昔の子ども、今の子ども。

ママやパパが子どものころ遊んでいたアイテムやサービス。長く愛され続ける理由はどんなところに隠れているのでしょうか。取材してみると、昔と今、長い時間を掛けてちょっとずつ変化している部分がたくさんあることに気づきました。

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ピカチュウがモンスターボールに入らない理由とは? 「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」インタビュー【 第13回 昔の子ども、今の子ども。】

 



ゲーム、アニメ、映画と幅広い展開をみせる「ポケットモンスター」、縮めてポケモン。1997年にスタートしたテレビアニメは、今年で20周年を迎えます。

今回は、テレビアニメの立ち上げ当初から総監督を務め、劇場版20作品すべてを手掛けてきた湯山邦彦監督にインタビュー。サトシの相棒にピカチュウが選ばれた理由から、7月15日公開の最新作「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」の制作秘話まで、たっぷりとお話を伺いました。

■サトシのパートナーにピカチュウが選ばれたワケとは…

――初めはゲームから始まったポケモンですが、どのようにアニメ化していったのでしょうか?

ポケモンをもらって旅立ち、ジムを巡って行くというゲームの設定をそのままに、ゲーム内に出てくる地図なども参考にアニメをつくっていきました。最初のゲームはモノクロのドット絵だったので、それほどビジュアルはなかったんですけどね。

――ゲームが発売されて、すぐにアニメ化が実現したのですか?

実はそうではないんです。ポケモンって、じわりじわりと演歌みたいな売れ方をしていて(笑)。子ども達の口コミで広まっていき、1年くらい経ったところでアニメ化の話が来たんです。「これはおもしろそうだな」と、初めから手応えがありました。

――たくさんのポケモンがいる中で、サトシのパートナーにピカチュウを選んだ理由を教えてください。

最初はフシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲの誰をパートナーにするかという話になったんです。でも、たとえばフシギダネを選んだら、ゲームで他のポケモンを選んだ子がかわいそうだし、それはイヤだなって。

ピカチュウは一番ポケモンらしいというか、あくまで“生き物”として成立しているし、かわいくて強い。しかも、その頃「コロコロコミック」の読者アンケートで人気第1位がピカチュウだったこともあって、ほぼ満場一致で決まりました。なるべくしてなったという感じですね。



――ちなみに、ピカチュウがモンスターボールに入らないことに理由はあるのですか?

当初は、特に理由はなかったんです。単純に外に出していたかった…見せたかったんですよ(笑)。あとは、“ずっと一緒”っていうのを表現したかったというのもありますね。

■大切にしたいのは “ポケモンが生きている世界の日常感”

――ピカチュウは本当にかわいいし、他のポケモンもすごく魅力的ですよね!

ポケモンの最大の魅力は、やはりその種類の豊富さだと思います。かわいい子やかっこいいヤツ、ちょっと気持ち悪いのもいる。子どもって、かわいいだけじゃなくて意外と不気味なヤツが好きだったりするじゃないですか。そういうものを全部網羅することで、自分が本当に好きなものを選べるようになっているんです。

あとは、キャラクターというより、その世界に存在している“生き物”として受け止められているのも大きいと思いますね。ポケモンが日常にいる感覚っていうのが味わえれば、それだけで結構楽しめるんじゃないかなと。

――息子は草むらを見ると「あそこにポケモンいそうだね!」ってよく言います(笑)。

そうですか!そういう感覚を持ってもらえると、一番嬉しいですね。

ポケモンの場合、“ポケモンが生きている世界の日常感”というのを大事にしています。あくまで非日常なんだけど、そこにある日常の感覚みたいなものを出したいんです。

2002年からは映画を制作する際、海外に取材に行くようになりました。ふだんと違う世界の日常感っていうのは、行ってみないとわからないですからね。

――たしかに旅行に行くと、自分にとっては知らない世界だけど、ここで暮らしている人もいるんだなっていう感覚はありますよね。

今作では、ニュージーランドに行きました。街中のバトルシーンでは、ニュージーランドの街並みをかなり参考にしています。なので、見比べたら「ここだ!」とわかるところはたくさんあると思いますよ。

――そんなところに注目しながら観るのもおもしろそうですね!

