4K AQUOSの重要生産拠点 - シャープ栃木工場 見学記
シャープは、液晶テレビ「AQUOS」の開発・生産拠点である栃木工場を報道関係者に公開した。
シャープ栃木工場は1968年にカラーテレビの専門工場として操業を開始。総敷地面積は東京ドームの約7倍となる326,300平方メートル(約10万坪)を誇る。同工場の住所がシャープ創業者の早川徳次氏の名字と同じ「早川町」となっているように、矢板市にとっても、シャープ栃木工場が重要な拠点であることがわかる。
○栃木工場は4Kテレビ生産の要
第1工場では、国内向け液晶テレビ「AQUOS」の組立生産を行っているほか、第4工場までの生産棟を配置。東日本ロジスティクセンターも同敷地内にある。また、技術センターではAQUOSの開発も行っている。
シャープ コンシューマーエレクトロニクスカンパニー カンパニーEVP兼デジタル情報家電事業本部長の小谷健一執行役員は、「栃木工場は4Kをはじめとした高品位テレビを生産するマザー工場。
開発現場と生産現場が同じ場所で一体となっているからこそ、高品位なモノづくりができる」と紹介。「栃木工場でコスト力のある高品位な生産工程を確立し、それを中国・南京やマレーシアの生産拠点に展開する」という戦略を取っている。
栃木工場では、開発、設計、生産部門が連携し、生産現場へのフィードバックを行う「コンカレントエンジニアリング」を推進。60型以上の大型モデルについては、液晶パネルからテレビ完成品までの一貫生産による工数半減、ネジ締め自動機を導入することによる省力化などに取り組んできた経緯がある。
「2015年10月末から受注活動を開始している8K映像モニターは、栃木工場において培った生産技術力を集結した高効率生産システムによって実現しているものだ」(シャープ コンシューマーエレクトロニクスカンパニー デジタル情報家電事業本部生産統轄部・魚譲司統括部長)という。
液晶テレビの生産ラインにおいては、アームロボットを活用した液晶パネル供給装置、液晶パネル移載装置、シート移載機のほか、狭額縁のベゼル部分のネジ締めを行うためのサイドネジ締め装置、バックカバーのネジ締め装置、さらには、最終検査工程における画像検査装置などを自ら組み立て導入を図っている。現在、栃木工場は1勤体制となっているが、24時間稼働にも対応できる工場づくりを進めている。さらに、IoTの導入などにより次世代工場への進化を目指すという。
以下、シャープ栃木工場の液晶テレビの生産ラインを写真で追ってみる。
○4K AQUOSが完成するまで
組立ラインに投入される液晶パネルは、まずは人が直接触らないように、2台のアームロボットによって移送される。1台のアームロボットが保護紙を吸着盤で吸い上げ、もう1台のアームロボットが液晶パネルを移送する。保護紙であるか、パネルであるかは、小型カメラで自動的に判断する。
モジュールの組立工程では液晶パネルとともにシートを投入する。シートは双腕ロボットによって1枚ずつ投入されるが、ここでは、シャープが空気清浄機などに活用しているプラズマクラスターイオンで除電している。
狭額縁のベゼルと組み合わせるが、ネジ締めはサイドネジ締め機によって行われる。その後、基板や回路などを組み込み、背面カバーを取り付けて、ネジ締め機で固定。
液晶テレビを立てて、検査工程に入る。
検査工程では絶縁耐圧抵抗自動機や受信検査、画像検査、ホワイトバランス調整検査、最終電気検査、最終外観検査を経て、梱包を行う。なお、栃木工場では、量産試作機については300時間の環境検査を行うほか、初期ロットについては500時間、量産後の抜き取り検査では100時間の環境検査をそれぞれ実施する。
●液晶テレビ事業の黒字化に自信
○液晶テレビ事業の黒字化に自信
今回の見学会では、同社の液晶テレビ事業戦略についても説明。2015年度下期のテレビ事業の黒字化に強い自信をみせた。
同社の液晶テレビ事業は、2015年度第1四半期(2015年4~6月)には173億円の赤字であったが、2015年度第2四半期(7月~9月)は23億円の黒字。下期も黒字化を維持すると強調した。通期では赤字見通しだが、来年度での通期黒字転換を目指す。
シャープの小谷健一執行役員は、「今後は安定した黒字体質へと持っていけると考えている。構造改革の効果のほか、4Kテレビの販売拡大もある。国内については、2015年度通期で黒字を目指す。アジアも今期は黒字化が図れる」とした。今後は中国での早期黒字化が課題となる。
国内においては、2016年からは薄型テレビの買い替えサイクルに入ってくること、2016年には4K/8Kの試験放送、2018年には実用放送が開始されるなど、4K/8K放送のインフラが2020年に向けて整備されることもあり、今後はテレビ需要が回復に向かうと予測する。「2015年度は4Kテレビのラインアップを9機種にまで拡大。今年6月に発売した4KテレビのUS30およびU30が市場から受け入れられ、国内4Kテレビで30%のシェアを獲得。
国内ではトップシェアだと認識している。とくに、50型以上の4Kテレビでは、40%以上のシェアを得ている」と説明した。
また、IoTについては、ネットコンテンツやシャープが取り組むAIoTを搭載した機器などとの連携により、情報を最適に表示および視聴できる機器へと進化させ、新たなサービスを生むプラットフォームとして活用。「テレビに通信機技術を積極的に活用していくことになる」などと述べた。