■最新作で描かれる“百人一首”の雅な世界観
――今作では百人一首がカギとなりますが、注力した点はどこですか?
諏訪「脚本を担当してくれたコナン初参加の大倉崇裕さんは推理作家で、コナンとしては初めてに近い倒叙的なミステリー。大倉さんはそれができるプロフェッショナルな方です。我々も常に映画を支えてくれる新しい人たちに参加してもらえるよう促しています。
20作目を終えて、今作は第一作に戻ったつもりで「殺人ラブコメ」を丁寧に作りました。大阪・京都の話で百人一首の雅な世界を描いていますが、百人一首のうち、40以上が恋の歌だということが今回のラブコメの基礎にありますね。
1000年以上前の恋愛が、今のキャラクターである男女関係に重なるっていうのは、お客さんにシンクロナイズするんじゃないかなって。トリックは映画を観てもらうしかないけれど、百人一首をどう使うかって言うのは、大倉さんも先生もわれわれもシナリオ会議でウンウンうなって考えました。」
(C) 2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
――映画では、キャラクターの恋愛模様も楽しみのひとつです。
諏訪「劇場版スタート時は新一(コナン)と蘭は1作品ごとに1cmずつ距離が近づいてる…なんて表現してた時もあったけれど、キリがないので(笑)。
今は良い意味でキャラクター遊びになっている気がします。新一が蘭にロンドンで告白しているので、平次もオレだって変な場所では告れないとか気にしていたりして。
今作では平次と和葉の関係が描かれていますが、青山先生の手のひらの中でキャラクターが踊って成長していっていると思います」
(C) 2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
――今後の映画制作について、課題に感じていることはありますか?
諏訪「平成30年や東京オリンピックを意識して、良い意味で大きな変革期を迎えるかもしれませんね。
原作については何も言えないけれど、劇場版やテレビシリーズも長年続いて、「名探偵コナン」は誰かの一個人では舵が取れない大きさに成長したのは確か。
この豪華客船をこれからどうやって変化させながら成長させていかなければならないか、という覚悟をもって携わっていかなきゃいけないと感じています。
というのも、20作目を迎えるにあたって、実は18作目は20作目を意識した作品になっているんです。さすがに20作目は黒ずくめの話になるだろうと思ったし、先生も18作目の最後に沖矢昴が赤井秀一だとバラすというアニメならではの演出をしようと言ってくれて。
そのラストシーンをまず決めた上で、古内さんに脚本を書いてもらったんです。
そんな18作目を作っていたのは、17作目の公開前ですからね。
そのサイクルは今も一緒。今は次のその次のテーマを決めることはできないし、テレビも映画も厳しい世界なので絶対に続くとは限らない。だけど、来る将来をしっかり見据えて、ある程度の青図(展開予想図)を持っていたいと思っています」
(C) 2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
――それでは最後に、子どもたち・パパ・ママへのメッセージをお願いします。
諏訪「子どもの時を思い返すと、僕は大人のドラマにもドキドキしていた。それは初めて見る新鮮なシーンや、複雑な大人の社会っていうものに対しての感情でした。コナンはミステリーということで、それらの社会が凝縮されて出てきます。
正しい説明かどうかわからないけど、“コナンを観て、早く大人になってね”、 “コナンを観ると、良い大人になれるよ!”と伝えたいですね。
犯罪は決して許さないし、反面教師キャラもたくさん出て来ますから(笑)。
劇場版が始まったころは、仕方なく子供のために映画館に行ったけれど、次の年からは今回は行かないのか?と子供をせかせたなんていう内容のハガキをたくさんいただきました。当時の子どもたちが、今は親世代になって来ていると思います。
僕たちも“一回離れたけれど、やっぱりコナンはいいな”と思ってコナンにカムバックしてもらえるよう努力していますし、コナンと一緒に推理して謎解きする楽しさも味わってもらえたら嬉しいです。20年経ってもキャラクターは古びないので、一緒に行く末を見届けてほしいですね」
チーフプロデューサー諏訪道彦さん。『名探偵コナン』は、中国をはじめアジアで大人気。韓国でもテレビ放送されており、コナンは韓国の町に住んでいる設定にローカライズされているのだとか。13作目『漆黒の追跡者』(2009年)で35億円を突破し、6作目の興行収入超えを達成。
この作品には初のゲスト声優として、DAIGOさんが出演している
昔の子ども、今の子ども。