2020年12月21日 11:00
“アイヌ”告白は生死かけた決意…宇梶静江語る解放運動の覚悟
宇梶静江さん(87)は、詩人で、アイヌの解放運動の先駆者であり、俳優・宇梶剛士さん(58)の母でもある。
生まれ育った北海道浦河郡では、道を歩けばはやしたてられ犬をけしかけられ、まともに学校にも行けなかった。23歳で東京に出て、アイヌ開放活動を始めてから四半世紀の間、手ごたえを得られずに苦悩していたとき、目の前に現れた「古布絵」。それは天啓だったーー。
上京後は、喫茶店のウエートレスをしながら、定時制高校に通った宇梶さん。青春を謳歌しながら、どこかでこんなふうに考えていた。
「もう、アイヌのことなんて忘れてしまおう」
一目で同胞とわかる人とすれ違うことが何度もあった。でも、互いに目をそらすのが常だった。
そして、差別のなかった夫と結婚。子宝にも恵まれる。
平穏に暮らしながら、でも、静江さんのなかで「何かが違う」という違和感が募っていた。その後、「浦川恵麻」のペンネームで詩を書き始めた。
「でも、内心では忸怩たる思いもあって結局ね、アイヌの詩を書けないわけ。アイヌを表現したいのに、『アイヌだ!』と言われてしまうのが怖くて書けない。そんな自分が許せなかった」
35歳になったある日、静江さんは激しい頭痛とめまいに襲われる。