世界最高齢アプリ開発者・若宮正子さん(88歳)銀行員時代はそろばんができない「お荷物」行員だった
そんな彼女にはもう一つ“空気を読まない”エピソードがある。
「銀行員だったころの楽しみのひとつが海外旅行。当時は有給休暇を使い切る人は珍しかったのですが、私は有給休暇をばっちり取って、ひとり気ままな旅をしていました。その分、仕事をしているときは、人を自分と比べることも、他人のことを気にかける暇も惜しんで仕事にのめり込んでいましたけどね。そんな私を周囲は面白がってくれたのでしょう」
若宮さんは、定年の60歳まで銀行を勤め上げ、さらに子会社で嘱託社員として62歳まで働いた。
■私は“不良”介護人だから、母の介護で家にこもっている間にパソコンにはまった
退職する数年前、当時90歳近かった母・鶯子枝さんに認知症の症状があらわれ始めた。父を早くに亡くした若宮さんはずっと母とふたり暮らしだった。
「いつもの通勤電車が事故で遅れたので、『2時間ぐらい帰りが遅くなる』と母に電話を入れました。
でも、家に着くと母がいない。近所を捜しまわっても見つからない。困り果てて警察に駆け込むと、母は自宅から4キロ離れた場所で保護されていました。『娘が死んじゃった』と泣いていたそうです。退職したらなるべく家にいないといけないなと思いました」