CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。
住宅購入に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに「子どもの教育のことを考えて住宅購入を検討するのであれば、最優先すべきは、 教育費にしわ寄せのこない価格の物件 を選ぶことです」と教えていただきました。 では、その価格は、一体、いくらなのでしょうか? 引き続き竹下さんにお話しを伺います。 「住宅購入を考えるだけでメリット!? 学区問題は本当に大切か」 の続きです。 ■教育費にしわ寄せのこない物件の選び方 多くの方が、「子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格」といきなり言われても、ピンとは来ないと思います。順を追って、説明していきましょう。 まずは次の図を見てください。サラリーマンの場合、 生涯収入は一定の枠 があります。一定の枠の中での使えるお金は、大きく2つに分けて考える必要があります。 それは、「日々の生活費(人生を回していくお金)」と、「人生イベントの費用(人生を構築するお金)」です。さらに着目していただきたいのは、赤文字部分、 「住宅」「教育」「老後」資金 です。この3つのお金は、人生の3大資金と呼ばれ、金額が大きいことが特徴です。 ■家購入前に考えたい、「中学受験どうする?」 「30代は、人生の3大資金のうちの、『住宅』『教育』の方針をおおまかに決める人が多い年代です。両方とも、決めたら最後、 後戻りが難しいタイプのお金 です」(竹下さん) 後戻りが難しいと聞くと何だかドキドキしてしまいます。どうしたら良いのでしょうか? 「私は、家を買う前に、 ライフプラン表 を使って、『これからの人生』を一度イメージすることをおすすめしています。とりわけ大事なのは、 子どもの教育コース です。私立に行くのか? 公立にするのか? 私立小学校を選択するご家庭が全体の2%であることを考えると、私学コースの論点は、多くの場合、 中学受験をするか、しないか です。私立中学に行くのか、公立にするのか? ここで教育費の総額は大きく違ってきます。 家を買う段階で、子どもの教育コースのイメージを持っておかないと、大きなリスクになる可能性があることは、強くお伝えしたい点です」(竹下さん) ■私立中高一貫校に行く場合のリアル費用 筆者の息子は、中学受験をした後、中高一貫校に通いました。中学受験をするのであれば、ザックリとした目安として、次の金額程度は覚悟しておく必要がありそうです。 【中学受験のための塾代】 小学校3年生の2月から通塾スタート: 総額で250万円~300万円(6年生の2月まで) 【学費】 学費と定期代で1年間:100万円×6年間(中高6年間) ※筆者の体験に基づく場合の金額 このほかに、部活動にかかる費用や大学受験をする際の予備校代…。成長期なので洋服や靴があっという間にサイズアウトしてしまうので衣料費もかさみますし、通う学校によってはママ友との交際費がかかる場合もあります。 子どもが 中高~大学卒業までは教育費の山場 で、お金が右から左にかかる時期だという実感があります。 ■「住宅」「教育」費のしわ寄せが「老後資金」不足に 30代でお子さんが小さい場合、教育費の大変さをイメージするのが難しいかもしれません。けれども、『教育費が大変な時期が、この先にある』ということは、ぜひとも知っておいて欲しいのです。 「人生の3大資金のうち、『住宅資金』と『教育資金』を適正金額の枠内にしておくことは、とても大切です。 身の丈に合わない物件を買ってしまったり、子どもの教育にお金をかけすぎてしまったりしたしわ寄せが、 『老後資金』の不足 に直結しているケースを、私はたくさん見てきました」(竹下さん) ■ライフプラン表を書くことで、見える景色がある そうは言っても、忙しい毎日の中、未来をイメージするのは、なかなか難しいものです。 「私は、ライフプラン表を書いてみることをおすすめしています。実際に、『書いてみる』と、これまで見えなかった風景が見えてきます」と、竹下さん。 30代になったのなら、一度はライフプラン表を書いてみる! それとともに、筆者は「物件価格は、ライフプラン表を踏まえた上でファイナンシャルプランナーなど、 お金のプロに相談にのってもらう のもアリ」と、お伝えしておきたいです。 