【コブスくんの使えそうな仕事術】どうやったら“偉人”になれるの? 偉人研究家に聞いた
先日アウトロー経営者の履歴書―時代を作った社長たちの物語という本を読んだ。ディズニーランドを作ったウォルト・ディズニー、現在もケンタッキーフライドチキンの店頭で笑いかけるカーネル・サンダース、世界初の本格的なパソコンであるマッキントッシュを世に送り出したスティーブ・ジョブズ、芥川賞・直木賞を創設し作家としても名高い文藝春秋社の菊池寛など東西の経営者の人生にフォーカスをあてている。
ここに登場する偉人たちは皆、若い時は無能な社員だったり、失敗続きであったりと、最初から大成功を収めている人間は居ない。簡単に言えば、ダメ人間である。(本書ではアウトローと表現しているが)
これを読んでいる若い会社員のなかでは、仕事の不手際で上司からさんざん雷を落とされたり、同僚から嫌われたりしている人間も多いに違いない(僕もその一人だ)。しかし一方で、世の中で偉人と呼ばれている会社の長である経営者もダメな人間が多い。仕事に自信をなくしかけている人はぜひ読んでほしい一冊だ。勇気をもらった僕は著者の山口智司さんに新宿の喫茶店でお話を聞いた。
――「アウトロー経営者の履歴書」は経営者の人生に迫った本ですが、例えばカーネル・サンダースは65歳にしてようやくケンタッキーを創業することになったそうですが、思った以上になかなか成功にいたりませんよね?
「そうなんですよ。65歳って定年の年ですからね。僕は大学を卒業してから、希望していた企業にうまく就職できなくて腐っていたのですが、そんなのカーネル・サンダースの挫折に比べたら小さなものだと思います。逆に言えば、65歳から突然世界中が認める偉人に上り詰めることだってあるというわけです」
――なるほど。ダメ社員の僕には染みる言葉ですね。山口さんはこのような経営者の人生を調べるのが好きだったんですか?
「経営者と言うより偉人と呼ばれている人全般ですね。やはり就活で挫折したときに偉人の人生や発せられる名言に興味を持ちまして。偉人の人生に興味を持つと、偉人といえど最初から偉人だった人はほとんど居ないんですよ。
例えば発明王で有名なエジソンは学校で『落ちこぼれ』と言われたりと、さんざんののしられていますよね。そこに共感を覚えました。今は時代が寛容ではなくなっている気がして、本書に取り上げているような偉人は出にくい環境にあるのかもしれません」
――確かに自分の部下が本書に登場する経営者のようなアクの強い人物だったらすごいイヤです。ちなみに、山口さんは本書で紹介されている偉人のなかでも特に誰が好きですか?
「甲乙つけがたいですね。いくつか選ばせてもらえれば、65歳にして成功をつかんだカーネル・サンダースは日本ではあまりメジャーではありませんが、アメリカではまさにアメリカンドリームと呼ばれています。そして作家として同業である菊池寛さんあたりはすごく好きです。現在の週刊誌のフォーマットを作ったのはこの人ですからね。この人は将棋をやるな、と社員に注意しながら、自らはそのおきてを破って将棋を差すことがあったりと、決して優秀な人間じゃなかった。
だからこそ、面白い雑誌が作れたのかもしれません」
ここでふと気になった。数々の偉人の人生を調べてきた山口さんなら、偉人になる人に多い傾向や条件のようなものが分かるのかもしれない。無理を承知で、山口さんに偉人になりうる人の条件を提示してもらった。
☆他人のアドバイスを聞かない
これは山口さんいわく、真っ先に思いつく条件だという。ヘンリー・フォードは何があっても自分の意見を優先し周囲の助言を決して聞き入れることはなかったという。経営者と言えば社交力が問われそうなモノだが、意外に時代を切り開いた偉人はわがままな偏屈モノばかりだったのだ。これは意外だ。
☆自分のやりたいことがはっきりしている
本田宗一郎は一貫して技術者であり続けた。
このように、偉人となる人物には自分がやりたいことがはっきりしている人が多いという。なるほど。これはよく分かる気がします。
☆抜群の行動力
阪急電鉄の創始者である小林一三は、電鉄会社を起こすときの資本金をさまざまな人物を相手に、時には土下座して集めた。いざとなったら抜群の行動力を示す。これも偉人の条件だ。
☆人を巻き込んでいく力
例えば経済学者のマルクスには、エンゲルスという経済的な意味で彼を応援する人物が居たそうだ。このように、成功者になる人間にはなぜか周囲に強力な理解者が居ることが多い。
それはその偉人の人を巻き込んでいく力によるものではないか、と山口さんは分析する。
☆不器用である
何かを成し遂げる人間は、意外なほど不器用な人間が多い。偉人にもさまざまなタイプがあるが、経営者に限って言えばさまざまな人の協力は不可欠。不器用な人物は不器用であるがゆえに、なぜか助けてしまうような力をもっているのではないか、と分析する。
☆不屈の根性
そしてどんな困難に巻き込まれても決してくじけない。スティーブ・ジョブズは自分がスカウトしてきた社員に会社を追い出される羽目にあったが、それでもあきらめなかった。我々凡人にはもっとも難しいハードルだと思うが、あきらめなければ必ず道は開かれる。
著者である山口さんは第一志望である大手出版社の勤務をあきらめ、現在にいたっている。
しかし結果的には自分の名前で著書を出すし、出版の道をあきらめずに幸運を掴んだ。教科書に載るような偉人は無理だとしても、自分のやりたいことを実現させるぐらいのことは、ひょっとするとこの本を読めば成し遂げられるかもしれない。しかしまあ、険しい道だ。「人の意見を聞かない」という条件だけであれば、僕も当てはまるんだがな~。
(梅田カズヒコ/プレスラボ)
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アウトロー経営者の履歴書―時代を作った社長たちの物語
今回取り上げた本です。あきらめるな!(65歳までは)
山口智司の『快筆乱麻』
今回お話をお伺いした著述家・偉人研究家の山口さんのブログ