北中米W杯から見る日本と強豪国の「個の力」の違いは? もっと成長するために育成年代で必要な事を教えて

サカイク
先日閉幕したW杯。日本代表は予選グループを通過するも、決勝トーナメント初戦でブラジル代表に敗れ、大会を終えました。

日本と世界の強豪国にあった差、育成年代で必要なことなど、今回のW杯から学ぶことは何かを池上正さんに伺いました。

(構成・文島沢優子)

北中米W杯から見る日本と強豪国の「個の力」の違いは? もっと成長するために育成年代で必要な事を教えて
(写真は少年サッカーのイメージです)

<編集部からの質問>

2026年6月30日、サッカー日本代表が北中米カリブ海ワールドカップの決勝トーナメント初戦でブラジルと対戦しました。

日本が先制点をあげたものの、後半すぐに同点に追いつかれると、アディショナルタイムに追加点を入れられてしまい、負けてしまいました。

近年はメンバーのほとんどが海外リーグでプレーし、前回大会ではスペイン、ドイツに勝利。昨年、今年と親善試合とはいえブラジル、イングランドに勝利するなど過去最強の代表と称する声も多かった日本代表ですが、今回の大会でも決勝トーナメントでの勝利はできませんでした。

世界との差(違い)はまだまだあるように感じられましたでしょうか?差があるとしたらどの辺ですか?

選手たちはインタビューで個々の力が不足していた、というような事を言っていました。
それは判断力を含むスキルのことですよね。

日本の育成が今回の大会から学ぶことは何か、教えてください。

<池上さんからのアドバイス>

今回はサカイク編集部からの質問です。

今月閉幕したばかりのW杯北中米カリブ海大会における日本代表の戦いぶりから、私が感じたことをお伝えします。



■解説者が担当する国の育成事情を説明できなくてはならない


スペイン対アルゼンチンの決勝中継を解説した元選手の方が、スペイン代表を指して「こういう選手たちは小さい頃どんなふうに育ったんでしょうね?」と何度もおっしゃっていました。

彼らがどう育ったかを、W杯決勝を解説するような人たちが説明できる国にならなくてはいけないなと感じました。

■U-8年代のPSG対ユヴェントスを見て「日本は到底敵わない」と感じた理由


先頃ドイツ在住の仲間者仲間から、U8パリサンジェルマン(PSG)対ユヴェントス戦の映像が送られてきました。

それぞれの下部組織に所属する8歳以下なので、フランスとイタリアの子どもたちです。
試合は5対5で行われていました。それを観たとき、これでは日本は到底敵わないと感じました。

具体的にはどういう違いがあったかというと、試合はキーパーを入れて5人なのですがフィールドの4人のポジショニングが素晴らしかったのです。

それぞれの選手が自分がどの位置にいると攻撃が優位になるかとか、あるいはどこでもらうとスムーズに攻撃できるかを全員がしっかりと理解して動けていました。

つまり、ボールがないところの動きができているわけです。ひとりで持ち込むとか、何かする場面がほぼありませんでした。

両チームとも常に全体で連動していて、ちゃんとパスを出して、次はどこから攻めようかといったことがイメージできていることが伝わってきました。

■日本と世界との「個の力の差」とは何か


今回のW杯。
サカイク編集部からの質問にあったように、日本代表の選手たちは「個々の力が不足していた」と発言していました。コーチの中でも「個の力が何なのか?」といった疑問がSNSなどで上がっていたそうで、そのあたりが整理されてないようです。

日本で「個の力」となると、どうしても「止める・蹴る」になってしまいます。しかしながら、世界との「個の力の差」は、上述したようにまさしく判断力だと私は考えます。

例えば、相手コートに入って、そこで勝負しにいって大丈夫かどうか。ここでなんとか頑張れたらシュートまで持っていけるかどうか。そのような判断です。ここでミスするよりもパスしたほうが確実にチームとしてはいいのか否か。


そういった見極め、判断の質が、パリサンジェルマンもユヴェントスも、日本の子どもたちとはまったく違っていました。

■スペインのヤマル選手が見せた「サッカーIQ」の高さ


W杯決勝の話に戻りましょう。

後半、スペインのヤマル選手は縦に抜きませんでした。前半のようにサイドに張ってボールをもらいはしても、そこではパスを出すことが多かった。ドリブルをしたとしても、横にずらしたり、エンドライン際をえぐってポケットに侵入してチャンスを作り出していました。

それは前半縦に抜いてかなりの回数止められていたからでしょう。無理に勝負にいかないほうがいいという彼の判断だと映りました。

その都度の認知力、判断力が高い。
サッカーを本当によく知っています。サッカーIQなど最近よく言われますが、それが本当に高いとあらためて感じさせられました。

指導者の皆さんには、これをテレビで観ていて「ヤマルは抑えられたからダメだ」「弱気だ」ではなく、攻められなかったのではなくて、あえて行かなかった、状況判断をする能力が高いことを子どもたちに伝えてほしいと思います。

日本代表でいうと、三笘薫選手が欠場したらアウトサイドどうするの?と皆さん心配していました。では三笘選手が入ったら、彼はずっとチャレンジし続けないといけない。そういう雰囲気がありました。

でも、彼のドリブルがどの国のディフェンダーにも通用するわけではありません。日本はチームで点を取ることをもっと掘り下げ、育成年代から浸透させなくてはいけません。


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■世界を知っている指導者をもっと育てないといけない


北中米W杯から見る日本と強豪国の「個の力」の違いは? もっと成長するために育成年代で必要な事を教えて
(写真は少年サッカーのイメージです)

そのためにも、Jリーグも含めて育成の分野に世界を知っているコーチをもっと育てるべきでしょう。ここの「世界を知る」は、海外でプレーをした経験があるとか、指導した経験があるという意味です。私が視察に出かけているドイツにも頑張っているコーチはいますし、長年ドイツで指導を続けライセンスも取得して帰国した私の教え子もいます。

そんな経験豊かな指導者が日本に帰ってきたので、練習や試合を一緒に見たことがあります。試合などを見ながら話していると、日本の選手たちの足らないところをすごくよくわかっています。

自分たちでボールをしっかり収めてキープして、そこから崩すといったことができない。すぐに蹴ってしまうのですが、彼にはそういったところを補う指導ができます。

ところがそのような指導で結果を出すには時間がかかります。
そうすると、周囲がそれを待てません。多くの人たちがサッカーの現在地を理解していないからです。他のコーチたちもチームを勝たせることに一生懸命なので、話が合いません。

「世界に通用する個の力」とは何か。指導者の皆さんを始めサッカー関係者にはぜひこれを機会に深く掘り下げてほしいと思います。

過去の池上ゼミ連載で「認知・判断力」の重要性を説明した記事を紹介するので、ぜひ関連リンクをご覧ください。
北中米W杯から見る日本と強豪国の「個の力」の違いは? もっと成長するために育成年代で必要な事を教えて


池上正(いけがみ・ただし)

「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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