春前はスプリングコートが、花見時期は白いシャツが、というようにその季節になると気になるものってありますよね。毎年、初夏の時期に気になるもの、それが
“ゆかた”です。ゆかたは、もともと貴族が湯あみ時に着ていた
湯帷子(ゆかたびら)が語源ともされ、庶民に普及したのは江戸中期以降と言われています。
「江戸な日用品」(平凡社)/撮影・喜多剛士
歌舞伎役者の衣装で話題に
江戸ッ子も飛びついた 「竺仙」のゆかた江戸の浴衣文化にひと役かったのは、木綿生地に柄を染め抜いて舞台衣装や普段着とした歌舞伎役者でした。当時のスーパーアイドルだった役者の衣裳を真似て人々はすぐさま同じ柄の着物を作ったと言われています。
そんな歌舞伎役者たちに個性的な浴衣をプロデュースしていたのが、天保13(1842)年創業の
『竺仙』(ちくせん)。俳句や絵画に通じていた初代は、自ら考案した型染めの衣装を歌舞伎役者や江戸の俳人たちに提案。彼らが好んで着たことで、江戸市民がこぞって買い求めたと言われています。
「江戸な日用品」(平凡社)/撮影・喜多剛士
昔と変わらず今も、竺仙の“ゆかた”は、多くの女性の憧れのまと。毎年千種類もの新作を発表しています。そこで竺仙5代目・小川文男さんに、似合う一枚を選ぶコツを聞いてみると「
顔うつりがいい色柄を選ぶこと、それにつきます」とごくシンプルなお答え。
重ね着で変化をつけられる洋服とは違い、色柄のみで勝負するゆかたは、顔の雰囲気とあうかが大事と言います。さらに色柄の顔うつりは、着物のプロに指南いただくのが一番。着物のプロがいるお店で、いろんな色柄をあててみて、似合う一枚を選びたいですね。