皆が憧れるステージで活躍する大人って、どんな子ども時代をすごしたのでしょうか? ゆめを叶えた大人はどんな風に育てられたのか、人生まだまだヒヨっ子のちゃずがインタビュー!
第7回は、今年3月に著書『キッズのココロわしづかみ術』(主婦と生活社)を発売した小島よしおさん。「そんなの関係ねぇ!」のネタでお茶の間を湧かせてから10年、最近は子ども向けのライブが大人気の小島さんに、ご自身の子ども時代からこれからの未来まで語っていただきます。
小島よしおさんプロフィール
1980年、沖縄県生まれのお笑い芸人。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」のメンバーとして活躍。解散後、ピン芸人としての活動を開始。2007年、「そんなの関係ねぇ!」のネタで大ブレイクし、同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」トップ10に入賞。近年は、子ども向けの単独ライブを中心に活動を続け、2016年放送の「R-1ぐらんぷり」で決勝に進出。2017年3月、著書『キッズのココロわしづかみ術』(主婦と生活社)を発売し、注目を集めている。
オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/yoshiooyoshi/
母の影響で、目立ちたがり屋の明るい性格に
ちゃず:先日、『キッズのココロわしづかみ術』を読みまして、そのポジティブな内容に励まされました!
となると、気になるのは小島さんご自身の子ども時代。ぜひ、お話を聞かせてください。
小島:本を読んでくださってありがとうございます!
僕はとにかく目立ちたがり屋の、明るい子どもでしたね。学級委員とか、応援団長とかに積極的に手を挙げていました。
ちゃず:ご家族からの影響もあるんですか?
小島:それは大きいと思います。母が社交的でパワフルな人だったので、明るくあることが当たり前になっていました。それが、小学校高学年くらいになると、友だちのお母さんに会う機会が増え、大人しいお母さんも存在するんだと知ったんです。うちは特別明るいんだな、と。
いまでも忘れられないのが、母に裸足で追いかけられたこと(笑)。学校へ行くとき、「いってきます」を言わなかったからって、ものすごい勢いで追いかけてくるんですよ。一緒に登校していた友だちが驚いていました。
ちゃず:明るくて厳しいお母さんだったということがとてもよく伝わるエピソードですね(笑)。
小島:遅くまで遊んだり、テレビを観すぎたりすると、よく叱られました。
テレビといえば、我が家のテレビは“貯金”ならぬ、“貯視聴”システム制。1日30分は観ていいことになっていて、観なかった分は貯蓄することができたんです。たとえば、7日間観なければ30分×7日間=210分を後日観ることができる。
ちゃず:おもしろいシステムですね!
小島:“貯視聴”を兄と競っているうちに、貯めることのほうに夢中になっちゃって、最高で1300時間くらい貯めました。
いま思えば、このとき、目標を定め、夢中になって取り組むことを覚えたような気がします。
ちゃず:とても素直な子どもだったんですね。
小島:とはいえ、反抗期はありましたよ。中学生の頃なんかは、母に「ふざけるな、ばばあ」とか言って泣かせてしまうことも。
当時、同じことでも、誰から言われるか、によって全然違ったんです。たとえば、先輩から言われたことはとてもよく聞いていましたね。大人になってからは、周りの人からもらった意見やアドバイスを参考にすることで、うまくいくことがより多くなったと思います。
「そんなの関係ねぇ!」は失敗から生まれた
ちゃず:小島さんは、最初からお笑い芸人を目指していたんですか?
小島:高校までは野球部に所属し、プロ野球選手を目指していました。帰宅部の同級生に背筋力で負けたのを機に、別の道へ進むことを決意したんです。一浪し、1日16時間くらい勉強して進学しました。
進学後、なんとなくタレントオーディションとかにも応募したんですけど、合格するのは登録にお金がかかるものばかり。当時、家計が厳しかったので、その道に進むのは断念しました。
ちゃず:お笑い芸人への道は、挫折ののちに開かれたんですね。
小島: お笑いを始めたきっかけは、大学のお笑いサークルに入ったこと。サークル内で組んだコントグループの一員として事務所と契約し、ネタ番組へ出演させてもらうこともありました。
ところが、大学卒業と同時にグループが解散、事務所を辞めることに。一度は路頭に迷ったんですが、遊んでいた先輩や、たまたま知り合った預言者から、「お笑いを続けたほうがいい」とアドバイスされ、新しい事務所に入りました。
ちゃず:ブレイクのきっかけとなった「そんなの関係ねぇ!」は、どうやって生まれたんですか?
