いたずらの王者を目指すゾロリと、その子分・イシシとノシシの旅を描いた
『かいけつゾロリ』シリーズは、今年で30周年を迎えます。
今回は、原作者である
原ゆたか先生にインタビュー。子どもたちに圧倒的な人気を誇る児童書「かいけつゾロリ」シリーズに込めた思いや、11月25日公開の
『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』の制作秘話まで、たっぷりと語っていただきました。
「かいけつゾロリ」シリーズ原作者 原ゆたか先生。本シリーズの中に、自らキャラクターとしても出演!
■本嫌いの子に“ページをめくる楽しさ”を伝えたい
© 2017 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会
――まずは『かいけつゾロリ』が誕生した経緯について教えてください。
もともとは、みづしま志穂さん原作の
「ほうれんそうマン」シリーズに出てきた敵役なんです。はじめは10冊くらい続けば御の字かなと思っていたので、こんなに続くなら子どもでも描けるような簡単なキャラクターにしておけば良かったなぁって思っているんだけどね(笑)。
私は絵描きで、もともと児童書には挿絵を描いていました。でも絵を使ってページをめくる楽しさをもっと演出できるんじゃないかと思って。そこで、「レイアウトも全部やらせてほしい」とお願いしていたら、最終的には出版社から「じゃあ描いてごらん」と言われて、すべて自分で描くことになったんです。でもそこで、人に文句を言うだけだったら、いかに簡単だったか気付くわけ(笑)。
――やってみて、初めて難しさを知るというやつですね(笑)
そうなんですよ。
だから白紙の原稿用紙をドサッと渡されたときは、すごく困っちゃって。でも私は映画が好きだったので、いろんな作品を組み合わせればいい本ができるかもと思ったんです。
だからそのときは、
本が嫌いな子がどんどんとページをめくりたくなって「気がついたら一冊読みあげていた!」という本を作りたいという気持ちでした。
『かいけつゾロリのかいていたんけん』と『かいけつゾロリのちていたんけん』表紙カバー。イラストがつながるように制作されている
大人って、自分が小さい頃に読んでいたおもしろい本のことは忘れてしまって、いま、「子どもに読んで欲しい本」を読ませようとするものなんですよね。でも、大人が読ませたがるような小難しい本って、子どもの頃、私は全然おもしろくなかった。
子どもは
親父ギャグや
おならが大好きだし、僕はそんな時期を経て、大人になるものだと思うんです。だから、子どもたちにもそこは通らせてあげてほしい。
そしてそれを使って本を読む楽しさを教えたいなと思うんです。
――ゾロリをとおして、伝えたいメッセージなどはありますか?
はじめは、何か意図をもってゾロリを描き始めたわけではなくて、ただおもしろい本を描きたかっただけ。でも、
ママに頼ってばかりいたゾロリが、ママが死んじゃったことで自立せざるを得なくなる。しかも子分のイシシとノシシがくっついたので、しっかりした人にならなきゃいけなくなっちゃったんですよね。
けれども、社会ってそういうことなのかなって。
挫折もあるしイヤなこともいっぱいある。でもそれを乗り越えて前に進まなくちゃいけない。いま思えば、ゾロリはそういうお話なんだと思います。
『映画 かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』に登場する怪獣のラフ画
――では、『かいけつゾロリ』が大切にしていることはありますか?
戦わない。人を傷つけない。ハラハラドキドキさせることかな。学校の図書室にも並ぶものだから、殺伐としていないものを描かなきゃと。敵を懲らしめることはするけど、いかなる理由があっても相手をやっつけるということはしたくないと思っています。