女性たちの内なる声を女性監督が映像化 『星の時』ほか、語り継がれる女性映画の名作連続公開

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女性たちの内なる声を女性監督が映像化 『星の時』ほか、語り継がれる女性映画の名作連続公開


マーガレット・サッチャーが女性として初めて英国首相に就任し、世界が競争をより強く求める時代へと向かっていった1979年。その大きな転換期と前後して、女性たち自身の手によってそれまでスクリーンの中心には映し出されてこなかった女性の生き様を見つめる映画が、世界各地で次々と誕生した。

その1本が、ブラジル映画における女性監督の先駆けであるスザーナ・アマラウ監督が1985年に製作した『星の時』。そのほか、イギリスから『ザ・ゴールドディガーズ』と『ナイトシフト』、フランスからは伝説的女優デルフィーヌ・セリッグが監督した『美しく、黙りなさい』といった作品が、製作から長い時を経たこの夏、奇しくも一斉に日本で初公開される。

いずれも女性が監督し、働く女性が主人公。作品のテイストは異なりながらも、それぞれに女性たちの内なる声に耳を傾け見事に映像化している作品の見どころを大解剖!唯一無二の輝きと鋭い視点を放つ作品が映画館で堪能できる。

『美しく、黙りなさい』


Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか、全国順次公開中

今回紹介する4作品の中で最も早い1975年と76年にパリとハリウッドで撮影された、映画とジェンダーを巡るドキュメンタリー映画。『去年マリエンバートで』『ジャンヌ・ディエルマンブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』などで活躍し、フェミニストでもあった女優デルフィーヌ・セリッグにとって唯一の監督作となる。


女性がジェンダーについて語ることに大きなリスクがあった時代に、ジェーン・フォンダをはじめ様々なフィールドで活動する女優23人がデルフィーヌ・セリッグに賛同し出演。<もしあなたが男性だったとしても、この職業を選びましたか?>など、共通するふたつの質問に答えていく。

女性たちがときに率直に、ときにとりとめもなく脱線しながら、聞き手であるデルフィーヌ・セリッグに対して答えていくインタビューによって見えてくるのは、男性が圧倒的優位に立つショウビズの世界の中で、女優あるいは女性そのものが置かれている立場。制作から50年を経て観ると、様々なことが見えてくるはず。

『星の時 4K』


8月21日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて公開
主人公は、貧しい故郷を離れ大都会サンパウロへとやってきた19歳のマカベーア。見習いタイピストとして働いているが、読み書きもままならずそのスキルはかなり怪しいもので、上司には注意ばかりされている。身寄りもなく、貧しく、都会の片隅でひっそりと暮らす彼女は、社会のなかで幾重にも周縁化された女性だ。

しかし、マカベーア自身はその境遇を不幸だとは思っていない。
恋にあこがれ、映画スターを夢見て、ラジオから流れる音楽に涙する。誰にも顧みられないような彼女の内側にある、小さくも豊かな世界と“人生に対する態度”を、スザーナ・アマラウ監督は鮮烈に映し出す。

監督は、「『星の時』を映画化しようと思ったのは、マカベーアという存在に強く共感したからです。ニューヨークにいた頃、私は自分自身がマカベーアのようだと感じていました。だから彼女を理解するために特別な“調査”をしたわけではありません。ただ“人生”を見ていただけです」と、マカベーアに対して強い共感を覚えたことを明かす。

第36回ベルリン国際映画祭ではマカベーアを演じたマルセリア・カルタッショが銀熊賞(女優賞)を受賞。近年では英国BFIによる「The female gaze:女性監督による、見過ごされてきた100本の映画」にも選出されるなど、その評価はいまなお広がり続けている。


原作は、クラリッセ・リスペクトル原作の「星の時」。日本では2021年に初邦訳され、第8回日本翻訳大賞を受賞し、大きな反響を得た。映画公開に合わせて7月発売された文庫版は、すでに重版がかかるほど好評となっている。

『ザ・ゴールドディガーズ』


8月22日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開

ロンドン中心部の銀行でデータ入力係として働くセレステ。数字を移動するだけの労働の空虚さに疑念を抱き、やがて金と権力の関係に強い関心を抱くようになる。

一方、スター女優のルビーは、自らの幼少期の記憶と覆い隠された自分自身の歴史を辿り、偶像としての自分を客観的に見つめ直す。対照的な場所で生きてきたふたりが出会い、言葉を交わす中で、ふたりはこの社会を形成する“あること”に気づく。

『オルランド』『耳に残るは君の歌声』などイギリスを代表する映画監督のひとりであるサリー・ポッターにとって長編監督デビュー作となった1983年の作品が日本初公開。
資本主義社会における金と権力、そして女性の「価値」を問いかける本作。そのテーマを実践するように、女性だけのスタッフによる制作体制が組まれ、キャストを含む全員に同額の報酬が支払われた。

こうした姿勢も含め、近年ではフェミニズム映画の金字塔として再評価されているが、製作当時は、直線的ではない物語の語り口が難解などと評され、男性の表象に対して反フェミニズム的な批判に晒されたという。

『ナイトシフト』


8月22日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開

ロンドン西部、ノッティングヒルにあるホテルのある一夜を描く。夜勤(ナイトシフト)の受付スタッフとして働くその女は、宿泊者カードを記入し、小銭を数え、クロワッサンをラップで包み、掃除機をかけ、鏡や窓を磨き上げる。夜が更け、風変わりな宿泊客たちが訪れ、まるで幻燈のような光景が現れる。

夜のホテルという静寂の中に浮かび上がるルーティンとして聞こえてくる様々な音と、様々な境遇を持つ奇妙な客たちによって、ホテルは幽霊が彷徨うような境界的な空間へと化していく…。

映画界に留まらず幅広い活動を行ったロビーナ・ローズ監督が1981年に手掛けた唯一の長編劇映画。


主演は英国のパンクカルチャーのアイコン的存在、ジョーダン(パメラ・ルーク)が務めた。数十年の間、鑑賞困難な状況にあったが、2024年に4K修復がベルリンとニューヨークで上映され、再発見と再評価の機運が高まっている。今回が日本初公開。

『星の時 4K』は8月21日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国にて順次公開。

(シネマカフェ編集部)

■関連作品:
美しく、黙りなさい 2026年7⽉24⽇より Bunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下ほか全国順次公開
©Sois belle et tais-toi ! / Delphine Seyrig, 1976 / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
星の時 4K 2026年8月21日より新宿武蔵野館、 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開

ナイトシフト 2026年8月22日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
Nightshift © Cinenova

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