仕事をするも辞めるも、今までは自分の思いひとつで自由に選択できていたはず。けれど、
子どもを持つと環境を替えたいと感じていても、いろいろな絡み合う事情により、一歩を踏み出せる人は多くはないようです。
今、ママにとって大きなハードルとなっている
「転職」。さまざまなケースのママたちの
転職ストーリーを連載で紹介していきます。
■吉田奈津美さんの「転職するとき」
吉田奈津美さん プロフィール
6歳、3歳の二児の母/株式会社メデラ 社員
産後何度かの転職を経て、メデラで働く知人から誘いを受け入社。母親であることはマイナスではなく、メリットと捉えてくれることに共感している。
http://medela-mama.jp/
【吉田奈津美さんの出産後の転職歴】
▼1社目 映画配給会社 契約社員
2010年5月第1子出産 →
2010年7月仕事復帰→ 2010年8月に退職
▼2社目 派遣会社へ登録(派遣先は2社)
2011年5月派遣社員として転職
2012年4月第2子出産のため産休・育休へ → 2013年7月出産 →
2014年4月仕事復帰 → 2015年1月退職
▼3社目 現在
2015年2月株式会社メデラへ正社員として転職
■産後2ヶ月で復帰→翌月退職が、理想の子育てを考えるきっかけに
子どもを産む前から働いていた会社には、制度として産休はありましたが、育休はなかったんです。そこで2010年5月に出産した2か月後の7月には、仕事復帰をすることになりました。
復帰早々、体調もまだ完全でない体で、真夏の強い日差しと気温の中での通勤が始まりました。私自身フラフラになりながら会社にたどり着く日々です。それだけでなく、生まれて間もない息子も預けてすぐに体調を崩してしまい、その月は保育園に2週間も行くことができませんでした。
そのときに「これはちょっと違う」と感じ、復帰したばかりでしたが会社を辞めることを決めました。
退職はしましたが、その会社から在宅でできる仕事を請け、少しの間はフリーランスのような形で仕事をしていました。けれどこの状態を長く続けるつもりはなく、新しい仕事と保育園を探して早く仕事に復帰しようと考えていました。
でもそれと同時に前社を辞めたときのように、
子どもに負担をかける仕事はしたくない、
子どもとの時間をしっかり持ちたいと思うようになり、
働き方を模索していました。
■「自分を成長させたい」 派遣社員から正社員へ転職
そうしているうちに認証保育園が先に決まり、入園の条件として翌月には働き始めなくてはいけなかったので、予め登録していた派遣会社に条件の合う仕事先を紹介してもらい、2011年5月から新たに働き始めました。
そこで約2年働いた2013年5月、
二人目の出産のため産休に入り、7月に長女を出産しました。派遣会社には育休制度もあったので、それを利用して翌年4月に復帰し、半年近くたった頃メデラに
転職し、現在に至ります。
「メデラ」は、スイスに本社を置く「母乳育児」製品のメーカー。吉田さんが母親であることが強みになる。
一人目の子どもを再び認証保育園に預け、そこからメデラに転職するまでの2年半の間は、派遣会社から紹介される会社に勤めていました。
ですが、実はその間もずっと一つの会社で働いていたわけでなく、いくつか仕事先を変えているんです。
だから子どもが生まれてから会社が変わった回数で言うともっと多くて、実際はこの6年で4社になります。
仕事先を変えるたびに
出社時間や
勤務形態も変わったりして、それに慣れるまで子どもにも少しは影響があったかもしれません。でも派遣会社から紹介されていたので、仕事をしながらの転職活動をしたわけでもなく、待遇など自分の条件を満たしたところに行くことができたので、精神的な負担で言うと、通常の転職とは違った、
守られている感じはありました。
小さな子どもを育てながら働くのは大変なことなので、産休育休制度もあり、時短などの条件を満たす会社をすぐに紹介してくれる派遣会社は、
当時の自分には合っていて、助かると感じることも多かったです。
けれど仕事をしていくうちに、もっと
会社の一員として中に入って、
責任のある仕事をしたい。自分自身も
成長していきたいという思いが大きくなっていました。
そんなとき、以前一緒に働いていた友人にメデラに来ることを誘われたんです。
■「母でいること」がメリットだった!
