30代からが本当の人生の入り口! 今を乗り越えればラクになる!?【黒川伊保子】
恋も仕事も人間関係も、20代の頃は目の前の出来事に悩んできて、30代に入ればラクになるかと思えば、また別の方向から悩むようになる。しかし、辛いのも「今だけ」と脳科学者の黒川伊保子さん。人はその年代によって、脳の役割があり、それを乗り越えると将来がグンと楽になるとか。
私たちの脳神経回路は天文学的な数の回路がありますが、常に活性化していると、「物」の判断ができないしくみになっています。たとえば、目の前を猫が横切ったとしたら、それを「猫」を認知する回路だけが立ち上がらないといけません。同時に、象と豚の回路も立ち上がると、それが何か分からなくなってしまいますよね。
ヒトは、脳神経細胞数が人生最多の状態で生まれてきます。ありとあらゆることを感知できるので、逆に、目の前の者が何かをとっさに判断することができません。
日々の暮らしを重ねることで、生まれてきた環境に不必要な細胞を捨て、残された細胞の関係性を作ることで、家族を認知したり、言葉を認知したりできるようになるのです。
こうして、脳は、経験によって知識を増やしながら、一方では、経験によって回路に優先順位をつけて絞り込むことで、とっさの判断を間違わない、より洗練された状態を手にしていきます。
その観点で人生を見ると、28歳までは、知識を増やす入力系に偏っています。経験によって、さまざまな知識や方法論を手にするときなのです。脳は、いわば「がむしゃらな入力装置」。恋をしても勉強しても、遊びにもがむしゃらになれ、そこから、大事な「生きる知恵の基礎」(どうすればモテるのか、どうすれば儲かるのかetc.)を手に入れていきます。
だから、28歳までは、がむしゃらに生きてくださいね。好奇心を感じたこと、あるいは先輩に「こうしなさい」と言われたことに、「自分に合っているのかしら、何になるのかしら」なんて四の五の言わずに、飛び込んでください。
そして、誰もが28歳を超えると、がむしゃらさを失っていきます。脳が単純記憶力のピークを過ぎ、次の段階へ入ったから。30歳のお誕生日頃には、ここまでの「入力」のおかげで、その人が生きる環境においての世の中のしくみ、裏も表も、上も下も右も左もわかるようになっています。
そんなわけで、世の中を見切ったような気分になるのが、30歳前後の脳の特徴。人生で最も傲慢なときかもしれません。でも、その傲慢さも、次の「人生の冒険」へ飛び込んでいく大事な起爆剤。どうぞ、思う存分、傲慢になってくださいね。
30代の10年間、脳は、人生で最も苦しい時期を迎えます。
世の中のすべてを見通せる脳になったのに、回路の優先順位がしっかりついていないので、迷うからです。