聖心女子大学卒。平成7年、「娘のいいぶん~がんこ親父にうまく育てられる法」で日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。平成7年より「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)に出演中。千葉工業大学理事。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。文部科学省、警察庁、国交省等で有識者会議等委員を務める。元品川区教育委員長。
政治ジャーナリストの細川珠生氏がおくる、「細川珠生のここなら分かる政治のコト」。ママになって子どもの将来を願うと政治のことをちゃんと知っておきたいけど、子育てに仕事に忙しい…。そんなママに向けて、気になる政治のことをわかりやすくお届けまします。
子どもができると自然と気になりだす政治のこと。子どもを育てる環境がどんなふうに変化しているのか、政治を通して知っていくことはとても大切です。自身も小学生の子どもを持つ政治ジャーナリスト細川珠生が政治ビギナーのママに向けて優しく教えてくれます。
参議院選挙が始まりました。6月22日の公示日から7月10日の投開票日まで18日間、候補者や政党の訴えが街のあちらこちらで聞こえます。 今回の選挙から、選挙権が18歳以上となり、新たに240万人の有権者が誕生。高校生の中にも投票できる人がいるということで、教育現場では「主権者教育」に力を入れています。また自治体の判断によっては、期日前投票の時間延長や、指定された投票所以外でも駅やショッピングセンターなど、人が多く集まる場所に投票所を設けることができる(共通投票所)など、より投票しやすい環境ができるもの、今回の大きな特徴です。その目的は、投票率のアップ。特に20代、30代の若い世代の投票率のアップに期待がかかります。 60代と20代の投票率は35%以上の開きが 選挙は年代が上がるほど投票率が高く、2014年12月の衆院選では、60代の投票率は68.28%。それに対して、20代は半分未満の32.58%でした。若い人たちが政治に関心を持つことは大きな課題ですね。ただ、若い人たちだけではなく、全体で見ても投票率はとても低いのです。特に参院選は、衆院選と比べても平均で5%くらい低く、55%前後が続いています(衆院は60%前後)。 ウーマンエキサイト読者のみなさんも、「選挙? うーん……」となかなか投票所に足が向かなかった経験があるのでは? 日曜日は出かける用事があるし、かといって、期日前投票もしそびれてしまったなどと、悪気はないのだけど、正直、選挙にはなかなか行かない、あるいは、他の用事との兼ね合いの中で、優先度が低いなんて言う人も珍しくないでしょう。そもそも、誰に入れたいいのかも分からないから、行かないというのが本音かもしれません。 しかし、今回の参院選はちょっと頑張って投票所に足を運んでください。選挙は民主主義の基本中の基本。政治は、私たちの社会のルールを決め、国の進むべき道を決めるところであり、私たちは選挙によって、その代表者たる議員を選ぶのです。「主権が国民にある」とはそういうことですね。みなさんの一票が子どもたちの未来にも影響してくるのです。 ママの一票が子どもの未来を切り開く 私たちの一票によって、国の方向性が決まり、また社会のルールが決められるということでもあります。民主主義とは主権者たる国民が政治に責任もつこととも言えます。 そして主権者としての国民が、唯一政治に参加できる機会が選挙なのです。テレビやネットなどで、情報収集はできるし、時には政治を話題にする機会もあるかもしれませんが、とにかく一票を投じなければ、意思表示をしたことにはならなし、政治に対する不満や期待も、一票を投じることによって、解決や実現へ近づくのです。 候補者のどこを見て選べばいい? ぜひとも、選挙に行ってほしいと思いますが、「どうやって判断したらいいのかわからない」という方のために、今回の選挙のポイント、いくつかお知らせしましょう。 判断材料となる公約は、最近ではマニフェストと呼ばれることも多いですが、できれば一度はさらっとでもいいので読んでほしいと思います。