くらし情報『愛する人とどう過ごす? 『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち』

2011年3月24日 15:21

愛する人とどう過ごす? 『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち

(Photo:cinemacafe.net)

(Photo:cinemacafe.net)

観終わった後、あふれるほど様々な感情がこみ上げてくるのに、それを言葉にできない──『わたしを離さないで』は、息が詰まるほどの想いとはこういうことなのだと実感する映画だ。

主人公のキャシー、ルース、トミーの3人は美しい田園地帯にある寄宿学校ヘールシャムの生徒。そして、観客は物語が始まってまもなく、そのヘールシャムが現実世界ではない異世界だと気づかされる。外界から完全に隔離されたその施設で一体何が起こっているのか?特別な存在だと教えられて育った子どもたちの身に何が起きるのか?その疑問は意外にも前半で明らかになる。であるのに、この作品に深くとらわれてしまう理由は、社会的、倫理的、SF的になりがちなテーマでありながらも、あえてそこを映し出すのではなく、3人の若き男女の恋愛、友情、絆に焦点をあてているから。現実とは違う世界であるからこそ、その世界に興味が湧き、興味を持つからこそ、普遍的な愛をより実感する。悔しいけれど、いつの間にか自分も映画の中に入り込み、等身大で物事を見ているような体験を味わうのだ。

イギリス最高の文学賞、ブッカー賞に輝くカズオ・イシグロが紡ぎ出すストーリーの面白さはもちろん、キャスティングに違和感がないこと、それも大きな魅力のひとつだ。

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