強力吸引かコンパクトボディか、ジレンマ解決? - 日立の高級スティック掃除機「パワーブーストサイクロン」
日立アプライアンスが2月21日に発売したスティック型のコードレスサイクロン式掃除機「パワーブーストサイクロン PV-BC500」。実売価格は86,000円前後で、スティック型掃除機としては高級な部類に入る。日立アプライアンスもスティック型掃除機のフラッグシップモデルと位置付けている本製品をさっそく試用してみた。
○今流行りの"2in1"
まずはPV-BC500の主な特徴から紹介しよう。最大の特長は「SDハイパワーモーター」と「パワーブーストサイクロン構造」と呼ばれる新開発の部品・機構の採用だ。これらにより、キャニスター型掃除機と比べてコードレス掃除機の弱点とされる吸引力を強化している。吸引力の指標となる吸込仕事率は公表されていないが、1月に開催された記者発表会のデモンストレーションでは、約2.9kgのボーリングボールをみごと持ち上げていた。
また、国内メーカーのスティック型掃除機では、本体が分離しハンディ型掃除機としても両用できる、いわゆる"2in1"タイプが2014年モデルあたりからトレンドとなっている。
従来機種の「PV-BA100」に引き続いて、今回のPV-BC500もその流れを汲み、2in1タイプとしての使い勝手が様々なポイントで改良されている。
○新感覚のスマートヘッド
改良点の中でも特筆すべきが「スマートヘッド」と呼ばれるヘッド部分だ。スマートヘッドは2本の回転ブラシからなり、ヘッドを押す時だけでなく、手前に引いた時もゴミを吸い込む仕組みになっている。
さらにスマートヘッドは自走式なので、スイッチを入れると引っ張られるように勝手に前へ進んでいく。力を入れていないのに、持ち手の部分を軽く支えているだけでヘッドが進んでいくのは、これまでになかった新しい感覚だ。
○ジレンマを解決したバッテリー
力強い吸引力を維持するためには、それだけパワフルな電源供給が必要だ。よって、バッテリー駆動のコードレスタイプは仕組み自体に限界がある。十分な電源を確保するために、大型のバッテリーを搭載すれば、スティック型としての使い勝手を損ねてしまうからだ。
PV-BC500は強い吸引力と取り回しのいいスティック型、という相反する2つを両立させるために、リチウムイオンバッテリーを採用した。リチウムイオンバッテリーは小型でも電池容量を確保できるため、電気自動車をはじめ、ロボット掃除機などへ採用されている。
スティック型やハンディ型は、最大約10分から20分程度の連続運転時間が一般的だが、PV-BC500ではリチウムイオンバッテリーの搭載により、重量を抑えつつ最大約30分(標準運転時)の連続運転が可能になった。これなら10~12畳程度の部屋を掃除できそうだ。
●使い勝手にも工夫がたくさん
○充実のアタッチメント
PV-BC500は充実した付属パーツも特長だ。ニーズが高まっている「ふとん用パーツ」をはじめ、「すき間用吸口」「伸縮曲がるブラシ吸口」の3点が標準で付属。掃除機の付属品というのは、多すぎても管理や使いこなしが難しい。しかし、PV-BC500の付属品はいずれも厳選された"使える"ものだと感じた。
保管しやすいよう充電台にすべて収納できる点も評価したい。特に筆者が気に入ったのは伸縮曲がるブラシ吸口だ。ブラシの向きや角度を上下左右と柔軟に変えられるので、高い場所や細いすき間の奥を掃除する時に便利。
○使い勝手を左右する重心の位置
ホース部やヘッド部、モーター部、ダストカップ部を一直線上に配置するスティック型掃除機では、その重心をどこに置くかが操作性を大きく左右する。その点についてもPV-BC500はよく考えられているという印象だ。絶妙な重心バランスで設計されており、スティック型・ハンディ型いずれの場合も、手もとにかかる負担を極力軽減できるように配慮された点は、日立がフラッグシップ機と銘打つだけの意気込みを感じた。
そのほか、ボタン1つを押すだけでポンっとゴミ捨てできる独自の「ごみダッシュ」機構を採用している。ゴミ捨て自体はラクなのだが、ダストカップを掃除機本体から取り外す際に、本体との接続部分である集じん口が開きっぱなしでゴミが漏れてしまう。
注意すれば問題ないかもしれない。とはいえ、「ごみ捨てボタン」を押すまでは中身が外に漏れないような構造にしてほしい。こちらは今後の改良を期待したいところ。
日立アプライアンスはキャニスター型掃除機においても特に計量・コンパクト化が得意だ。PV-BC500を使ってみた全体的な印象は、キャニスター型でこれまで培ってきた技術を、うまく2in1のスティック型掃除機に融合させたなぁ、というもの。価格も高価ではあるが、キャニスター型に近い吸引力を求めながらも、スティック型の手軽さ・コードレスの利便性を捨てきれないユーザーにとって、納得のできる機種といえるだろう。