各政党のホームページにも掲載されているし、選挙期間中には新聞の折り込みで配布されます。 また新聞の記事としても掲載されます。今回の大事な政策は、「消費税再増税の再延期の是非と景気回復策」でありますが、それだけでなく、自分の興味あるテーマについて、政党を横断的に読み比べてみると良いと思います。 例えば、少子化対策については、各党どんな政策メニューを並べているのか、 年金や介護に関わる政策はどうか、エネルギーは? 教育は? と、各党の政策を「横に見る」と違いが見えてきます。 政権である自民・公明等は、これまでの政策の評価という意味もあるし、民進党を中心とする野党は、政権を批判し、それとは相反する政策を並べるのが常です。今回は特に、民進党、共産党、社民党、生活の党の野党4党で統一候補を出しています。 野党の政策を判断するときは、この4党の政策を合わせてみることも重要です。政策実行の裏付けとなる財源も大事。できる範囲でしっかりと公約を読んで、投票に行ってくださいね。
2016年06月23日6月1日に、1月4日から続いていた第190回通常国会が、150日間の会期通りに閉会したのと合わせて、安倍総理は来年4月に予定されていた、消費税10%への増税を延期することを表明しました。 2年前の2014年4月に、5%から8%へ増税して、一気に家計が窮屈になった記憶があるだけに、「増税延期はありがたい」と思った人も多いのでしょうか。 私自身も、家計を預かる主婦として、「来年4月にまた増税!?」と思うと、財布の紐は固くなるし、来年4月以降は、なお「買い控え」すると思ってきたので、ひとまずはあと3年半、増税の心配がないことはありがたいと思うのが、正直な気持ちです。 増税延期でリーマン・ショック級の世界経済の悪化? そもそも来年4月の増税も、当初は昨年1月に行うはずでしたが、2014年の11月に1年半の延期を決めました。 その時にはいかなる理由や条件もなしに、2017年4月には必ず増税すると安倍総理が表明して、それを争点に、延期表明の一か月後、2014年12月に衆議院の解散総選挙が行われました。 増税するまでの間に、経済状況を良くして、国民生活が増税に堪えうるようにするというのが、いわば「選挙公約」だったわけです。 公約ではありませんでしたが、もし増税を再び延期する場合は、「リーマンショック級の世界経済の悪化」や「東日本大震災並みの自然災害」が条件だと国会で答弁してきました。 来年の増税を判断するのに、この二点を判断基準にしてきたのは、次ような経緯からです。 今回の総理の記者会見では、現在の状況が「リーマンショック級の世界経済の悪化」や「東日本大震災並みの自然災害」にぴったりと当てはまるとはいっていません。あくまでも、今の日本の経済状況、国民生活の現実をみた上での「新しい判断」であると強調しました。 公約違反の批判は覚悟の上、今回の増税再延期の判断をしたことについて、参議院選挙で国民の信を仰ぎたいというのが、安倍総理の意向です。 一方、野党の民進党も増税延期を主張し、国会の終盤で「増税延期法案」を提出しましたが、安倍総理に対しては、経済状況が改善されていないということへの失政と公約違反を批判。これから参院選挙でもそこを格好の攻撃材料にしていく戦略です。 参院選挙、私たちはどこを見て選べばいい? 実際に、日本の経済状況は、世界の他の国と比べてもあまりよくありません。私たちにはあまり実感がない数値ですが、四半期ごとにでるGDPでは、今年1-3月期(速報値)は、前期比0.4%増でしたが、その前の期である、2015年10-12月期は前期比1.1%減。政府目標は年率で2%なので、目標到達はしてないという状況です。 ただ、リーマンショックの時は、7.2%減、東日本大震災の時は2.6%減ですから、確かにリーマンショック級、あるいは東日本大震災並みの経済状況の失速とは言い切れませんね。このあたりが、増税延期を判断するのに迷う点であったことは確かでしょう。 しかし、昨年の実質賃金は、前年に比べて0.9%減、今年4月の2人以上世帯の消費支出も前年同月に比べて0.4%減、3月は5.3%減でした。