ストラヴィンスキー「ピアノ作品集」の一癖二癖にドキッストラヴィンスキーって「春の祭典」とか「火の鳥」とか、大胆で仰々しいダンス音楽を作った人でしょ? などという印象をお持ちかもしれません。しかし、年代によって次々と作風を変えたことでもストラヴィンスキーは有名でした。
原始的で力強い「春の祭典」と違って、「プルチネラ」というバレエ音楽はバロックか古典派のような瀟洒(しょうしゃ)な優美さがあります。また、このピアノ曲集の中の「ピアノ・ソナタ 嬰ヘ短調」は、彼が22歳の時の作品ですが、最初にこれを聴いて作曲者を当てられる人は、多分少ないでしょう。同じくロシアのラフマニノフかチャイコフスキーの作品だ、といわれたら信じてしまうかも。それだけ変幻自在に書ける天才なのです。
とはいえ、決して過激に聴こえず、むしろ聴きやすいのにそれだけではない遊び心があちこちに仕組まれていて、聴くうちに脳ミソがシャッフルされてくるから不思議です。