「理解に苦しみます」池松壮亮の主演ドラマが係争中のまま映画公開へ…NHKを名誉毀損で訴える原告遺族が語った“深い憤り”
池松壮亮(写真:本誌写真部)
6月1日、昨年8月に放送された池松壮亮(35)が主演を務めるNHKスペシャル『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』のドラマパートが映画化され、7月31日に公開されることが分かった。
政治家でもある作家・猪瀬直樹氏(79)の著書『昭和16年夏の敗戦』(1983年刊)を原案とし、終戦80年の関連作品として制作された『シミュレーション』。ドキュメンタリーとドラマパートで構成されており、首相直轄の研究機関・総力戦研究所を舞台とし、真珠湾攻撃の前に日本の敗戦を予測していたものの、開戦を止めることができなかった人々が描かれている。同ドラマにシーンを追加し、再構成した完全版として、『開戦前夜』のタイトルとなる。
開戦回避を主張する同研究所の研究員・宇治田洋一を演じている池松。同映画の公式サイトには、《はじめて今作の脚本を読ませていただいた時、知らなかった戦前の敗北の歴史を知り、脈が乱れ、息が詰まり、涙が止まりませんでした。どうかたくさんの方にこの映画が届いてくれることを願っています》とコメントを寄せていた。
昨年11月、本誌はこの作品に関するトラブルを報じている。
登場人物のモデルとされる陸軍中将の飯村穣さん(1888~1976)の孫にあたる元外交官で国際政治アナリストの飯村豊さん(79)が、「祖父が卑劣な人間に描かれ、名誉を毀損している」としてNHKに抗議していたのだ。
「飯村穣さんは総力戦研究所の初代所長を務めていた人物で、作中では國村隼さんが演じている板倉大道陸軍少将のモデルとされています。史実では研究所内で自由闊達な議論を推奨したとされているのに対し、日米が開戦した場合のシミュレーションの結論を覆そうとする抑圧的な人物として描写されていたのです。
これにより飯村豊さんは抗議の記者会見を開き、放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てを行っていました」(全国紙文化部記者)
当時、本誌の取材に飯村さんは「実際にドラマを拝見しましたが、”これはひどいな”と思いました。池松さんのような立派な俳優さんを起用していながら、歴史認識の誤った番組はとても看過できるものではありません」と答えていた。
「飯村さんは、昨年12月に『祖父の名誉が傷つけられた』として、NHKや映画監督、制作会社を相手どり550万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こし、2026年2月には第一回口頭弁論が開かれました。7月22日には第3回が予定されています」(前出・全国紙文化部記者)
映画化が発表された翌日、本誌は再び飯村さんに話を聞いた。
「昨年8月に今回のドラマが放送される直前から私は制作陣と話し合いを行い、当時から映画化の話も聞いていました。
そのあとも何回にもわたってNHK並びに制作会社とお話してきて、ずっと“映画化は納得できない”と申し上げてきたのです。
そういった話し合いにも関わらず、納得した回答がなかったためテレビ版ドラマについて名誉棄損で訴えを起こしたわけですが、その係争中にも関わらず映画公開を強行しようとしていることに対して、被害者である私は深い憤りと怒りを感じています」
その後、映画化を強行するような”行為”も――。
「私の妻が5月にフランスで開催された第79回カンヌ国際映画祭併設映画見本市『マルシェ・デュ・フィルム』に行ったところ、『The Secret Battlefield』という英題が付けられた『開戦前夜』のポスターを見つけたのです。それにははっきりと“インターナショナルセールス”と出ていました。
まさに日本で係争中のさなかに海外で映画版を売り込もうとしていることに対して驚きを隠せませんし、到底、看過できるものではないと思っております」
本作の公式サイトでは、今回の映画公開決定の発表に際し、製作委員会による声明が発表されており、NHKドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』が係争中であることを認めたうえで、《しかし、本作によって特定の個人を糾弾したり、名誉を毀損したりする意図は全くなく、私たちの主張の法的正当性は裁判において認められるものと強く確信しております》と主張。
また映画では誤解が生じないために、ドラマと同様にテロップの明示などの適切な対応を行っていくとも綴られている。飯村さんが胸中を明かす。
「NHKサイドは裁判で証明されるといっておられるようですが、祖父をモデルにしておいて、“あくまで架空の人物”と言い張っているところは理解に苦しみます。
歴史を扱うに当たってはもう少し誠実で あって欲しいのです。昭和16年夏に総力戦研究所の所長としてシミュレーションを実施した のは祖父飯村穣であることは歴史的事実。一方で近衛首相や、東條陸相などは実名のままで、陸軍の高官で飯村穣のみは仮名にして、人格や歴史的役割を捏造するのはあまりに無理があります。
私は、NHKスペシャルの番組が放映された後、ネットで視聴者の反応をフォローしていましたが、このような制作態度に批判的な一般視聴者も多くいました。
制作サイドは、物語をおもしろくするために改悪したのかもしれませんが、今回の映画を公開することによって誤った歴史認識を日本人に教えることになる。これを私は不安に思っています」
映画公開までまだまだ波乱含みとなりそうだ。