その日感じたことを五行詩に 新しい扉を開く鍵になる
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
五行詩の中の宇宙
雪が
降っていて
手鏡を
そっと差し出す
母がいて
「点滴ポール生きるという旗印」岩崎航(ナナロク社)ーより引用
これは筋ジストロフィーを患い、人工呼吸器をつけながら詩人として活動する岩崎航さんの五行詩です。
たった21文字の言葉の中に、岩崎さんと母の人生がある。この詩に出会ったとき私は言葉の持つ可能性に打ちのめされた。言葉の奥にある『宇宙』を感じたのです。
宇宙というと大袈裟に聞こえるかもしれません。果てしなさとでもいうのでしょうか。人の心の深淵を見たような感慨があったのです。
詩を解説するのは無意味なことです。
ただこの詩を何度も読み、心に湧き起こる自分の感覚や感情を味わうことで、私たちは自分の心の深淵へと入っていくことができるのです。