【考察】岡田将生の表情がとてもいい 定番の設定でありながらも…『田鎖ブラザーズ』第2話
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2026年4月スタートのテレビドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
主人公が何らかの過去の犯罪の被害者であったり、被害者家族であるクライムサスペンスは珍しくはない。定番の設定だ。
その過去の事件と、現在の事件が交差しながらドラマが進行するのも、見飽きることなく序盤から最後まで視聴者を引っ張るために定番中の定番だ。
『田鎖ブラザーズ』(TBS系)は、その定番の設定ではあるけれど、視聴者として見える風景が少し違う。
主人公の田鎖真(岡田将生)と弟の田鎖稔(染谷将太)。2人が被害者家族として生きてきた時間の長さ、密度の描写がとにかくみっちりと濃い。
被害者家族として生きる兄弟2人の、怒りも絶望も諦めも、すべて単色ではなくて複雑な色として混じり合っている。
その複雑な色味が、人が突然犯罪という不条理に遭遇した後の人生の重苦しさを私たちに感じさせてくれるのである。
『罪のあと』が描かれる田鎖ブラザーズ
兄は神奈川県警の刑事。弟は同じく神奈川県警の検死官。
兄弟の両親は幼い頃に何者かによって殺害され、事件は時効によって未解決のまま捜査が終結していた。
そのタイムリミットは殺人事件の時効が廃止される法律施行の僅か二日前。
そのたった二日で区切られた境界線に、兄弟は深く絶望しながらもいまだに両親を殺した犯人を捜しつづけていた。
加害者、被害者、ともに『罪のあと』をどう生きるか。
2話を見終えて、初回から続いていた身元不明の変死事件の決着とともに、罪のその後について考えさせられた。
1人の少年の自殺に対して、名前や職業を変えて逃げおおせようとする加害者たち・復讐に走る父親・死んだ兄を弱かったのだと断じて苦しみを乗り越えようとする弟。
描き方として興味深く感じたのは、やはり弟である野上光樹(吉田奏佑)の描き方で、兄・大樹(本多陽登)の死から壊れていく家族を見つめる思春期の少年の痛みを丁寧に捉えていると思う。その光樹に対して、稔は同じ兄弟の弟として、兄を愛せない苦しみを思いやり、独自に大樹の死亡時の状況を調査し始める。
結果的にそれが大樹の死はおそらく自殺ではないという可能性を炙り出すが、それは同時に父親・野上昌也(近藤公園)の復讐の意味を問い直すものになってしまった。
その複雑な状況に対して、真が光樹に告げた言葉が印象に強く残る。
「それでも真実は誰にも分からない。親父の愛か、強い兄貴か。お前が生きやすい方を選べ。それが真実だ」
この先、兄が早逝した悲しみと、犯罪者として裁かれる父を抱えて生きていく少年に対して、突き放しているようでもあり励ましているようでもある。
それは犯人も理由も分からずに両親を奪われ、社会と自分に対してあてのない問いを何千回何万回と繰り返した男だからこそ、心の奥底から絞り出せる言葉なのだと思う。
そして真のこの言葉は、野上家にこのさき影を落とす『罪のあと』の果てしなく長い時間を予感させる。
まだ青年とは呼べないくらいの少年に、それを告げる岡田将生の表情がとてもいい。
微笑未満。
ごくわずかな温かさを滲ませた表情に、さすがだと見惚れた。
今回、質屋兼情報屋の足利晴子(井川遥)が、田鎖夫婦の殺害時に逃げる犯人に斬りかかられた少女だったということが明らかになる。
晴子もまた、『罪のあと』の長い時間に囚われて生きる人間だった。
あの時、あの場所にいなければ。あるいは自分がもっと犯人の姿を鮮明に覚えていれば。
もっと平穏に、楽に生きられたはずの人生について、晴子は田鎖兄弟と互いに支えあい、そして縛りあっている。とりわけ弟の稔とは互いに複雑な感情があるようだ。
まだドラマは序盤、丁寧に紡がれていく今作の行方をじっくりと見守りたい。
[文/かな構成/grape編集部]