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東芝テレビ事業継続はアニメファンの希望 - "録画神" 片岡氏に聞くREGZAの可能性

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東芝テレビ事業継続はアニメファンの希望 - "録画神" 片岡氏に聞くREGZAの可能性
●驚愕の人力リストアップシステム「みるコレ パック」の舞台裏
四半期ごとのテレビ番組改編期に、いつも頭を悩ませる問題がある。「今期どのアニメを見ればいいのか」という問題だ。なにせ、新作の深夜アニメが週に30本以上もあるのだ。仕事もプライベートも忙しく、家族もいる平均的なビジネスマンとしては、毎週30本ものアニメを見る時間などない。でも、後に傑作と呼ばれるかもしれない作品を見逃すわけにはいかない。毎度、強烈なジレンマに襲われる。

○出演シーンからCMまでをリストアップ

そんなアニメファンにとって嬉しいサービスが誕生した。東芝が液晶テレビREGZAを対象に昨年スタートした「みるコレ」だ。
かつて、HDDレコーダー「RDシリーズ」を手掛け、熱烈なRDファンから "録画神" とも呼ばれるようになった片岡秀夫氏 (現・東芝ライフスタイル ビジュアルソリューション事業本部VSクラウド&サービス推進室室長) が開発したものだ。自他共に認めるアニメマニアでもある片岡氏に、「みるコレ」を通じたジャパニーズコンテンツへの思いと、東芝のテレビ事業に対する思いを聞いた。

「みるコレ」は、音楽配信サービスにおけるプレイリストのいわば映像コンテンツ版と言える。タレント名やアーティスト名だけでなく、ジャンルやテーマに沿った「みるコレ パック」が5万件以上用意されており、リストから選ぶだけで録画済み番組再生、YouTube動画再生、録画予約が1つの画面上で行える。自分で好きなパックを作ることも可能だが、テレビという特性上、文字を入力するのはなかなか面倒なので(レグザは音声入力もあるが)、あらかじめ東芝側で用意しているものだ。

片岡氏:「みるコレ パック」の概念は、ある種のファンクラブみたいなものです。アイドルのAさんが好きならば、その人が出演する番組や情報は全て知りたいというのがファン心理。しかし、それを一元的に入手し、録画・視聴する手段はありません。
EPG(電子番組表)情報には出演する番組しか載っていませんから。「みるコレ パック」では、出演番組だけでなく、CMやYouTube動画もリストアップします。CMは同じものがあってもダブらずに1つだけを再生できます。さらに、録画済み番組に対しては、本人登場分だけを切り取って再生する「シーン再生」機能もあります。ほうっておくと、本人登場シーンだけを連続再生します。

何時間も放映する特番の場合、録画した中からお気に入りのアーティストや芸人を探すのは一苦労だ。歌番組だけでなく、バラエティ番組でも好きなタレントの登場シーンだけをピックアップして見られるのはファンにとって便利この上ない機能だろう。なおこれは、外部から秒刻みのメタデータを購入することで実現している機能である。


●ファン垂涎の大人アニメパック、制作会社パックも登場
○ファン垂涎の大人アニメパック、制作会社パックも登場

アニメ分野はさらにファン感涙の仕組みが導入されている。その実現には、「涙あり、苦労ありの連続です (笑)」と片岡室長が表現するように、チーム片岡の公私を忘れた熱い努力がある。一般的なレコーダーの場合、ジャンル検索で「アニメ」を選ぶと、幼児向けも含まれてしまい、衛星放送も含めると1週間に1,000以上の番組がヒットしてしまう。僕達が見たいアニメはそれじゃない。

片岡氏:アニメファンが望んでいるのは、「大人アニメ」と呼ばれるジャンル。しかし、EPG情報ではアニメで一括りにされてしまう。なので、我々が人力でタグ付けし、独特のジャンル設定の下でパックとして提供しているのです。大人アニメの中でも細分化していて、SF、ファンタジー、学園もの、萌系、女性向け、つやつやなど、現在25のジャンルを用意しています。
また、声優や監督はもちろん、昨年12月からは京都アニメーションやA-1Picturesといった制作会社ごとに絞り込んだパックも用意しました。

「つやつや」とは、肌の露出が多いセクシー系のアニメのことだ。最近では、「学園×ロボット×ファンタジー」というように複数の要素がミックスされた作品もあるため、ジャンル分けが非常に難しいという。

片岡氏:番組から発表される情報は非常に少ない。放送ギリギリになっても声優陣すら発表されないこともあります。しかし、パックはおまかせ録画を前提にしているから、放送を待ってからジャンル決めはできません。なので、自分の知識と経験をフル動員して、ジャンルを決めてパックを作ります。放送されてから、これは違うとパックを移動してしまうと次からは録画されないので失敗は許されません。


