい限りです。
生まれてからこれまで、お母さんが息子さんを尊重してきたからこそ、このような主体性が育まれたのではないでしょうか。このような学校で育ちづらい非認知能力を、これからもぜひ伸ばしてあげてください。
それを考えると、お母さんが行うサポートの一番目は「子どもを尊重すること」です。息子さんが自己決定したことは、できうる限り叶えてあげましょう。
例えば、行きたいクラブが自宅からあまりに遠いとか、おうちの事情を鑑みたときにあまりに高額といったミスマッチがなければ、息子さんがやりたいようにやらせてあげてください。
そうせずに何でも親が決めてしまうと、親が選んだ環境で不具合が起きたり、息子さんが試合に出られなかったりすれば、そういった不遇を親御さんのせいにしてしまいがちです。
彼自身が自分で決めて、自分で責任をとる。そのような習慣をつけるためにも、お母さんご自身の都合だけで決めないほうがいいでしょう。
お母さんが「今のチームは家から近い場所で練習でき、お友達もいるので安心」とお考えになるのは、同じ親としてよく理解できます。お母さんの考えと、息子さんの希望にどの程度譲歩できるかをご家族で話し合ってください。
もうひとつのサポートは、とてもシンプルです。
チームを変わったら、必要な送迎があればできるときはしてあげる。ユニフォームや練習着を洗濯してあげる。遠征などでお弁当が必要なときはつくってあげる。遠征や合宿の費用が必要なときは、無理なくできる範囲で出してあげる。
もしかしたら、今までもしていることでしょう。
同連載でも、昨年1月にお母さんと類似したご相談がありました。ご夫婦ともサッカーの経験がなく「家庭で子どもに的確なアドバイスができない」とお母さんは悩んでおられました。
お子さんがレギュラーを外れたことがショックだったようで「コーチに対しても子どものアピールも全くしてきませんでした。親としてできていない事もあったなと反省もしています」とありました。
加えて、期限をつけて子どもに課題(次回公式試合でスタメンなければ、やめる)などを与えようかと考えている、とも書かれていました。(※該当記事は関連リンクの一番上から)
さて、「スポーツの競技経験がない」親御さんには2通りのタイプがあります。
上述したお母さんのように「ダメならやめろ」と、目に見える結果(レギュラーか否か)だけでスポーツを子どもから奪ってしまうタイプです。技術を身につけることの大変さや、試合中走り続けることのしんどさを経験していないこともあるのか、うまくいかないわが子に対し、率直に申し上げると「冷酷」です。
スタメンでなければサッカーをやめさせるなんて、とんでもないことです。
それは例えば「テストで平均点を取れないならもう小学校に行くのをやめなさい」と命じていることと同じ論法です。飛躍しすぎると思われるかもしれません。しかし、親御さんが見なければいけないのは「レギュラーか否か」ではなく、「サッカーを子どもが楽しんでいるかどうか」です。
楽しんでいるなら続ければいいし、何らかの理由で楽しめなかったり、他にやりたいことがあって本人がやめたいといえば「そうなの。
ところが、それができない。
その理由は実は競技経験の有無は関係ありません。目の前にいるわが子が自分の期待通りではないことにいら立っている。何かができない、うまくいかないわが子を嫌悪する感情に近いかもしれません。
[[pagebreak]]
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
私がそう考えるのは、スポーツ経験のないグッドタイプ(Good type)の親御さんも確かに存在するからです。
「やったことがないからわからないけど、よくそんなにずっと走っていられるね。偉いね。
そんなふうに、自分たちがわからない、想像もつかないことをやっている子どもをこころから尊敬する保護者です。そういう人たちのもとで育つ子どもは、何をやっても伸びます。つまり、親がサッカー経験者であろうがなかろうが関係ないということです。
例えば、「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を思い切り出して一生懸命サッカーに取り組むことが、「サッカーで伸びる子ども像」だと思い込んでいないでしょうか。1年前の相談でご紹介したサカイクの柴崎岳選手(鹿島アントラーズ)のインタビューを紹介します。(※該当記事は関連リンクの上から2番目)
彼はそこで「母はいわゆる、ママ友応援団という感じで応援に来ていました。ピッチの外からワーキャー言っていましたね。○○しなさいとかではなく、単純に子どもたちのプレーに対して『惜しい~』などとリアクションする程度でした。母は僕のサッカーに対しては何も言わなかったです」と述懐しています。
運動経験がなくても、いくらでも子どもを伸ばせます。心配ありません。上辺の成果ではなく、お子さんがいかに頑張ったか、楽しんでいるかにぜひ目を向けてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)
同じような悩みを抱える方もいらっしゃるのでは?