賃金が増えないのだから、支出も増えないのも当然ですが、一方で「買うものがない」という声も大きく聞こえることも事実です。 つまり、経済や産業の根本的な構造改革をしない限り、景気も、国民生活もよくならないのです。そのためには、あと10ヶ月後に増税をするのには、あまりにもリスクが高いと、私自身も思います。 改革・改善を行いながら経済を強くするには、もう少し時間が必要です。消費税の増税は、民主党政権だった2012年6月26日に、「社会保障と税の一体改革」として、関連8法が成立をして決まりました。その中には、「社会保障制度改革推進法」や「年金機能強化法」の他にも、「子ども・子育て支援法」や「改正認定こども園法」など、私たちにも関係のある法整備も行われていたのですが、その目的は、「社会保障の機能強化と制度維持、その財源確保」というものでした。 少子高齢社会である日本は、これから必要な社会保障費は益々増えていきます。ただ、だからといって、財源のためにひたすら増税していくということでよいわけはありません。根本的な社会保障制度全体の改革が必要です。参院選挙では、各党、各候補者がその点において、どのように考えているかをぜひ判断の一つにしてみてください。
2016年06月03日オバマ大統領の広島訪問が持つ意味 伊勢志摩サミットが始まり、世界をリードする7カ国の首脳が8年ぶりに日本に集まるということで賑わっていますね。オバマ大統領がアメリカの大統領として初めて、第二次世界大戦で原爆を投下した広島を訪問することも、今回のサミットに続く重要な行事として話題となっています。 戦後70年経っても原爆による心身の傷がいえない日本と、今でも原爆投下を正当化する声が根強いアメリカの国内世論とでは温度差がありましたが、それでもオバマ大統領が、同盟国である日本を大事にしていることの一つの表れとして、この広島訪問は日本としても歓迎すべきことです。 しかし、そんなオバマ大統領の任期も今年いっぱい。アメリカでは次期大統領を決めるべく選挙が11月におこなれわれるため、今年初めから各政党が大盛り上がりです。 大統領が変わると日本にどんな影響が起こるのか アメリカでは、共和党と民主党という二大政党のどちらかの候補者が大統領に選ばれることになるため、共和党では、実業家・不動産王と呼ばれるトランプ氏が、民主党ではクリントン元大統領の夫人でもあり、上院議員や国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏ががぜん注目されています。 中でも、ニューヨークのマンハッタンに金ピカのビルを構えるトランプ氏は大胆な発言で日本でも連日のように話題になりますね。不法労働者問題などで苦しむアメリカの国内事情からメキシコとの国境に壁を作るとか、テロへの対策としてイスラム教徒は入国させないなど、本当に大胆です。 日本に対しても、日本にある米軍基地の費用は全部日本が負担せよと発言し、他人事ではなくなってきました。トランプ氏の意図は、何より「強いアメリカ」。これまでの政策や関係にとらわれずに、徹底してアメリカの国益だけを考えていくというものに聞こえてしまいます。 大国・アメリカがどういう方向へ進んでいくのかとういことは、世界が注目していますが、米軍基地問題を抱える同盟国の日本は特に、次期大統領の候補になるかもしれない人の発言はが大きく影響してきます。 改めて考える日米同盟の意味 日米同盟は、「日米安全保障条約」というものによって結ばれていますが、その目的は、アメリカのアジア・太平洋地域における軍事的な拠点と、制限のある日本の軍事力を補完する役割として、米軍とともに日本の国を守るというものです。 日米、両方にとって大事な関係ということになりますが、トランプ氏の頭の中には、「アメリカが日本を守ってあげている」という認識が強いのでしょう。アメリカの一般国民の中にもそうだと思っている人も決して少なくありません。 逆に日本では、日本を守ってもらっているという認識よりも、「駐留させてあげている」と思っている人が多いように思います。日米の国民がもう少し理解し合うことが必要ですね。 