スイスの双子映画作家・チュルヒャー兄弟「動物三部作」10月30日公開 日本版ビジュアル&予告編
スイス出身の双子の映画作家、ラモン&シルヴァン・チュルヒャーが、人間たちの共同生活をめぐり生み出してきた「動物三部作」、『ストレンジ・リトル・キャット』(2013)、『ガール・アンド・スパイダー』(2021)、『煙突の中の雀』(2024)が、「ミニアチュールの詩学 チュルヒャー兄弟『動物三部作』」として、10月30日(金)より公開されることが決定した。このたび、日本版メインビジュアルと予告編が解禁された。
長編デビュー作『ストレンジ・リトル・キャット』は2013年ベルリン国際映画祭フォーラム部門で初上映され、その後トロント、カンヌをはじめ世界各地の映画祭で上映。
兄弟が共同で脚本・監督を手掛けた第2作『ガール・アンド・スパイダー』は、2021年ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門で監督賞とFIPRESCI賞を受賞。
そして第3作『煙突の中の雀』によって、三作にわたる「動物三部作」が完結。2025年の東京フィルメックスでは三作品を一挙上映する特集が組まれ、ほぼ満席となる回も生まれ大きな反響を呼んだ。
このたび公開となったメインビジュアルは、三作品のスチールと『煙突の中の雀』の開放的な風景を組み合わせ、静止と運動、室内と屋外が交差する「動物三部作」の世界を一枚に凝縮。整然とした文字組みのなかに二匹の蛾を配し、秩序のなかへ生き物の予測不能な気配が入り込むチュルヒャー作品の感触を表現している。
中央には、白い罫線で幾重にも縁取られた「動物三部作」の大きなタイトル。右側には、本特集のキャッチコピー「小さな部屋に、世界はあふれる。」が縦に配され、整然と組み上げられたタイポグラフィそのものが、静止したフレームのなかに人物や物を精密に配置するチュルヒャー作品の構図を思わせる。
併せて解禁された予告編では、夕食会を準備する一家、引っ越しの部屋、森のほとりの古い家を舞台に、人々の視線や身体、言葉、物音が次々と連鎖していく三作品の世界を凝縮。軽やかなユーモアから、やがて親密さと孤独、愛情と暴力、秩序と反乱がせめぎ合う濃密なドラマへと変貌していく「動物三部作」の軌跡を映し出される。最後には「ジャック・タチとロベール・ブレッソンの出会い」というチュルヒャー作品の作家性を端的に示すコメントも。また、各作品には日本でも知られる実力派俳優が顔をそろえている。『ガール・アンド・スパイダー』では、Netflix「トライブス:明日を拓きし者」のヘンリエッテ・コンフリウスが、親友の引っ越しによって取り残されるマーラの嫉妬や切望を繊細に体現。『ヒトラー ~最期の12日間~』のアンドレ・M・ヘニッケが引っ越し作業員ユレク役で、日常のなかに微妙な緊張を持ち込む。
『煙突の中の雀』では、『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』のマレン・エッゲルトが、家族を支配しながら自らも過去に囚われた主人公カレンを圧倒的な存在感で演じ、『落下音』のルイーゼ・ハイヤーが、家族の秩序を外側から揺さぶる謎めいた女性リフを演じている。
『ストレンジ・リトル・キャット』について、IndieWireのアンドリュー・グラントは、「ジャック・タチとロベール・ブレッソンの出会い。まだ学生の映画作家による傑作。ここ数年で観たなかでもっとも『生きている』映画だ」と絶賛し、Cinema Scopeのマイケル・シシンスキーは「チュルヒャーが第一に関心を寄せるのは、狭い空間の詩学である」とチュルヒャーの本質を評価。The New York Timesのデニス・リムは、「家庭内空間は高度に振り付けられていると同時に、生命のざわめきに満ちている。日常の行為と会話が、シンコペーションの効いた奇妙さと、バレエのような優雅さを帯びる」と評した。
さらに『ガール・アンド・スパイダー』について、The Film Stageのクリストファー・ショーバートは、「物語も舞台もこれほど限られていながら、これほど多くを成し遂げた近年の映画は、ほかに思い当たらない」、RogerEbert.comのグレン・ケニーは、「謎めいて詩的。ごく日常的な物語の枠組みに、宇宙的な感覚を忍び込ませる」と高く評価。
三部作完結編『煙突の中の雀』についても、Varietyのガイ・ロッジは、「鬱積した家庭内の緊張を描く、暗く観る者を引き込む心理劇」と評し、三作品を通じて深化してきたチュルヒャー兄弟独自の映画世界に、世界各地から高い評価が寄せられている。
『ストレンジ・リトル・キャット』
カリンは、両親と幼い妹クララが暮らすベルリンのアパートを訪れる。その晩には親戚たちも集まり、皆で夕食をとる予定だ。洗濯機の修理を待ち、台所のテーブルを囲み、オレンジの皮を使って実験をする。肺について語り、わざと引きちぎられたボタンを縫い直す。猫と犬が部屋を歩き、人々は出入りを繰り返す。一見すると、何も特別なことは起こらない。しかし、小さな行為が次の行為を呼び、一つの言葉が別の言葉へと連なっていくうちに、ありふれた家族の一日は、奇妙で精密な連鎖反応へと変わっていく。
『ガール・アンド・スパイダー』
リザは、長年マーラらと暮らしてきたシェアハウスを出て、初めて自分だけのアパートへ引っ越そうとしている。新しい生活を楽しみにするリザとは対照的に、残されるマーラの心は激しく揺れていた。段ボール箱が運ばれ、壁が塗られ、家具が組み立てられる。リザの母アストリッド、引っ越し作業員のユレクとヤン、新しい隣人カレンらが二つの部屋を行き交うなか、人々の切望、嫉妬、密かな欲望が浮かび上がっていく。リザの送別パーティーを経て、引っ越しはいよいよ佳境へ。変化のただ中で、つながりを求めるマーラの欲望は強まり、部屋そのものが、切望に震える一つの身体へと変わっていく。
『煙突の中の雀』
カレンは夫と子どもたちとともに、森のほとりに建つ、彼女が幼少期を過ごした家で暮らしている。夫の誕生日を祝うため、カレンの妹ユーレが一家でやってくる。
自由奔放なユーレは、亡き母を思い起こさせるこの家を幼いころから嫌っていた。カレンの娘ヨハンナや息子レオンも母に立ち向かい、家族のなかにカレンを引きずり下ろそうとする力が生まれていく。さらに、森のはずれに暮らす謎めいた女性リフが現れる。人々の気配で家が満たされ、煙突に迷い込んだ雀が出口を探すなか、カレンの緊張は頂点へ向かう。
一軒のアパート、二つの部屋、森のほとりの古い家。限られた空間のなかに、人間の視線や身体、言葉と沈黙、生活音、家具、動物を精密に配置し、ごくありふれた日常を、奇妙でユーモラス、そして時に不穏なコレオグラフィーへと変えるチュルヒャー兄弟。これまで限られた上映機会のなかで熱心な映画ファンを魅了してきた三作品が、今回初めて「動物三部作」として本格的な全国公開を迎える。
「ミニアチュールの詩学 チュルヒャー兄弟『動物三部作』」は10月30日(金)よりシアター・イメージフォーラム、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)