「スキャンダルイブ」「透明なわたしたち」ほか、現実を映し出すABEMAオリジナルドラマの強度ある信念
柴咲コウ主演、川口春奈と初共演するABEMAオリジナルドラマ「スキャンダルイブ」が12月24日(水)に最終回を迎える。
本作は、一見華やかにみえる芸能界の裏側を舞台に、いまだかつて描かれることのなかったスキャンダルの裏側、そして芸能界の深い闇へと切り込んでいくサスペンスドラマ。
大手事務所から独立した“Rafale”代表・井岡咲(柴咲)が看板俳優の"不倫スキャンダル"掲載をめぐり、週刊誌記者・平田奏(川口)と熾烈な攻防を繰り広げる…かと思いきや、それだけでは済まなかった。
このスキャンダルの裏側に隠された新事実こそ、昨今ハリウッドでも、ここ日本でも重大な問題となっている、圧倒的な力を持つ者からの性加害。その権力のある者の思惑一つで、“事実”は姿を変えてしまい、それが新たな真実となっていく…。
芸能界の知られざる裏側は視聴者の関心も高く、ABEMAドラマランキングに4週連続で1位にランクイン。また、Netflixでも4週連続で「今日のシリーズTOP10」にランクインし、注目を集めている。
ABEMAオリジナルドラマは、こうした社会の歪みに追いやられている重大な事象をすくい上げ、いま最も見たいキャストで、確固たる信念をもったドラマを作りあげるからこそ見応えがある。
例えば、2024年9月~10月に配信された「透明なわたしたち」は、福原遥演じる週刊誌ゴシップライターの碧が、渋谷で起こった身元不明の青年による凶悪事件の犯人が高校の同級生ではないかと気づき、高校時代を回想しながら真相を追いかけていく、社会派群像サスペンス。
2025年、アジア圏で最も権威のあるTV賞「30th Asian TELEVISION AWARDS」(アジア・テレビジョン・アワード)のベストオリジナルドラマシリーズ(OTT)部門において、日本のメディアとして初めて最優秀賞を受賞する快挙となった。
渋谷スクランブル交差点が突如として阿鼻叫喚の“通り魔事件”の現場となるリアル、高校時代と現在が交互に描かれるうちに浮かび上がってくる登場人物たちの知られざる苦悩や、“透明化”され歪められた事実には、視聴者からも「“今”を感じた」「心の奥を素手で触られました」「誰しもがだと思い知らされる」など共鳴の声が上がっていた。もちろん、いま最も勢いのある役者陣の熱演も光った。新聞記者になるという高校時代からの夢が叶わず、ゴシップ誌のライターとしてくすぶる主人公・中川碧を福原が演じた。“自らのペンこそが正義である”とやがて暴走する姿は、朝ドラなどのはつらつとしたイメージを覆した。
小野花梨が東京で夢敗れ地元に戻って結婚した一児の母・齋藤風花に。伊藤健太郎が渋谷の片隅で闇バイトに手を染める男・喜多野雄太、倉悠貴は順風満帆な渋谷のスタートアップ企業のCEO・高木洋介、武田玲奈は女優の夢を抱きながらホステスとして働く桜井梨沙を演じ、それぞれが役に生きた。
そして、彼らのクラスメイトである重要なキーパーソン・尾関健を、映画『愚か者の身分』で北村匠海、綾野剛とともに第30回釜山国際映画祭で最優秀俳優賞に選ばれた注目俳優・林裕太が演じていたことも見逃せない。
監督と脚本は、はるな愛の半生を描くNetflix映画『This is I』も手がける松本優作。『新聞記者』『正体』の藤井道人監督プロデュースのもと、藤井率いる「BABEL LABEL」Writer’s roomの八代理沙、八瀬ねねといった脚本家とともに、20代後半の若者たちが抱えている痛み、声にならない声をすくい上げた。
また、のんが主演を務めた「MISS KING / ミス・キング」は、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥が、その深い憎しみから開花させた才能と、まっすぐに突き進む意志の強さで、自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。
のんが将棋の才能だけを武器に、逆境に立ち向かっていく女性を演じるのは実に説得力があった。さらに、将棋界を舞台にした復讐劇の過程では、日本では前例のない女性棋士を目指すことの困難も描かれていた。
「女性が棋士になることがどれほど難しいか、わかっていないんでしょう?」と飛鳥に話したのは、鳴海唯が演じた結城龍也(森愁斗)の婚約者でアイドルのような扱いを受けていた女流棋士・由奈だ。
「バケモノの中では勝ち抜けない。
女の私には超えられない壁がある」と、飛鳥の父・結城彰一(中村獅童)がトップに君臨する将棋界の“ガラスの天井”が示唆され、かつて女流棋士だった香(山口紗弥加)の過去にも触れられた。
奇しくも本作が最終回を迎えた後、妊娠を理由に女流タイトル戦を事実上不戦敗にされた女流棋士が、日本将棋連盟に規定の変更を求める訴えを起こし、結果「産前6週・産後8週に女流タイトル戦の日程が重なった場合は対局者を変更する」という部分が削除されたばかり。まさに女性であるがゆえに直面する現実を照らすドラマとなったのだ。
そして、12月24日(水)に最終話を迎える「スキャンダルイブ」では、まさに現在進行形といえる芸能界の性加害という漆黒の闇に迫っていく。
第5話で明らかとなったのは、大手芸能事務所・KODAMAプロダクションの大物俳優・麻生秀人(鈴木一真)による性加害の事実。記者・奏の妹で女優を目指す莉子(茅島みずき)が、その被害者であることを自ら打ち明けた。
事務所から数年間にわたり高額なレッスン料を要求されたり、出来レースのオーディションに参加させられたりと失意の日々を過ごし、藁をもつかむ思いで向かったパーティーで被害に遭ってしまった莉子。しかも、咲の事務所の俳優・藤原玖生(浅香航大)の不倫スキャンダル掲載は、この事実をもみ消すために仕組まれたものだった。
「地位を利用して莉子さんの夢を追う気持ちに漬け込んだ。しかも密室の2人きりの状況で。これは歴とした性加害です。莉子さんが自分を責める必要なんてない」と咲が断言してくれたことで、莉子はもちろん、固唾を飲んで見守っていた視聴者の心も、いくらか少しは救われたはずだ。
自分の人生を取り戻したいという莉子のために連帯する咲と奏だが、相手は、身内の俳優を守るためならばどんな手段でも使うKODAMAプロダクション社長・児玉蓉子(鈴木保奈美)だ。
かつてない挑戦作となった本作の最終回は、さらなる波乱が待ち構えているだろう。変わることのない“真実”が明らかにされることを願わずにはいられない。
ABEMAオリジナル連続ドラマ「スキャンダルイブ」最終回は12月24日(水)22時~配信(全6回)。
(上原礼子)