幼児教育無償化8000億円に苦労する日本は今後どうなる? トランプ氏の発言は、問題提起として意味のあるものともいえます。しかし、トランプ氏は公的な立場になったことが一度もないことから、政治手腕も行政手腕も未知数。 経営者感覚は大事ですが、それだけでアメリカの大統領は務まりません。特に多民族国家であり、日本よりはるかに格差の大きいアメリカでは、万人に利する政策などあるはずがありません。その上、大国・アメリカの政策は、世界中に影響を与えます。例えば、以前オバマ大統領が「アメリカは世界の警察ではない」と発言したことから、世界の軍事バランスが崩れ、中国の南沙諸島海域における軍事拠点の不法建設や、イスラム国などによるテロの頻発などが引きおこされたと言われています。 もし、トランプ氏が求めるように、日本にある米軍基地の費用の全額日本負担を拒否したら、どうなるでしょうか。沖縄での強い反基地運動なども相まって、もし米軍が日本からいなくなれば、それまでアメリカに頼っていたことを、日本がすべて自分たちの手でやっていかなければなりません。 今、日本は防衛費約5兆円ですが、そんな額では済まなくなるのです。20兆、30兆円が必要だという人もいます。幼児教育の無償化のための8000億円の財源を出すことにも四苦八苦している日本で、財政的な面から見ても、非現実的な政策だと言わざるを得ません。 そんなことを考えると、アメリカの大統領選は、日本にもとっても影響のあることだということがわかりますね。サミットで訪れている国々も、みな世界に影響のある国です。この機会に、世界の国々がどんな考えを持っているのか、興味を持ってみるのもよいでしょう。
2016年05月26日今年の桜は、かなり長い期間楽しむことができましたね。東京の桜はそろそろ葉桜モードですが、お花や葉っぱが色づくこの季節は、やっぱり心はウキウキして、色々なことが「始まる」ことを実感します。 子どもたちも新年度になり、進学・進級を迎えて、クラスが変わったり、担任の先生が変わったりで、まだペースがつかめない毎日を送っているご家庭も多いことでしょう。 わが家も早起き、そして私はお弁当作りの毎日に、学期の最初はなかなかペースがつかめず、なんとなく寝不足気味…。そしてこの4月、子どもたちを取り巻く環境で、今年大きく変わったことがあります。それは、これまで義務教育として位置づけられていた小学校、中学校の他に、今年度から義務教育学校というものが、法律で正式に位置づけられ、新たな学校としてスタートすることになったのです。 今年度スタートした「義務教育学校」って? この義務教育学校というのは、義務教育期間である小中学校9年間を一つのまとまりとして学校を設置し、教育内容も9年という期間で編成するというもの。これまでも行われてきた小中一貫教育が、一つの学校になったとイメージするとわかりやすかもしれません。 これまでの小中一貫教育は、「特例校」として、毎年度、文部科学大臣の指定を受けなければなりませんでしたが、その必要はなくなり、小中学校の設置者である市区町村の裁量で設置することができるようになったのです。 それでは、小学校と中学校が分かれているのと、一貫教育として行うのとは何が違うかといと、小中一貫教育導入にはさまざまな子どもを取り巻く問題がその背景にあります。 思春期にやってくる問題も緩和する? 一つは「中一ギャップ」という問題です。小学校と中学校とでは、勉強の仕方も学校生活も大きく変わります。うまく適応できない子どもが多くなり、不登校の子どもの数も中学一年生が一番多く、またいじめという問題も多発します。 また、子どもの成長の早期化も近年著しく、思春期も30年前と比べると、だいたい2~3年早まる傾向にあります。 30年以上前に中学校生活を送っていた自分自身を振り返ってみても、一般に反抗期といえば、中学2年生ころから始まったように思うのですが、今は早いと小学校4年生ころから、だいたいの子は小学校卒業する前には反抗期に突入するのが実態。体の成長も、1年間で一番身長が伸びるのは、30年前なら男の子は中学2~3年生、女の子は中学1~2年生だったのが、今では、男の子は6年生、女の子は5年生と、これも2~3年早まる傾向にあります。 