2017年7月12日 16:01|ウーマンエキサイト

セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】


■実直に声を選んでいるという自信

メアリ役の杉咲花や彼女と共に冒険をするピーター役の神木隆之介をはじめ、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶと、声優陣のキャスティングが絶妙です。

西村プロデューサーが「現場を兼ねるプロデューサーは、企画や脚本から、キャスティングや音楽、音響まで、映画制作の全部に関わります。企画から始めている分、米林監督と考えが違うことは少ないです」と言うとおり、おふたりは二人三脚で映画作りをされていきました。

「キャスティングでは、声そのものがもっている人格や人生を探すんです。たとえば庭師のゼベディ役の遠藤憲一さんは、有名な役者さんだから頼むわけじゃない。冒頭、赤い館に引っ越して一週間しか暮らしていないメアリが、なぜか朴訥で無口なゼベディに親しみを感じています。ゼベディには、子どもがつい心を許してしまう魅力があるらしいのです。遠藤さんの声は、厳しさと渋さの裏に、よく聞くと可愛げというのがある。
それは遠藤さんが人生を経て獲得した人間的魅力だと思いますし、ゼベディの声色そのものに、こどもを引きつける魅力が欲しかった。
セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】
マダム・マンブルチューク役の天海祐希さんもそうでした。魔法大学の学校長としての品格や優雅さ、厳しく冷徹で怖くもあり、一方で直情的な面も持つ。二面も三面も持った人物です。天海さんなら、そのすべてを演じていただけると思いましたが、困ったことに、マダムはコミカルな面もあった。決め手は、天海祐希さんがされた故・土井たか子さんのモノマネでした(笑)。このチャーミングさがマダムの声には必要だった。


セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】

天海祐希が演じたマダム・マンブルチューク/(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会



芝居で演じるのではなく、その人の声がもっている人間性も出してもらいたい。杉咲花さんや神木隆之介さんの声も、登場人物の人間的な本質のところで合致している声かどうかということが大事でした。
セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】

神木隆之介が演じたピーター/(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会


映画はテレビアニメと違い、その人物を存分に説明する台詞量も時間も足りません。少ない台詞で登場人物に、リアリティや説得力を持たせるためには、抽象的に演じ分けられた声と演技ではなく、役者さんが持っている具体的な人間性が有用なことが多いんです。

相応しい声を探して見つけるまでは、長い時間がかかります。映画に描かれない登場人物の過去すら想像しつつ、映画のなかでポイントとなる台詞を思い浮かべて、それこそ実直に、様々なジャンルの色々な方の声を延々と聞き続けます。その作品に合った声しか欲しくないんでしょうね」

■子どもから教えられたものとやりがい

最後に、『メアリと魔女の花』を親子で観るママへのメッセージをお願いしたら、西村プロデューサーは「映画のプロデュースというのは昼夜を問わない仕事でして、子育ては奥さんに全部まかせきりなので、迷惑をかけています。だから、ママへのメッセージといわれても、まともなことは言えないんですが」と前置きした後、こんなお話をしてくれました。


「ただ、僕は子どもが大好きで、子どもに教わった大事なことがあります。毎年サンタクロースになって子どもの枕元にクリスマスプレゼントを置くのですが、朝起きた当時4歳の娘が、さっそくプレゼントを見つけて喜んだ。そして、いきなり立ち上がってベランダの方にかけていって、そこから空に向かって『ありがとう、サンタさーん!』と大声で叫んだんです。そのとき、僕はこれがアニメーション映画の仕事の本質だと思いました。

誰かに大切な何かを伝えたいと、伝わればいいなと願って何年も費やすけれど、僕ら作り手は、最後にはひっそりと隠れていればいい。子どもたちが『ありがとうサンタさん』『がんばれメアリ』と笑ったり、大事な何かを受け取ってくれるなら、それは人生をかけるに値します。

今は年間100万人しか子どもが生まれていない。ぼくらのときは年間200万人でした。
少子化で子どもの数が少なくなれば、子ども主人公の実写映画も作りにくくなるし、アニメーションもいつのまにか、大人たちが見て、ああでもない、こうでもないと、楽しむものに変わりました。大人のほうが圧倒的多数な社会で、効率とか経済合理性とか、そういうのは一旦横において、子どもたちには大切なことを伝えたいし、大人たちには子どもの未来に責任があるんだと伝えたい、そういう思いを込めて一本の映画を作りました。ぼくたちが作りたいのは、子どもと大人がいっしょに笑い、一緒に感動できる、そういう作品です。ぜひ親子で観ていただけたら嬉しいです」

セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】


セカオワに突きつけた主題歌の役割 『メアリと魔女の花』は制作者の本気が試された作品【後編】
メアリと魔女の花
2017年7月8日(土) 全国東宝系にてロードショー
「メアリと魔法の花」公式ホームページ

監督・米林宏昌がスタジオジブリ退社後の第一作目として、満を持して発表する長編アニメーション映画『メアリと魔女の花』。監督が最新作に選んだ題材は、かつて師である宮崎駿監督が選んだ題材と同じ「魔女」。あらゆる世代の心を揺さぶる夏のエンターテインメント超大作が誕生!

【声の出演・スタッフ】
杉咲花 神木隆之介 / 天海祐希 小日向文世 / 満島ひかり 佐藤二朗 遠藤憲一 渡辺えり / 大竹しのぶ
原作:メアリー・スチュアート「The Little Broomstick」
脚本:坂口理子
脚本・監督:米林宏昌
音楽:村松崇継

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