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ペットも大事な家族の一員。
我が子同然の存在なのに、どうして母子手帳がないんだろう?
双子の妊娠を機に
ペットの母子手帳がわりとなる
「もしもヘルプ手帳」を開発したというイラストレーターの
オキエイコさん。
3児のママでイラストレーターでありながら、
緊急時のペットの救いとなるアイテムを次々に制作・販売し、会社まで立ち上げました。
きっかけとなったできごととは?
「保護猫との暮らし」や「育児と仕事の両立のコツ」についてもお話を伺いました。
きっかけは友人と、双子の妊娠
「もしもヘルプ手帳」は、飼い主さんのもしもに備えてペットの情報を記録しておく手帳。いわば、
ペットのための母子手帳です。
かかりつけの動物病院やワクチン履歴、ごはんの回数や性格など、何かあったときにこれさえ見ればペットを安心して引き継ぐことができます。
きっかけは1人暮らしで猫を飼っていた友人。
“病気や災害などで突然自分が家に帰れなくなったら、誰がこの子の面倒をみてくれるんだろう…”
…そんな不安の声からでした。
「最初は友人からの相談を受けて、
“もしも私に何かあったら猫を気にかけてあげてください”というメッセージ入りのスマホの待ち受け画像をネットで無料配布したんです。そうしたら予想以上にたくさんの方が賛同してくれて。
緊急時にペットがいることを意思表示する必要性を強く感じたんです。
それからわたし自身が双子を妊娠し、母子手帳を書いていたときに
“あの子たち(2匹の愛猫)の分がないのは不自然だな”と思い、
猫用の母子手帳『ねこヘルプ手帳』が生まれました」(オキさん)
手帳を開くと、緊急連絡先や、かかりつけ動物病院の連絡先、猫のプロフィールなど、引き継ぎに必要とする情報がすべて書けるようになっています
SNSや口コミでの告知のみだったのにも関わらず、予約の時点で初版は完売。何度目かの増刷を繰り返すほど、反響をよんでいます。
また、猫用以外のペットにも欲しいという声が多く寄せられ、いまでは犬用の
「いぬヘルプ手帳」、犬猫以外の動物・エキゾチックアニマル全般用の
「どうぶつヘルプ手帳」の3種類が販売されています。
もしもヘルプ手帳(カバー付き)
各1,056円(税込)※送料別
商品詳細 >>
「たくさんの反響があり、それだけ多くの人が
必要としていることを実感しました。これからの時代は、ペットと暮らしていることを周りの人に知らせることや、
“私がもしものときはこうして欲しい”という意思表示をすることが、最低限のマナーや新常識になって欲しい。
そのために動物病院やペットショップに置いてもらうなど、まだまだできることはたくさんあると感じています」(オキさん)
手帳だけでなく、ポストやスマホなどにつけられる
「ステッカー」や車につけられる
「マグネット」も制作・販売され、昨年12月にはバッグなどに付けて簡単に持ち運べる
「どうぶつヘルプカード」も誕生しました。
ステッカー
マグネット
家にいますシリーズ ステッカー
各495円(税込)、マグネット 各990円(税込) ※送料別
商品詳細 >>
どうぶつヘルプカード
各 2,178円(税込)※送料別
商品詳細 >>
自然な流れで起業
2022年10月には個人事業主から法人化、今後はペットを救うための活動をさらに広げていくのだそう。
ECショップ「Helmo」の愛らしいロゴもオキさんのデザイン
1歳未満の双子と長女の3人の育児をしながら会社の代表になると聞くと、さぞかしガツガツと野心を燃やしているのかと思いきや、取材中もご本人はいたってマイペースで穏やか。
ふたり仲良く添い寝
「考える間もなくどんどん勝手に進んでいっているような感じです。宣伝費をかけたわけではないんですが、手帳を買ってくれた方が『かかりつけの動物病院に聞いたら、ポスターを貼ってもいいっていってくれましたよ!』とか、自発的に動いてくれて。
ツイッターなどでこういうのはどうかと発信すると、フォロワーさんがどんどんアイデアや意見をくれて、ブラッシュアップしていけたり。
とにかくみなさんハートフルで良い方ばかりで、本当にありがたいですね。わたしひとりではとてもできませんでした」(オキさん)
ひとりで取り組もうとすると難しく感じる問題も、
みんなが小さな力を持ち寄って協力すれば、それが解決の大きな糸口となることもあります。
寄付もそのひとつ。
「もしもヘルプ手帳」の売り上げは、1冊につき50円が公財日本動物愛護協会に寄付され、
動物の殺処分を減らす運動に使われています。オキさんの愛猫であるしらすちゃんとおこめちゃんの2匹も、もとは
保護猫でした。
「じつはわたし自身が猫と暮らしたいとなったときに、ペットショップしか頭に思い浮かばなかったんです。考えてみたら実家の愛猫も捨て猫の子どもを引き取ったので保護猫だったんですが、知識がなかったために友人にいわれるまで選択肢に挙がらなかった。
だからこそ、保護猫を知らない方に選択肢を渡したいという想いで、『ねこ活』(KADOKAWA)(
https://nancoco.net/nekokatsu/)というコミックエッセイを書きました」(オキさん)
ねこ活では愛猫しらすちゃんとの出会いや、全国の里親さんから寄せられた実際のエピソードについてなど、
保護猫と暮らすまでのリアルなストーリーが描かれています。
仕事も育児も家族の協力はマスト
いまでは2匹目の保護猫おこめちゃんも家族の一員となり、幼い子ども3人と賑やかな毎日を送っているオキさん。
取材中も生後9か月の双子のひとりをおんぶしながら対応してくださいました(もうひとりは在宅勤務中の旦那さんが別室で見ているそう)。
仕事と育児はどのように両立しているのでしょう。
きょうだい仲良く集合。左下:おこめちゃん 中央:しらすちゃん
「
一に協力、二に協力といった感じで、
家族の協力は欠かせません。わたしの実家が近くにあるので頼りっぱなしですし、夫も出張が多い仕事だったのですが、双子の妊娠をきっかけに泊まりの少ない仕事に転職しました。
わたしもイラストレーターの仕事はすべて受けるのではなく今の活動につながる仕事に絞るなど、
家族全員で働き方を変えたのは大きいですね。とくに双子を妊娠してからは
必然的に家族の結束が強くなりました」(オキさん)
忙しい合間も癒しとなるのは、
愛猫の存在。最近は寝ている双子ちゃんのほっぺにしらすちゃんとおこめちゃんがスリスリと寄っていくなど、本当に仲良し。
とくにおこめちゃんの様子を見ていると“もしかしたらおこめは赤ちゃんを産んだことがあるのかな?”と感じることもあるのだとか。
赤ちゃんをやさしく見つめる2匹
双子の子守りはまかせてニャ
オキさんが双子の妊娠に気づいたのも、普段は寝ているときに枕元に寄ってくる2匹がお腹の上に乗ってきたことがきっかけで
“もしかして、お腹の病気?”と気になり、調べたことで判明したそう。目に見えない変化にも敏感に気づいて寄り添ってくれるのは、まぎれもなく
家族そのものです。
今後はヘルプ手帳のリフィル式仕様のものやQRコードがついた首輪など、さらに進化した
ペットのもしもに備えたグッズを制作予定とのこと。
仕事も育児も家族一丸となって自然体で自分らしく進んでいくオキさんの活動が今後も楽しみです。
ペットのための母子手帳
「Helmo」もしもヘルプ手帳を見る
取材・文:佐々木彩子
取材協力:オキエイコ
いぬねこ うちのこ。