つまり、心も体も大きな変化のさなかで中学受験や進学を迎え、それらに影響される心身のアンバランスが、中学校生活に影となって表れてくるという問題は、もう10年以上も前から指摘されてきました。 そこで、小学校から中学校への接続をできるだけ滑らかにすること、これが小中一貫教育の最大の目的であるのです。 学習面でこの制度がもたらす効果は? また外国語教育、情報教育など、学校で教える内容も増え、カリキュラムの見直しなども大きな課題でした。小中一貫教育では、義務教育9年間をひとまとまりとして考えますから、その中で、カリキュラムの前倒しや、中学校の理科などの専科の先生が小学校で教えることができるなど、授業の充実にも大きく寄与することになります。 すでに平成18年度には、東京都品川区で、公立では初めてとなる小中一貫校「日野学園」(この4月からは義務教育学校・日野学園)を開校し、大きな成果が得られてきました。特に生活面で言うと、思春期や反抗期の中学生が小さな小学生と日々触れることは、大人には想像もできないような効果が生まれるようです。例えば不登校がなくなったり、反抗期の時期にある子どもでも、自分たちが小さかったころを思い出すことで、生活態度そのものが変わってくるといいます。 そもそも、義務教育が小中と分かれているのは、戦後、それまで日本では、義務教育は小学校だけだったものに、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の政策によって3年間の中学校が足されただけであり、合理的な意味はありませんでした。 私立のみならず、最近では、公立の中高一貫教育も増えています。本来なら、そもそも義務教育とは、何を目的に、何を学ばせるのかなど、戦後70年経った今、改めて根本からの改革を行わなくてはならないのですが、ひとまずは、子どもたちの現実の姿に合わせ、国の制度としての義務教育学校が位置づけられたことは、とても大きな一歩であったと思います。 私は品川区の教育委員として、この小中一貫教育の制度化に携わってきましたが、国が「義務教育学校」として学校教育法の中に正式に位置づけるまでには、日野学園の開校からちょうど10年、品川で小中一貫教育の制度化を含む教育改革を始めてから実に17年の歳月を要しました。すでに、この間に、義務教育を終えてしまった子どもたちがたくさんいるとうこと。子供の成長はあっという間ですから、今の子どもたちに、「間に合わなかった」ということがないように、制度を作る大人たちには、スピード感こそが求められていることを自覚して欲しいと思っています。
2016年04月19日東京では桜の開花が進み、すっかり春。そして新年度ですね! 気がつけば、始まったばかりと思っていた平成28年も、もう4分の1が終わってしまい、子育てにアタフタとしている間に、どんどん時は過ぎていきます。子供も進級の時期を迎え、新しい学年、新しいクラス、大丈夫かしら…と、母親としてもちょっとドキドキのこの季節。 でも、無事に新年度が迎えられた人はとても幸せなのかもしれませんね。産休・育休から仕事復帰を希望しても、保育園への入園がかなわず、復帰が遠のいたり、退社せざるを得ない人も少なからずいるということを考えると、つくづく子育てをしながら、自分のキャリアを築いていくことは本当に大変なのだと気づかされます。 安倍政権でも、3年前の発足当初から「女性の活躍推進」を大きな政治目標にし、女性の採用率や管理職への登用率などに企業が数値目標を立てるよう進めてきたけれど、女性の立場からすれば、社会にでる以前の問題があり過ぎて「まずそこを何とかしてよ!」と思ってしまいます。 そこで、国は「一億総活躍推進」を掲げました。「50年後も人口1億人を維持し、一人ひとりが自ら、家庭で、職場で地域で生きがいを持って、充実した生活を送ることができる社会」と“定義”される「一億総活躍社会」は、女性という枠にとらわれず、もう一歩進めようというものです。 そのために、「新三本の矢」を放つというのが、安倍政権の方針。それに沿って、この4月からの平成28年度予算にも、重要な柱の一つとして「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」関連予算が組まれています。 