監督や制作スタジオ、原作者の過去の作品傾向から判断してジャンル決めを行っているという。この経験値を積むため、片岡氏はテレビ放映される大人アニメは全て見ているという。また、アニメは漫画原作が多いため、この2年間で約3,000冊のコミックを電子版で購入したとのことだ。

片岡氏:この仕事を始める前は週7本でしたが、今は週30本のアニメを見ています。改編期には50本。平日は仕事で夜が遅いので、土日に集中して見ています。昼くらいに起きだして夜までずーっとアニメ三昧 (笑)。コミックの購入は自腹ですよ。
半分、趣味みたいなものですから。

ちなみに、「みるコレ パック」のドラマ分野を担当する中村さやか氏も、放映されているドラマほぼ全てに目を通しているというから驚きだ。こうして蓄積された知識から生み出されるのが、各種のおすすめパックだ。「オススメ大人アニメパック」は、何を見たらいいのかわからないユーザーに対しては入門編にもなるが、アニメファンにとってみれば「あの片岡氏がオススメする作品なので間違いない」という位置付けになり、録画必須のパックとなる。

●リビングの情報ポータルとしての地位の復権
○リビングの情報ポータルとしての地位の復権

実は、「みるコレ」は単なる次世代型ユーザーインターフェースというだけではなく、東芝のテレビビジネスの新機軸となる可能性も秘めている。一つはデータとしての価値。テレビ放送は視聴率がビジネスの尺度となっているが、それはリアルタイム視聴のみで、録画視聴は対象になっていない。

しかし、「みるコレ」はクラウドサービスであるため、ユーザーがどのパックを利用して録画したかをデータとして取得できる。
最初だけでなく、2話、3話と進んでいった時に録画を続けているか、それとも止めてしまったかもわかる。さらに、そのパックを選んだユーザーが、他にどんな番組を録画しているか、何曜日の何時にどんな番組を見ているかといった分析も可能だ。アニメだけでなく、中村氏が担当している旅行や料理、ドラマなど他のジャンルと掛け合わせることでユーザーの嗜好がわかり、次の番組作りに役立たせることができる。

もう一つは、テレビの情報ポータルとしての復権で、昨年末に始まったKADOKAWAのアニメ雑誌「ニュータイプ」とのコラボパックが鍵になる。

片岡氏:ニュータイプパックは、雑誌の特集との連動企画や今期の主要アニメの主題歌PVのリンクに加え、「ニュース」という項目を設けています。これは、Web NewtypeのRSSフィードから記事をもらって表示しているもので、アニメ系のイベントやフィギュアなどグッズ発売の情報も含まれています。大人アニメは、各制作スタジオが心血を注いで作り上げており、ブルーレイソフトとしてもクオリティが高い。アニメは原作本やフィギュア、グッズ、映画化、声優コンサートなどのイベントというように、大きなエコシステムを形成しています。その動線を作ることが我々の役目だと思っています。コンテンツが集まる場所になることでテレビが売れるようになるし、アニメをはじめとしたテレビ番組がもっと見られるようになるでしょう。業界全体の問題として、テレビがどんどん見られなくなってきている。特に検索文化に慣れた若い世代は、放映時間まで待つというテレビの特性に苦痛に感じている。自分の好きな時間にクリックしてすぐに結果が出る、そんな世界がテレビでも必要だと痛感しています。公式の見逃し配信サービスも始まっていますが、PC・スマホ向けだけでなくテレビにも対応し、それがリアルタイムの放送とリンクしていれば、ユーザーはテレビに戻ってくるでしょう。

「みるコレ パック」の中にVODコンテンツも連動させる計画も進んでおり、REGZAが番組コンテンツのポータル的存在となる道筋は既に見えてきている。

昨年4月に発覚した不正会計問題により、大規模な構造改革を余儀なくされた東芝。同社ブランドをけん引してきたテレビ事業もその矢面に立たされ、事業の継続さえも危ぶまれた。しかし、12月21日に発表された「新生東芝アクションプラン」では、国内開発・販売を継続し、高付加価値製品を中心とした利益が出せる体質への転換を図るとの内容が盛り込まれた。

高付加価値化の重要なツールとしてクラウドサービスを挙げているが、その一端を担うのが「みるコレ」である。現在、どのメーカーもカタログを開けば高画質に対する美辞麗句が並ぶが、ハードウェアのスペックの羅列はユーザーからは「どれも同じ」に見える。それが同質競争を生み、結果、価格下落を招く。他社にない特徴的な機能である「みるコレ」がこの悪循環を破り、東芝のテレビ事業を再生へと導いてくれることを切に願う。

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