1年に映画7作出演で役を演じ分けた俳優・高杉真宙 - 役者魂の根底にあるピュアな思いとは?
●7作品を並行して初めて気づいたこと
『想影』(2016年7月16日)、『PとJK』(3月25日公開)、『ReLIFE リライフ』(4月15日公開)、『逆光の頃』(7月8日公開)、『トリガール!』(9月1日公開)、『散歩する侵略者』(9月9日公開)、『プリンシパル ~恋する私はヒロインですか?~』(2018年公開)と、約1年で7作の映画に出演する俳優・高杉真宙。それぞれまったく違う役柄にも関わらず演じ分ける姿が、話題となっている。
純粋に「演技が好き」と語る高杉には、どこか応援したくなるオーラが漂っているが、撮影に入れば、がらっと雰囲気が変わる。今回は高杉にこれまでを振り返ってもらいながら、作品とむきあう方法や、演技に対して抱いている思いについて聞いた。
○監督に求められることの違い
――この1年で出演された映画が7作も公開されますが、こんなに並行するのは初めてではないでしょうか?
ここまで色々な作品に出させていただくことは、なかなかないですね。撮影がかぶることがなかったので、やりにくくはなかったです。
――テイストも役柄も全く違う7作ですが、演じ分けるのに苦労などはありましたか?
あまり役を引きずったりはしないので、すごく苦労したということはないんです。今回は撮影がかぶっていなかったため、髪型を変えることができたことが良かったです。
金髪にしたり茶髪にしたりと外見を変えて衣装を着ると、自分の中では区切りができます。本当は、リフレッシュできる日があったりしたらもっといいんですが(笑)。
監督によって全然演技の土台が違ってくる点は、本当に勉強させていただきました。ナチュラルさを追求する監督もいれば、コメディに徹した大きな演技を求める監督もいて、振り幅がすごく大きくて。監督の他の作品も改めて観て勉強したりするんですが、それでも現場に入ると作品ごとに全然違ったりするので、戸惑いが激しかったです。
――それは大変ですね。
めちゃくちゃ大変ですよ。僕も初めて気づいたんです(笑)。
舞台・ドラマ・映画と媒体が区切られているみたいに、作品によって演技自体が違ってくるのだなと思いました。
――本当に、青春ものもあれば叙情性が強いものもあり、ラブな感じのものもあり……とかなりバラエティに富んでいますよね。毎回、「これをクリアしたから、次はOKかな」と思うんです。でも次の作品に携わるといつも、リセットされるような思いです。『逆光の頃』は、他の作品とまた演出方法が違うので、心折れる瞬間がありました(笑)。
――それはどのような時だったんですか?
何十回とテイクを重ねる時でした。振り返るカット、だけで何十回とか。ただ、そのシーンは、僕もOKをいただいてから「もう1回やらせてください」と言ったシーンでもありました。
自然体を求められていたのですが、監督から「『自然に演技してます』という感じがすごく出ている」と言われたんです。それがすごく難しくて。
●7作の中で、近い役・遠い役は?
○明るい役に対する戸惑い
――自分に近い役、遠い役とあると思いますが、どちらの方が演じやすいですか?
たとえば自分と近い役が同時にきたとしたら、どう変化をつければいいのか、と思ってしまうので、離れている方がやりやすいかもしれません。
――この7作品の中だといかがでしょうか。
『逆光の頃』の孝豊は一番近いかな。でも、全体的に遠いですね。『散歩する侵略者』はちょっと抜きにして(笑)。1番離れているのは『ReLIFE リライフ』の大神です。
ひときわ明るい子なので、ちょっと離れすぎている。
――映画では自然に見えましたが、そんなに明るくないんですか?
全然! びっくりです(笑)。監督にも「無理して明るく振る舞ってるように見える」と言われて、「これはやばいな」と思い、努力しました。
――作中でもムードメーカー的な存在ですよね。
そうなんですよ! 現場の共演者のみなさんも、本当にキラキラして眩しくて。僕はもう、浄化されている感じでした(笑)。
○役作りについて心がけていること
――役作りについて、何か心がけていることや高杉さんの方法などはあるんですか?
去年は原作ものが多かったので、原作からキャラクターを作っていきます。台本と原作の違いを見つけて、役を作る場合もあります。
あとは、監督との話し合いです。
――そういった方法は、いつごろから確立し始めたのでしょうか?
高校2年生で、演技をしたいと思い始めてからですね。『ぼんとリンちゃん』という作品できちんと演技というものを知って、それからいろんな同年代の方にも出会って、「自分はもっともっと頑張らなきゃ」「もっと勉強したい」という思いが強くなりました。――7月に公開される『逆光の頃』も、そのきっかけと同じ小林啓一監督ですよね。
監督ともずっと、もう一度ご一緒したいという話をしていたので、実現することができて感慨深いです。あの時はまだ子供だったのに、いまや監督とお酒が飲めるというのも不思議な感じです(笑)。
――そういうときって、「あの頃よりも経験を積んだ自分を出してやる」みたいな気持ちがあったりとか。
ありましたね。
あの時に比べて成長できていたらいいなとも思いましたし。自分の成長を出せたらいいなと思っていました。
――映画やドラマで活躍される高杉さんですが、生放送のラジオドラマ(5月5日放送 NHK第一『劇ラヂ!ライブ』)にも挑戦されて。
表情が使えない分、全然表現の仕方が違うと思うので、少し怖いですね(※取材は放送前)。僕はアニメが好きで、いつか声優さんをやりたいと思っていたので、そういう表現の仕方も勉強できたらと思っています。
――声だけの演技も追求したいとは、かなり貪欲な気持ちなんだなと思ったのですが、演技に対してはどのような思いを抱かれているんですか?
すごく、演技が好きなんですよ。何が楽しいんだろう?(笑) でも本当に演技自体がすごく好きで、どんな風に演じようかと考えている時間が好きです。地道な作業で、難しいし、しんどいんですよ。
でも、好きですね。面白いです。