マイファスHiro、2021年は「変化の年」『マトリックス』楽曲制作で成長も実感
●「PARADOX」は挑戦の曲「めちゃくちゃ楽しかった」
キアヌ・リーブス主演の映画『マトリックス』シリーズ最新作『マトリックス レザレクションズ』が17日より全国公開。同作の日本向けインスパイアソング「PARADOX」を手がけたロックバンド・MY FIRST STORYのボーカル・Hiroに、同楽曲や『マトリックス』シリーズに対する愛着、そして自身について話を聞いた。
――「PARADOX」は、世界的人気を誇る『マトリックス』シリーズのインスパイアソングです。楽曲制作のオファーを受けた際のお気持ちは?
戸惑いが大きかったです。「なぜ俺らなの?」と。『マトリックス』という映画を知らない人はいないじゃないですか。なぜ選ばれたのか、喜びよりも戸惑いや恐れ多いという感覚が今も消えません。まだ実感できていない部分があります。
――「PARADOX」は、MY FIRST STORYにとってどのような位置づけの楽曲でしょうか?
僕らにとって挑戦でした。自分たちのエゴを入れるよりも、俯瞰で見て作品としていいものを作ろうという考えが大きかったです。だから、今までの僕らの楽曲や、ファンが求めている楽曲とちょっと違うかもしれません。でも僕の中では、これがマイファス(MY FIRST STORY)でできる限界、バンドでできる限界。これ以上やるとソロっぽくなってしまう。「ここがギリッギリだな」というところを攻めました。
――制作にあたって『マトリックス』サイドからのリクエストは?
めちゃめちゃありました。そのリクエストが自分としては助かりました。
サビ始まりについて「英語がいい」とリクエストがありましたが、僕も英語がいいと思っていました。日本市場のことを考えるとサビの始まりは日本語が好まれるんですけど、「このメロディーだったら日本語より英語がいいな」という思いがあったところに、『マトリックス』側が「英語がいい」と言ってくれて助かりました。
――タイトルも、「PARADOX」ではない可能性があった?
ありました。最初、サビの始まりの「Never Let You Down」を仮タイトルにしていましたが、『マトリックス』っぽくないなと思ったんです。『マトリックス』の世界観に寄り添いながら、自分の見たもの・感じたものを混ぜ込んで作ったので、タイトルも近しいものにしたいと思って悩んでいたら、パッと「PARADOX」という単語が浮かんできました。サビの終わりにも歌詞としてハメているし、『マトリックス』と韻を踏んでいるし『これしかないな』と思ってつけました。迷いはなく、仮タイトルと比べて圧勝でした。
――「PARADOX」は、『マトリックス』シリーズのみならず、ご自身のことも投影しているのでしょうか?
インスパイアソングということで、楽曲やメロディーは『マトリックス』っぽさを出すことは1ミリも考えてなかったです。
ただ歌詞は言語化するので、そこで間違った表現をしないように、監督の意思を反映したいという思いがありました。「僕はこう感じました」という思いと、『マトリックス』側が「こういうものを作りました」ということを合わせることはできると思ったので、すごく自由に書けました。映画の中に、歌詞に使えそうなワードは散らばっているし、それに加えて自分が当てはめられるものを当てはめて。大きな枠組みの中で自由に遊んでいる感覚で、めちゃくちゃ楽しかったです。
――『マトリックス』シリーズに関わって成長できたことや学べたことは?
『マトリックス』は、小さい頃見た印象が強くて「アクション映画だな」という感覚でしたが、今回インスパイアソングを書くことになり、もう一度シリーズを見返したら、アクションはもちろん、ヒューマンドラマがすごく描かれていました。また、『マトリックス』は詩的表現が多く、自分だったらこう言っていたことを、こう表現できるんだとバンドに生きることもありました。音楽面で成長できたと思います。
●『マトリックス』の好きなポイントは「比喩表現」
――『マトリックス』シリーズは、ご自身にとって青春時代の思い出だということですが、覚えているエピソードや受けた影響などを教えてください。
小学生のときに見た、ネオが銃弾をよけるシーンが印象に残っています。曲で言ったら大サビみたいな瞬間。あの感じがたまらなかったです。とりあえずマネしたい(笑)。ベッドの上で、一人でやっていましたし、同級生とふざけ合ってずっとやっていました。
――そうなんですね(笑)
小学3~4年生の頃に金曜ロードショーで見て「かっけー!」って。小中学生の頃に聴いた曲って歌詞を見ずに歌える。『マトリックス』もそんな風に記憶に刻まれている感覚がありました。
『マトリックス』という単語も印象的でしたし、この文字が縦に羅列しているのも近未来感やSF感があって斬新でした。そして今回、シリーズを改めて見返して、当時見たときよりもずっと複雑で深い作品だと感じました。誰しもが抱くような中二病をこじらせていた頃の妄想を映像化・言語化しながら、ヒューマンドラマも描かれている。「こんな深い世界だったんだ!」と思い知らされました。
――作中で、特に印象に残っている詩的なセリフは?