その額、合わせると約2兆円! 教育や防衛費が約5兆円であるのと考えると、結構な額。それだけ国も力を入れているということですね。確かに、「一億総活躍社会」は理想的。でも現実とはあまりにかい離していて、少々反発も起きているのは、皆さんもご存じの通りでしょう。 とはいえ、それだけ国が力を入れる「一億総活躍社会の実現」のために、具体的にはどのような対策を進めているのか、私たちも知識としてインプットしておきましょう。 「アベノミクス新三本の矢」で、直接私たちに関係してくるのは、主に「第二の矢・夢をつむぐ子育て支援」と「第三の矢・安心につながる社会保障」です。 目標は「希望出生率1.8の実現」と「介護離職ゼロ」。 具体的には下記などの政策があります。 ・待機児童対策(平成29年度末までに受け皿50万人増) ・保育士の確保(待遇の改善等) ・教育費の負担軽減(大学生等向け無利子奨学金の充実) ・三世代同居の推進(住宅改修等の費用の補助) ・介護人材の確保や施設・在宅介護サービスの充実 残念ながら、私自身は、これらが“効果バッチリ”の策だとは、実は思っていないのです。 その理由を、いくつかの例で挙げてみましょう。 実は待機児童問題よりも深刻な高齢者問題 まずは、待機児童対策。今、全国で4万人ほどいると言われているけれど、一番多いのが、東京都の8000人弱。一方、待機児童ゼロというのも、11県あるのです。 保育園の不足は、大都市部の問題でもあるわけです。同じように、介護施設も特に都市部を中心に不足していますが、高齢化問題は実は待機児童の問題より深刻なんです。 というのも、いま、65歳以上の高齢者は3500万人いると言われていますが、そのうち半数は高齢者のみの世帯。さらに、550万人は要介護者で、1割は認知症です。これが、2020年には、85歳以上の高齢者の約半数は認知症になると予測されています。 国が掲げた三世代同居の補助にも疑問点が 国は、介護政策の方針として在宅介護の充実を進めていて、保育士同様、介護士の確保のための待遇改善も急がなくてはなりませんが、これだけの高齢者、ことに認知症が増えていく中で、ヘルパーさんを中心に在宅介護で進めるのはかなり難しいこと。 かといって、このままの予算や方針では、特に都市部での施設の増加は期待できません。子育ても介護も、東京や都市部への人口集中がもたらした問題の一つでもあるのです。 そこで肝入りで打ち出されたのが、「三世代同居」の推進。ところがこれ、三世代同居を要件とはしておらず、玄関、キッチン、トイレ、お風呂のうち2つが2か所以上ある家を木造で新築した場合、補助がでるというものなんです。つまり、比較的広めの家を建てる場合には、誰でもこの補助が使えるので、子育てや介護を家族で支え合うということとは違うものが、あたかも一億総活躍社会実現に効果があるかのように予算計上されることは問題と言わざるを得ません。 これらを見てみると、必要とされるところに、きちんと予算が組まれることはとても大事だし、そのために、何を必要としているのかのニーズの吸い上げが、まだまだ足りないのも事実でしょう。 そして何より、「一人ひとりが生きがいを持って充実した生活を送ることができる」という一億総活躍社会のためには、国に頼るだけでなく、社会のあらゆる発想の転換が重要です。 要介護者にならない努力や働き方や生き方そのものを考え直す、都市部への様々な機能の集中を地方へ分散するなど、今までの発想の延長では解決できないということを、国全体でもう少し理解する必要がありそうです。