■テレビ版と劇場版の大きな違いはリアリティの差

湯山監督が一番好きなポケモンは「ラプラス」なのだとか。「今作は上映時間内に収めるために色々とカットしたんですけど、ラプラスのシーンだけは迷いつつも残しました(笑)」



――20年の歴史の中で、大きな転機などはありますか?

技術的に言うと、フィルムからオールデジタルになったことですね。2002年の「水の都の護神 ラティアスとラティオス」はちょうど転換期で、フィルムも残っているデジタル作品です。

デジタルをフィルムに変換すると、色や質感が変わってしまうので、そこを合わせるのが大変だったんですよ。苦労して、ようやくデジタルをフィルムにするシステムが完璧にできるようになったと思った翌年、全部デジタルになって、その技術は必要なくなったっていう(笑)。

デジタルになるとカメラワークが全然違ってきますし、初期の頃の作品もデジタルならもっといろいろ表現できたな、とは思いますね。

ちなみに内容的な転換期は…特にありません(笑)。

――20年間変わらないというのもまた、魅力のひとつですよね! では、テレビ版と映画版での違いはありますか?

テレビ版は、高い所から落ちても人型の穴が開く程度だけど、映画だと高い所から落ちると怪我をする。映画のほうが、リアリティの具合をちょっと上げているんです。たとえば、ロケット団が「やな感じ~」と言ってキランと光って消えるという流れは、話の展開に関わるようなシーンではやらないようにしています。

それだとピンチがピンチにならなくて、何でもありになっちゃうんですよね。テレビはギャグからシリアスまで、アニメとして楽しい部分を残しながらやりたいけれど、映画ではサトシが生身の人間として危機を乗り切ってほしいと思っています。

――劇場版について、意外と知られていない秘密などはありますか?

映画の中では、図鑑は使わないことにしています。必ず幻のポケモンが出てくるので、それを図鑑に載せちゃうのはどうなんだろうっていうのがあって(笑)。

――なるほど(笑)。アニメの第1話ではホウオウについて、図鑑に“まだ登録されていません”と出てきますよね。

そうなんですよ。あれはまだ次のゲームの発売前で、ホウオウだけを先出ししたんです。アニメが4月に始まって、本当は年末ぐらいにゲーム「ポケットモンスター 金・銀」が出るはずだったんですけど、実はゲームの製作が遅れて3年ぐらいゲームが出なかったんですよ。

だからアニメも最初はすごいペースで進んでいたけど、途中からはスローダウン(笑)。旅をして行く物語なので、とくに問題はなかったんですけどね!

――それはすごい裏話ですね(笑)。作品をつくる上で大切にしていることはありますか?

ポケモンの世界は、どこかへ遊びに行って、何かを経験して帰ってくる“夏休みの一日”を表現したものだと思っていて。だから、煮詰まったり悩んだりした時には「夏休みの一日だったら、どうかな?」と考えてやるようにしています。日常から特別離れたものではなくて、10歳のサトシくんの頭の中で捉えられるようなことを描こうと。

サトシがわからないことは、わからないままでいい。たとえば「ミュウツーの逆襲」(1998年)では、ミュウツーの言っていることをサトシは半分も理解できていないと思うけど、気持ちだけでなんとなく通じ合っていく。言葉で納得し合うわけではなくて、“どこかで通じ合う”というところが表現したいんです。

あとは、異質なものを異質なものとして受け入れるというのもポケモンの大きなテーマのひとつですね。不思議な生き物たちとの出会いを善悪で分けるのではなくて、「俺とあいつは全然違うけど、それはそれとして認め合う」というところが伝わればいいなと思っています。

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