今までは子どもや家庭を守るため、時短や残業なしなどの条件を優先して仕事選びをしてきました。
そうやって仕事と家庭を切り離して二つをうまく両立させるということばかり考えていましたが、そのとき友人に
「メデラはママを探している」と言われたんです。
子どもがいることは転職において
ハンデになるとばかり思っていたのですが、そう言われたときに「そんな考え方、そんな仕事があるのか」というような
気付きがあり、今の自分自身の環境を生かせるこの会社で働きたいと思うようになりました。
それに、幸いなことに自宅から会社への距離は近くなり、通勤時間も短くなりました。たまに終わらない仕事を多少自宅に持ち帰ることもありますが、基本的には時短勤務で、自分の裁量で仕事にかかることができ、仕事をする上で最大の優先事項として決めた
「家族との時間を守る」も以前よりクリアできています。
今、メデラに入社してから2年が経ち、責任のある仕事も任されるようになりました。子どもたちも仕事に理解をしてくれて、大切なプレゼンの前日には「ママ、大きな声で言えば大丈夫だよ!」なんて勇気づけてくれたりするんです(笑)。
自分のやりたいことと、子どもの成長を信じて、これだけはということだけは曲げずにやっていけば、今がどの場所にいたとしても納得のできるその先に繋がっていくと思っています。
<ママの転職 Q&A>
Q:転職活動中、「子どもがいること」をネガティブに感じたことは?
A:転職期間が長引くと退園させられるとか、保育園のしがらみに転職を躊躇させられることはとても多いと思います。
でも譲れないいくつかの条件だけは必ず守り、それ以外多少の妥協ができれば、子どもがいてもいい仕事には巡り合えると思います。
Q:仕事を選ぶときの基準はなんですか?
A:1)手作りの夕飯を用意できる余裕があるかどうか。魚を焼くだけ、野菜を切ってお皿に並べるだけでもいいので、普段の食事の準備をするところから子どもたちに見せてあげたいと考えています。
2)延長保育には入れない。子どもが友だちと一緒に「バイバイ」と言える時間のお迎えができるようにようにと考えていました。
Q:もし1社目の会社を辞めなかったとしたら、どうしていたと思いますか?
A:どんな選択をしても、後悔はしたくないので、きっとがんばってやりくりしたりして、その生活にある程度納得はしているとは思います。でも以前の会社は残業もバリバリするような職種で、ロールモデルになるような人もいなかったので、タイミングが違ったとしても転職していたと思います。
Q:転職に対して、ご家族の理解はありましたか?
A:メデラに転職することを夫に相談したら「行きなよ!」の一言でした。
実は同じタイミングで夫も転職をすることになっていたので不安も多少あったのですが、その一言に後押しされました。夫も転職後は早く帰れるようになったので、家族にとって私の転職も夫の転職も、いい選択でしたね。
Q:これから転職をしようとする人へ、アドバイスをお願いします!
A:自分が大切にしたいことが守れることが前提で、あとは出会い! 不安はあるけれど出会ったら迷わずトライしてほしいですね。人によってそれぞれタイミングもあると思いますが、行けそうなときは「エイ!」と気負わず踏み出してみてもいいのかなと思います。
子どもを自分の手で育てることを実感しながら、自分の成長も感じていきたいと新たな会社で正社員になることを選んだ吉田さん。
母になるとつい自分のことが二の次になることが多いけれど、「子どもたちはきっと働いている母を誇りに思ってくれていると思う」と自分の成長に妥協しないたくましさは、子どもたちにとっての優しい母であることを支える力になっているようでした。
「頭下げるのを見て同情した」娘の結婚を認めない父に対抗して、母が味方に。しかし母が用意した作戦は…