2016年03月30日はじめまして、この度ウーマンエキサイトで政治のコラムを担当させていただくことになりました、政治ジャーナリストの細川珠生です。私生活では一児の母として、子育てに悩み、苦しみ、笑いながら毎日を過ごしています。 突然ですが「政治」と聞くと、ちょっと戸惑ってしまいますよね。政治のニュースは小耳にははさむけれど、なんだかよくわからない…、なんてついつい縁遠くなってしまっているのではないでしょうか。 お金の問題、女性問題、失言でもめてばかりいるし…と、政治の印象って、あんまりよくないですよね。そうはいっても、確か、「国会は国権の最高機関」なんて学生時代に勉強したことを断片的に思い出しては、政治のことがわからないままでいいのかしらとか、突然不安になったりもするでしょう。 しかし、子どもを前に「政治のことはよく分からない!」と声を大にしては言うのもちょっと恥ずかしいと感じる人も多いのでは。子どもを育てる環境がどう変化しているのか、政治を通して知っていくことはとても大切です。 そういえば、「主権在民」なんていう言葉も習った記憶がありますね。つまり、国会は国権の最高機関ではあるけれど、そこには国民から選ばれた代表者が、国民に代わって議論をし、さまざまなルールや制度をつくっているということ。だから私たち国民がどんな代表者を送り込むのかがとっても大事なんです。 特に今年から、選挙権が18歳以上になって、高校では、いわゆる「主権者教育」というものが行われるようになる のに、気がついたら、「ママだけ何にも知らなかった!」なんていうことになったら大変! そうならないためにも少しずつお勉強を重ねていくことをおススメします。 この連載では、ママ目線で気になる政治の話題をみなさまにお伝えしていきますね。気が付けば「あなたも政治博士!」となるのを目指して頑張りますので、引き続きこのコラムを読んでいただけたらと思います。 育休制度は今後良くなるの? さて、記念すべき第一回目のテーマは、「男性の育休」について。「育休宣言」をした(今となっては“前”となってしまった)国会議員が出てきて、「いよいよ国政も!」風穴が開くことを期待したのも束の間、自身の女性問題で、「男性の育休」「国会議員の育休」ということ自体、すっかり吹っ飛んでしまったかのような感があります。 しかし、女性側からは期待大だったのですよね。私は、英国のウイリアム王子が、シャーロット王女の誕生の時に、6週間の育休を取るということで大いに注目をしました。 日本で育休というと、何か1年単位の長期間を想定してしまいますが、いえいえ、そんなに長くなくてもいいのです。出産直後に1ヶ月でも良いからお休みをとってくれた方が、出産直後のママには何かとありがたい。初めての子であれば、不安いっぱいの中、長時間眠れないママの大変さをわかってもらえるだろうし、第二子、第三子であれば、上の子たちの育児に大きな助っ人となります。 例えば幼稚園や習い事の送迎など、それから買い物にだって行ってもらえます。以前は、実家の母親や、お姑さんがやってくれていたことも、核家族化、出産の高齢化の流れの中では、自分たちで何とかするしかないのに、パパは相変わらず、残業や飲み会三昧では、ママとしては、「いくら仕事だから」と言われてもやり切れない思いがフツフツとつのるものです。 ちなみに、現在、日本の男性の育休取得率は2.8%(厚労省調べ、2012年10月~2013年9月までの一年間)。女性の86.6%に比べるとあまりの少なさです。 そこで、政府も「女性の活躍」を掲げる以上、男性の育休取得率向上に本腰を入れています。以前からあった「育児休業・介護休業法」で、ママが専業主婦でも取得できるようになり、男性が産後8週以内に取得しても、再度取得することができるようにするとか(合算して1年以内)、中小零細企業では、代替従業員の確保などで経済的負担が大きかったことから、男性社員が育休を取った場合、最大で120万円の助成を行うなど、4月から雇用保険法施行規則の変更を行う予定です。 「育休議員」で注目された国会議員の育児休業については、現在は制度としては男女共にありません。あるのは女性議員の産休制度だけ。産休明けには、委員会や本会議などその都度、欠席届を出さなければなりません。国会議員は、朝の8時ごろからの部会に始まり、夜の会合をはしごするなど、育児との両立はほとんど不可能といってもいい「勤務実態」があります。 「女性の活躍」のためには、国会だけでなく、社会全体の長時間労働の是正なども行わない限り、なかなか難しいのではないかと思います。しかし、良い夫婦関係を築くためにも、男性も取得を工夫しながら思い切って「育休」にチャレンジしてほしいですね。
2016年03月17日