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにどんなサポートが良いのかアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
<サッカーママからのご相談>
この春から4年生の息子は、2年生の時から地域のサッカーチームでサッカーをしています。
私は運動には全く縁がなく、サッカーをやりたい、今のチームに入りたいと言ったのも彼の意思によるものです。
3年生の夏頃より、別のチームに移りたいと言うようになったのですが最初は聞き流していました。
今のチームは家から近い場所で練習でき、お友達もいるので私も安心だからです。
ただ、彼が真剣な様子なのでしっかり話を聞くと「強くなりたい、もっと上手になりたいからチームを変わりたい」と強い意思があることがわかりました。
親として、どうサポートすべきなのでしょうか。アドバイスいただけたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
4年生の息子さんは「強くなりたい、もっと上手になりたいからチームを変わりたい」と自分がどうしたいかという意思をハッキリ表明しています。とても主体的に考えている様子がお母さんのメールから伝わります。 失敗を恐れたり、親の顔色をうかがったり、他の仲間がどうするかを見て同調圧力に従ったりするそぶりが見られません。
多くの親御さんが「どうしたいのかわからない」「うちの子は自分(の意思が)がないんです」と嘆かれるなか、非常に頼もしい限りです。
生まれてからこれまで、お母さんが息子さんを尊重してきたからこそ、このような主体性が育まれたのではないでしょうか。このような学校で育ちづらい非認知能力を、これからもぜひ伸ばしてあげてください。
■お母さんが行うサポートの一番目は「子どもを尊重すること」
それを考えると、お母さんが行うサポートの一番目は「子どもを尊重すること」です。息子さんが自己決定したことは、できうる限り叶えてあげましょう。
例えば、行きたいクラブが自宅からあまりに遠いとか、おうちの事情を鑑みたときにあまりに高額といったミスマッチがなければ、息子さんがやりたいようにやらせてあげてください。
そうせずに何でも親が決めてしまうと、親が選んだ環境で不具合が起きたり、息子さんが試合に出られなかったりすれば、そういった不遇を親御さんのせいにしてしまいがちです。
彼自身が自分で決めて、自分で責任をとる。そのような習慣をつけるためにも、お母さんご自身の都合だけで決めないほうがいいでしょう。
お母さんが「今のチームは家から近い場所で練習でき、お友達もいるので安心」とお考えになるのは、同じ親としてよく理解できます。お母さんの考えと、息子さんの希望にどの程度譲歩できるかをご家族で話し合ってください。
■普通の小学生としての生活を支えてあげて
もうひとつのサポートは、とてもシンプルです。
チームを変わったら、必要な送迎があればできるときはしてあげる。ユニフォームや練習着を洗濯してあげる。遠征などでお弁当が必要なときはつくってあげる。遠征や合宿の費用が必要なときは、無理なくできる範囲で出してあげる。
もしかしたら、今までもしていることでしょう。
何ら気負う必要はありません。普通の小学生としての生活を支えてあげればよいのです。
同連載でも、昨年1月にお母さんと類似したご相談がありました。ご夫婦ともサッカーの経験がなく「家庭で子どもに的確なアドバイスができない」とお母さんは悩んでおられました。
お子さんがレギュラーを外れたことがショックだったようで「コーチに対しても子どものアピールも全くしてきませんでした。親としてできていない事もあったなと反省もしています」とありました。
加えて、期限をつけて子どもに課題(次回公式試合でスタメンなければ、やめる)などを与えようかと考えている、とも書かれていました。(※該当記事は関連リンクの一番上から)
■スポーツ経験のない保護者には2通りのタイプがあるまずは「Bad」タイプの紹介
さて、「スポーツの競技経験がない」親御さんには2通りのタイプがあります。
まずバッドタイプ(Bad type)。
上述したお母さんのように「ダメならやめろ」と、目に見える結果(レギュラーか否か)だけでスポーツを子どもから奪ってしまうタイプです。技術を身につけることの大変さや、試合中走り続けることのしんどさを経験していないこともあるのか、うまくいかないわが子に対し、率直に申し上げると「冷酷」です。
スタメンでなければサッカーをやめさせるなんて、とんでもないことです。
それは例えば「テストで平均点を取れないならもう小学校に行くのをやめなさい」と命じていることと同じ論法です。飛躍しすぎると思われるかもしれません。しかし、親御さんが見なければいけないのは「レギュラーか否か」ではなく、「サッカーを子どもが楽しんでいるかどうか」です。
楽しんでいるなら続ければいいし、何らかの理由で楽しめなかったり、他にやりたいことがあって本人がやめたいといえば「そうなの。
じゃあ、ほかの好きなことをすればいいよ」と言ってあげればいいのです。
ところが、それができない。
その理由は実は競技経験の有無は関係ありません。目の前にいるわが子が自分の期待通りではないことにいら立っている。何かができない、うまくいかないわが子を嫌悪する感情に近いかもしれません。
[[pagebreak]]
■スポーツ経験が無くても良いサポートができる親もいる「Good」タイプの親とは
私がそう考えるのは、スポーツ経験のないグッドタイプ(Good type)の親御さんも確かに存在するからです。
「やったことがないからわからないけど、よくそんなにずっと走っていられるね。偉いね。
しかも手じゃなくて足でボールをコントロールするなんてすごいね」
そんなふうに、自分たちがわからない、想像もつかないことをやっている子どもをこころから尊敬する保護者です。そういう人たちのもとで育つ子どもは、何をやっても伸びます。つまり、親がサッカー経験者であろうがなかろうが関係ないということです。
例えば、「悔しい」とか「負けたくない」といった感情を思い切り出して一生懸命サッカーに取り組むことが、「サッカーで伸びる子ども像」だと思い込んでいないでしょうか。1年前の相談でご紹介したサカイクの柴崎岳選手(鹿島アントラーズ)のインタビューを紹介します。(※該当記事は関連リンクの上から2番目)
彼はそこで「母はいわゆる、ママ友応援団という感じで応援に来ていました。ピッチの外からワーキャー言っていましたね。○○しなさいとかではなく、単純に子どもたちのプレーに対して『惜しい~』などとリアクションする程度でした。母は僕のサッカーに対しては何も言わなかったです」と述懐しています。
運動経験がなくても、いくらでも子どもを伸ばせます。心配ありません。上辺の成果ではなく、お子さんがいかに頑張ったか、楽しんでいるかにぜひ目を向けてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践 」(NHK出版新書)