「音楽に合わせて映像を調整」是枝監督が行った異例の制作プロセスを作曲家・坂東祐大が語る『箱の中の羊』
『万引き家族』以来、8年ぶりのオリジナル脚本となる是枝裕和監督最新作『箱の中の羊』。本作の劇中音楽を手掛けるのは、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」やアニメ映画『竜とそばかすの姫』、そして是枝監督の次作『ルックバック』(26年公開予定)など、現代音楽からポップスまであらゆる境界線をシームレスに繋ぐ作曲家・坂東祐大。その妥協なき制作秘話が初公開された。
本作で描かれるのは、“少し先の未来”の“夫婦”そして“家族”の物語。子どもを亡くした夫婦が迎え入れたのは、息子の姿をしたヒューマノイド。止まっていた家族としての時間が再び動き出なかで、彼らは想像を超えた〈未来〉に向き合うことになるーー。
今回、坂東は渾身の劇伴を書き下ろし、劇伴担当としては初長編映画となる本作で是枝組に合流した。カンヌ国際映画祭では、是枝監督、綾瀬はるか、大悟らとともにフォトコール、公式会見に参加。
世界中の映画ファンやメディアが集う華やかな舞台で、温かな歓声に包まれた。
坂東は、オファー当時を「自分のコンサートや他作品などが重なり、前代未聞の過酷なスケジュールでした」と振り返る。
脚本を読むだけでなく、実際に撮影現場へ足を運び、現場の空気感や俳優たちの演技を体感しながら作曲を進めていったという。最終的には当初の想定を大幅に超える計70分、31曲にも及ぶ音楽を書き上げた。
注目は、是枝監督との異例の制作プロセス。坂東が提示したテンポが自在に変化する楽曲に合わせ、監督自らが映像の尺を伸ばしたり、編集を変えたりするという、通常の映画制作では極めて珍しい「音楽主導の編集」が行われた。坂東は「音楽に合わせて映像を調整してもらえるなんて、本当に驚きましたし、ありがたかった」と、その刺激的な現場を語っている。
坂東は、本作の音楽を設計するにあたり、物語の核となる要素を3つの楽器構成に落とし込んだ。
木にまつわるモチーフが印象的な本作では、チェロを中心とした弦楽器、人間とヒューマノイドを象徴する“声”、そして物語がより深い領域へ進んでいく場面ではオーケストラを使用。音によって作品世界を形作っていった。
「AIやテクノロジーとの関係性を、チェロのような有機的な音と、人間の声、そしてオーケストラによって表現できるのではないかと思った」と坂東。さらに、「物語が進むにつれて編成そのものが変化していくのはどうでしょう」と是枝監督へ提案したことも明かしている。
弦楽器を中心に始まり、物語が進むにつれてオーケストラへと拡張していく構成は、これまでの是枝作品ではあまり見られなかった新たな試みとなった。坂東自身は、「自分にとってもこれまでの活動の“総決算”のような作品で、自信を持って送り出せる音楽になりました」と手応えを口にしている。
公開初日の5月29日(金)には、オリジナル・サウンドトラックの発売も決定。伊東裕のチェロ独奏や「Ensemble FOVE」による名演。
家という「箱」の中で、音楽がどのように家族の感情を繋いでいくのかにも注目だ。
『箱の中の羊』は5月29日(金)にTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)
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箱の中の羊 2026年5月29日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
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