2020年4月28日 04:26
初夏の訪れを美しく告げてくれる『小判』のような山吹の花
こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。
ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。
山吹の花を見るたびに…。
春は桜や桃のようにピンク系の花が多いように思いますが、黄色の花も結構ありますね。タンポポ、チューリップ、マリーゴールド、そして山吹…。山吹は拙宅にもありますが、この黄色の花が咲く度に、太田道灌の山吹の逸話を思い浮べています。
太田道灌(おおたどうかん)は、江戸城を築城した武将であると知られていますが、七重八重の 山吹の花の方がもしかしてより知られているかもしれませんね。
「太田道灌」の騎馬像
太田道灌が 或る日、鷹狩りに出かけた所、激しい俄か雨に出会い、近くのみすぼらしい農家に立ち寄り、雨を凌ぐ蓑(みの)を貸してほしいと頼みました。
出てきた少女が、黙って差し出したのが蓑ではなく、山吹の花一輪でした。道灌は 花ではなく蓑だと怒って帰ったのですが、少女が、蓑1つ無い悲しさを、山吹が実(蓑)をつけない花であることを、和歌に譬えて差し出したことを 道灌はあとで知り、己の不明を恥じて この日より歌道に精進し、武将でありながら歌道通になったと伝えられています。