小島:ある日、クラブでネタ見せをする機会があったんです。そのときやったネタが全然ウケなくて、思わず発したのが、「ウケなくたって、そんなの関係ねぇ!」というフレーズ。リズムに乗せて言ってみたら、思いのほか盛り上がったんです。
数ヶ月後、当時の彼女から、「あのときのやつ、いまでもお母さんとやるよ」って言われて。試しに、ラジオ番組でネタとして披露してみたんです。そうしたら、その番組で優勝して、「これはいけるかもしれない」と思い、ライブでもやるようになりました。
ちゃず:現在は、子ども向けのライブを中心に活動を続ける小島さん。子ども向けにシフトした理由は?
小島:同じやり方を続けていたら、仕事が減ってきてしまったんです。気づくと、かつて自分のいた位置に、別の芸人がいることもしばしば。ライブにも手応えが感じられなくなってきた頃、「思いきって子ども向けにやってみたら?」と、先輩が提案してくれたんです。
はじめは、子どもに何がウケるのかわかりませんでした。
最近になって、やっと少しずつ手応えが得られるようになった感じです。ネタをつくるときは、「面白いものより、好きなものをやったほうが伝わる」という先輩からのアドバイスもあり、自分が楽しむことを大切にしています。
ちゃず:大人が子どもと一緒に楽しむって、いいですよね!
小島:ライブで率先して歌ってくれたり、子どもと一緒に楽しんでくれたりする親御さんの姿を見ると、嬉しくなりますね。
逆に、以前、ロケ先の学校の先生が生徒たちに、「おまえたち、この先、芸能人に会える機会なんて二度とないぞ」みたいなことを言っているのを見て、残念な気持ちになりました。大人が未来を諦めるような態度を見せたら、子どもも希望が持てなくなってしまいます。子どもは大人の影響を受けやすいのです。
僕の場合、常に両親が未来に希望を持たせてくれる環境で育ちました。父はずっと選挙活動を続け、政治家になったし、母は苦しい家計を助けるため、イチから始めた沖縄料理屋を繁盛させた。だから僕も、こうして仕事を続けられているんだと思います。
ライブを観に来てくれた子どもたちが、寒い日も暑い日も一生懸命楽しくやっている僕の姿を見て、こういう大人もいるんだな、と感じてくれることを願っています。
ちゃず:「キッズコーディネーショントレーナー」の資格を取得したと聞きました。どんな資格なんですか?
小島:NESTA(アメリカのフィットネス協会)の認定資格で、子どもの運動神経を鍛えるトレーナーの資格です。
これを取得することで、いままでなんとなくやっていた動きについて、体系立てて説明できるようになりました。何より、ライブに来てくださった親御さん方への説得力がぐっと高まったのを感じています。
世界中の子どもたちにネタを届けたい
ちゃず:ここまでのお話を聞いていて、小島さんはとても精神力の強い方なんだな、と感じました。
小島:僕、もともとはすごく弱いんです。弱いからこそ、メンタルを鍛える啓発本を読んだり、どうすれば強くなれるか考えたりしています。
弱いところや、ダメなところから、打開策が生まれることってよくあると思うんです。「そんなの関係ねぇ!」も、最初から持ちネタが成功していれば、生まれていなかったフレーズですから。
ちゃず:では、緊張することなんかもあるんでしょうか。小島さん流の緊張のほぐし方があれば教えてください。
小島:もちろん、緊張することはあります。ほぐし方は、遠くを見ることですかね。リラックスしたいときは遠くを見て、逆に、集中したいときは近くを見る。野球をやっていたときに、発見したやり方です。
ちゃず:かつて、「一発屋」と言われたり、「死亡説」を流されたりした時期があったかと思いますが、その状況をどのように捉えていましたか?
小島:もちろん傷つきましたけど、落ち込んでばかりもいられませんでした。料理にたとえて言うと、そこにある“食材”は変わらないんですよ。であれば、それらをおいしく食べられるように調理するしかありません。
他人と比べてもきりがないから、自分の“食材”の調理法を極めていくのが一番。僕の場合、最近では、「そんなの関係ねぇ!」という“食材”にマリオネットを加えて、新しい料理(新ネタ「コジマリオネット」)を生み出しました。
ちゃず:ときには逆境を乗り越えながら、お笑い芸人としてご自身の道を拓いてきた小島さん。今回、なぜ『キッズのココロわしづかみ術』という本の執筆を?
小島:全国でライブを行い、各地の子どもたちと接するようになり、「子どもにはこういう傾向があるから、こういう対応をするといいんだ」という気づきや、学びの機会が増えてきたんです。子育ての答えはひとつではありませんが、共通する土台みたいなものはあると思うので、それを自分なりに考えてきました。
自分の子ども時代を振り返ると、親から受けた影響は大きい。だから、自分の気づきや学びを、本をとおして伝えたいと思ったんです。子育てをしたことはありませんが、年間100本以上×6年間=計600本以上の子ども向けライブを通じ、いろいろな子どもたちと触れ合ってきました。その経験を活かして書いた本です。