なぜなら、「物件の価格」「教育資金」といったお金は、日常生活とは別物の「桁の違うお金」だからです。 金額が適正かどうか? という判断は、素人では難しいと感じます。 Q.ファイナンシャルプランナーに相談に乗ってもらうには? 日本FP協会のファイナンシャルプランナーの上級資格であるCFP検索で、自分と相性が良さそうなファイナンシャルプランナーさんを探して、コンタクトしてみても良いかもしれません。 》日本FP教会: ※費用の目安は、CFPへの相談料金の相場は2時間2万円程度です。 たとえば竹下さんに、「ライフイベントを踏まえた上で、わが家にとっての適正な物件価格の相談に乗ってもらう場合の費用」をお聞きしたところ、「相談者の購入プランを見て無理があるかどうかの判断であれば8000円~20000円(相談時間の長さによる)、シミュレーション込みの2時間相談コースの場合は2万1000円~2万5000円」だそうです。 ■賃貸と購入でこれだけ変わる将来の貯蓄残高 脅すような話ばかりが続いて、家を買う気持ちがなえてしまったかもしれません。最後に、平均的な家庭の貯蓄残高をグラフにしたものをご紹介しましょう。 竹下さんは、「一生涯の家賃を支払い続けるのが大変と、退職前の完済を目指して住宅購入に踏み切った人も多く見かけます」とおっしゃっていました。 実際のところは、どうなのでしょうか? 竹下さんに試算していただきました。 ●一生賃貸の場合 子ども二人を大学生まで通わせる」という条件の場合、お金の「谷」が2回できます。Aは、教育費がピークの時期です。Bは、85歳以降です。 結論:85歳をすぎると切り崩す貯蓄がなくなり赤字に転落します。 ●35歳で家を買った場合 Aの教育費がピークの時期は「谷」になりますが、住宅ローン完済後の貯蓄残高減はゆるやかで85歳以降も赤字にはなりません。 結論:70歳で住宅ローンを完済した後は貯蓄を切り崩すペースがゆるやかに 【前提条件】 家族:男性30歳・妻30歳子0歳&2歳。/収入:夫(会社員。年収500万円)、妻(パート。年収100万円)/子どもの進路:幼稚園は私立。小・中・高は公立。大学は第1子は私立文系、第2子は私立理系(6年)。/退職金:65歳1500万円。住まい:35歳で3000万円の住宅ローンを組んで3200万円の物件を購入。完済時期は70歳。金利1%。住宅の維持費は年間30万円。/75歳で1500万円のリフォーム(じゅうたくメンテナンス費用)を拠出。 「人生100年」という言葉が頻繁に使われ出したのは、ここ3年くらいの話です(ちなみに以前はライフプランニングは人生85年で試算していました)。 30代にとって、「老後」なんて、はるか遠くの話すぎますね…。けれども、遠い遠い将来、「あの時、住宅購入を検討してみて良かったな」と、思うことがあるかもしれません。 ■今回のお話を伺った竹下さくら先生のご著書 『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』 (竹下さくら著/翔泳社 本体1,500円(税抜き)) 竹下さくらさん CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。 自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。
2019年08月27日多くのご家庭にとって、家計費のなかでいちばんの支出は 住居費(家賃) なのではないでしょうか? 人生100年時代、たとえば平均して10万円の家賃を30歳から100歳まで払い続けるならば、その 総額は8400万円! (※) 元の金額が大きいだけに、住居費を賢く節約できれば、節約効果は絶大なはず! でも、そんなことはできるのでしょうか? 子育て中のママがどう住宅を選べばいいのか、住居費に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんにお話を伺いました。 竹下(たけした)さくらさん CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。 自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。 ※住居費の総額8400万円=(10万円×12ヶ月)×70年 ■家賃を下げてもらうのは、意外と簡単!? 「同じ住まいを長く借りている人は、大家さんや仲介業者にひとこと言えば、 月々5,000円分程度の家賃を下げてもらう のは、意外と簡単なんです」と、竹下さんは言います。 なぜなら、住んでいる間にその物件は古くなっていくから。借りた時よりも古くなっている物件の家賃を下げてもらうことは、さほど無理なお願いでもないのです。 筆者は住居費関連の取材で「家の更新時、家賃を下げてもらう交渉は、やるのがあたり前」といった論調を何度か耳にしました。 大切なことは、こういった話を「知っていること」です。とかくお金のことは、 「知っている」「知っていない」が、明暗を分ける のです。 ■30代で「家を買うこと」を本気で考える理由 では、知っている人になるためには、どうしたら良いのでしょうか? これについては、お金のアンテナを立ててみるのが早道。アンテナを立てれば情報は自然と入ってきます。 けれども、「どうしてもお金のことは苦手で」という人も多いものです。そんな人は、 “家を買うことを自分事として意識” してみてはいかがでしょうか? 竹下さんは言います。「私は、 『30代になったら、一度は家の購入を意識すること』 をご提案することがあります。 賃貸と購入で、何が違ってくるかというと、家計の引き締め度なんです。多くの家計相談にのってきて感じるのは、家を買おうと意識するだけで、 家計が引き締まり、お金のアンテナも立つ ということです。 現実を直視し、『このままじゃいけないな』と思われる方が多いからです。ずっと賃貸だと、そういう節目がない。それが、賃貸と購入の、お金のやりくり上手に差が付く一番の違いだと思います」 ■家購入のターニングポイントは、小学校入学前 家を買うとなると。そのタイミングが気になるところです。 「最初のお子さんの 小学校入学 が視野に入ってきた時期は、家を買うひとつのターニングポイントかもしれません。 小学校の場合、受験をして私立などに行くのは、全体の2%。残りの98%は地域の小学校に通いますが、いじめの評判なども加味して、小学校に入る前に引っ越しておこうと考える親御さんは多いですね」(竹下さん) ■住宅購入で気になる! 小学校の学区問題 小学校となると、 学区の問題 も気がかりです。 たとえば、評判のよい小中学区では越境禁止にしていて所定の地域内に住んでいることを求められます。せっかく引っ越すならいっそのこと買ってしまおうという流れで踏み切ると、予算がオーバーしてしまうというような場合も。 そこで次の2択をどう考えれば良いのか竹下さんに教えてもらいます。 Q.マイホーム購入の際、学区はどう考えればいいですか? □学区優先で、生活を切り詰める □学区を妥協し、無理なく生活する 「はじめてのお子さんを持つ親にとって、小学校の学区が気になる気持ちは、すごくわかるんです。 園時代のお友だちとの関係を重視するというケースも、気になるのは最初だけで、小学校に入ってしまえば人間関係も変わっていきます。実際のところ、 学区に縛られるのは、小学校、中学校くらいまで 。 家を購入する際は、少し俯瞰(ふかん)した視点を持って欲しいのです。子どもが二人いたとしても、その子たちが小中学生なのは、せいぜい 10年前後 。 一方で 住宅ローンは35年で組む ことが多く、子どもが巣立ったあとも支払いは続きます。学区を優先したばかりに、子どもが巣立ったあとも高額な住宅ローン返済に追われる生活になるのは避けたいところです」(竹下さん) 竹下さんは、さらに続けて教えてくれました。「子どもの教育を中心に住宅購入を検討するのであれば、最優先すべきは 子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格 です」(竹下さん)。 子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格!? それって、いくらなのでしょうか? 次回は、そのあたりのお話しを、しっかりと伺いましょう。 ■今回のお話を伺った竹下さくら先生のご著書 『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』 (竹下さくら著/翔泳社 本体1,500円(税抜き))
2019年08月25日