M・フリーマン×M・デイモン 『インビクタス』インタビュー 信頼と尊敬の到達点
(Photo:cinemacafe.net)
モーガンは以前からマンデラの役を自ら演じたいと考えていたとか。その経緯について尋ねると「マットが話す時間がなくなってしまうよ(笑)」といたずらっぽい笑みを浮かべ語り始めた。
「そもそも、マディバ(※マンデラの愛称)が、まるで後継者候補のように私を指名したことから始まったんだ。
彼は自伝『自由への長い道』を出版した際に、記者からの『映画化されることになったら自分の役は誰にやってほしいか?』という質問に『モーガン・フリーマン』と答えたんだ。そのとき以来、いつかマンデラの話が映画化されたらモーガン・フリーマンがやるだろうという空気になっていった。私自身、その自伝を脚本にできないかと奔走したんだがなかなか実現には至らなかった。そんなときに今回の話が舞い込んできたんだ」。
モーガンがまるで本人のようにマンデラそっくりだと称賛される一方で、マットもまた実在のスポーツ選手に見事になりきった。実際のラグビーのシーンも含め、フィジカルの面でもかなりの挑戦だったと思われるが…。マットはその経緯をこう語る。
「そう、脚本を読んでまずクリントに電話したよ。
『これ、本当の話ですか?信じられない話ですね』って。それから、フランソワについて調べてもう一度、電話したよ。『クリント、この人デカイですよ。僕はあなたに会ったことないけど、実は178センチしかないんで…』と言ったら彼は笑って『ほっとけ、そんなこと心配するな!それ以外のことを心配してくれ』って。僕は『じゃあ、12センチ足りない分は監督にお任せします』と言った。それから6か月ほど、南アフリカのラグビー代表のキャプテンになるという幻想を完遂するため現地の英語のアクセントの習得とフィジカル・トレーニングに励んだよ」。
ちなみに、撮影のために南アフリカ入りし、実際にピナールに会ったときにはこんなエピソードも。
「最初の日に彼がディナーに招待してくれたんだ。
モーガンと僕で訪ねて、ドアベルを鳴らして出てきた彼を見上げたよ。彼に最初に言った言葉は『スクリーンではもっと大きく見えますから』だった(笑)。彼は大笑いしてたね。それからがっちりとハグをして完全に打ち解けたんだ。それ以来撮影中、彼はずっと僕の貴重な情報源であり続けてくれた。マウスピースの色からキャプテンとして率いることに関しての彼の哲学まであらゆることを質問したよ」。
モーガンは常々「演じるとは“遊ぶ”ことだ」と語っている。今回、実在の英雄マンデラを演じる上でもそれは変わらなかったのだろうか?
「クリント・イーストウッド以外の監督であったなら“遊び”以外のものになっていたかもしれないな。
でも、彼は役者に本当に自由を与えてくれる。俳優たちが遊ぶのを見るのが好きなんだ。俳優の仕事をしているというのは遊んでる以外の何物でもない。仕事っていうのはそれとは全く別のものなのさ」。
マットはまた、先に触れたフィジカル・トレーニングのハードさについて、彼の当たり役『ボーン』シリーズを引き合いにこう表現している。
「(『ボーン』シリーズより)こっちの方が鍛えたよ。毎日ジムに行ったし、フランソワも付き合ってくれた。何せ演じるのは彼の人生だ。
ジェイソン・ボーンが少したるんでも、文句を言われるのは僕だけど、彼に恥をかかせるわけにはいかないよ」。ちなみに、撮影終了後にラグビーをプレーした?という質問は「するわけないでしょ(笑)!」と一蹴。
では、少し真面目な質問を…。この映画がなぜ重要な意味を持つのか?マットは真摯な表情で思いを明かしてくれた。
「南アフリカと世界中の人々に素晴らしいものを思い出させるストーリーを語っている映画だからだと思う。人間の持つ天使的な側面にしっかり耳を傾ければ、深刻な問題に対してクリエイティブで良い解決法はあるはずだということで、ものすごく気分が高揚する映画なんだ。最初に脚本を読んだときから、この物語を語るアンサンブルにぜひ参加したいと思った。あまり良いニュースがないいまのような時代にこそ世に出すべきだと思ったんだ」。
モーガンにマット、そしてここにはいないイーストウッド。3人が互いを尊敬し、完璧に信頼し合ったからこそ完成した物語。映画も、そして2人の話もそれをしっかりと感じさせてくれる。
© Leo Rigah / StarlitePics/Camera Press/AFLO
■関連作品:
インビクタス/負けざる者たち 2010年2月5日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開
© 2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.第82回アカデミー賞 [アワード]
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