直接言わない比喩表現が好きです。「(真実が知りたかったら)白ウサギの後を追え」とか「まるでシルクでケツを拭くようだ」みたいな表現があって、カッコいいと思いました。そういった表現の仕方が自分の感性にはまったくなくて、一個一個のセリフさえも監督のセンスを感じます。
――最新作はいかがでしたか?
僕の中では、(過去の)3作で完結していました。
『マトリックス レボリューションズ』であんなにきれいにまとまってしまっていたから、「次、何するの?」って思ったんです。でも、『レザレクションズ』を見てしっくりきました。『ここだけは絶対!』というところを押さえている。思い出をさかのぼりながら新しいものを見ている感覚がありました。スッと入ってきましたし、作品が今風にアレンジされている。最新作も含めて、きれいなまとめ方だと思いました。
――お気に入りのシーンは?
『レザレクションズ』で「おっ!」と思ったのは、ネオとトリニティーの再会シーンです。やりとりのなかで展開されるある子のセリフに「マトリックスってこんな映画だったっけ!?」って驚きました。
過去3部作ではありえない、リアルな言葉、ある種届きやすい日常会話がバッと出てきたので、めちゃくちゃ印象に残っています。
――改めて、今回『マトリックス』シリーズに携わったことで芽生えた気づきや新たな野望はありますか?
まずは、「PARADOX」がどういう評価を受けるのか楽しみです。評価次第では、もっとやりたいことができる気がします。昔はもっと純粋にやりたい音楽、作りたい音楽をやろうという気持ちが強かった気がします。「好きなバンドの楽曲やろうよ」みたいな(笑)。それくらいピュアに、今やりたいこと、今だからやれることを意識して、さらに何かが作れる気がします。
●SNSとの付き合い方は? 見るのは「料理レシピ(笑)」
――『マトリックス』は、何が真実なのか嘘なのか考えさせられる作品です。現代も、情報が多すぎて何が真実なのか嘘なのか分かりにくい時代です。そうした中、例えばHiroさん自身のSNSとの向き合い方は?
自分に都合の良い情報だけ入れるようにしています。僕は猜疑心が強くてあまのじゃくでもあるので「これネットに載っていたよ」と言われると、「“ネット情報=正解”みたいな考え方して大丈夫?」と思ってしまいます。僕はインスタグラムだけやっていますが、自分が苦じゃないように、更新できるときにやっている感覚です。スマホは娯楽として持っているだけで、電話とメールだけできればいいかなという考えで、SNSにこだわりはないです。
――HiroさんにとってSNSとは?
プロモーションの一個、ですかね(笑)。それくらい割り切ってやってます。日頃の感情を書くこともないですし、自分とは別のものとして考えています。
――ちなみに、HiroさんがSNSでよく見るものは?
おすすめに表示される外国人のふざけた動画とかは見たりします。あとは料理のレシピとか(笑)。「うまそ~!」と思いながら見ています。
――では、日頃のストレスの発散方法は?
直接誰かに話します。「こういうことあったんだけど、どう思う?」とか。人に話すことでストレス発散します。それでけっこう満足します。
――2022年の目標は?
僕にとって、この1年はすごく長かったです。かなり変化の年でした。来年以降どうなってるか分かりませんが、この変化の感じが、僕としては気に入っているんですよね。小さいことだと引っ越しとか。自分の身の回りの変化、一緒にいる人の変化がすごくありました。いい方向に変化してくれたら、というのを意識して生きていこうと思っています。2022年も楽しみたいです!
■Hiro(MY FIRST STORY)
2011年夏、東京渋谷でMY FIRST STORYを結成。2012年4月にアルバム『MY FIRST STORY」でデビュー以降、確かな楽曲、ライブパフォーマンスが話題を呼び、全国の大型フェス出演や海外アーティストとの共演も数多く務め、着実に実力を付けた。2016年の最終公演は日本武道館にて開催、1万2,000人を動員しSOLD OUT以降、数々のアリーナでの公演を実現させた。コロナ禍以降、開催が出来ていなかったアリーナ公演を2022年2月10日、東京・日本武道館にて行う。
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