イスラエル企業に“1600億円”巨額支援…「ガザでの行為を肯定するのか」公金注入に市民から疑問の声

女性自身
イスラエル企業に“1600億円”巨額支援…「ガザでの行為を肯定するのか」公金注入に市民から疑問の声

安倍政権下の2017年には「日・イスラエル投資協定」を締結。両国は経済的な結びつきを強くしてきたが……(写真:共同通信)



「なぜ、いまイスラエル企業に1600億円もの公金を投じるのでしょうか」

そう疑問を投げかけるのは、「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」(以下、卒業生の会)の平山貴盛さんだ。

経済産業省は7月、イスラエルの半導体大手・タワーセミコンダクター社が、富山県魚津市と新潟県妙高市の既存工場で進める半導体の増産計画に、最大約1600億円を支援すると発表した。総事業規模は6000億円を超える。

政府は、AIなどの普及で需要が高まる半導体を国内で安定的に確保する“経済安全保障”が目的だとしている。しかし平山さんは、こう指摘する。

「同社は、電子機器などに使われる半導体だけを手がけているわけではありません。米国防総省の認定を受けた製造拠点を持ち、軍事・防衛分野にも半導体を供給する企業なんです」

つまり同社は、民生分野だけでなく、軍事・防衛分野にも事業を展開する半導体メーカーなのだ。

しかも、イスラエルによるガザへの攻撃はいまなお続いている。
SNS上では《虐殺に加担するつもりか》《被災した熊本県民には10万円の貸し付けなのに、イスラエルには1600億円も献上するのか》など、政府の決定に批判の声が上がっている。

一方、巨額投資を受ける地元自治体は歓迎ムードだ。

新潟県の花角英世知事(68)は「地域経済の活性化につながる期待の投資」と評価。富山県の新田八朗知事(67)も「富山の産業振興にとって歴史的な転機となりうる」と期待を寄せている。

そんななか、平山さんが代表を務める「卒業生の会」や、イスラエル企業への公金投入に反対する「BDS Japan Bulletin」や「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)」など4団体は8月5日、経産省前で抗議し、赤澤亮正経産相(65)宛てに支援撤回を求める要請書を提出した。

この抗議にも参加した平山さんは、今回の支援の何が問題なのか改めて語る。

「民間企業が独自に投資するのであれば、ある程度は企業の自由でしょう。でも今回は“公金”です。
イスラエル企業にこれだけの資金を投じることは、いまイスラエルがやっていることを『問題視しなくてもいい』と、お墨付きを与えることになりかねません」
■ガザだけではない西岸では入植者による暴力も

2023年10月以降、ガザでは女性や子どもを含む7万人を超えるパレスチナ人が殺害されたという(ガザ保健当局などの発表による)。さらにヨルダン川西岸でも、イスラエル人入植者によるパレスチナ住民への暴力が相次ぎ、国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、今年8月4~10日のわずか1週間でも、死傷者や物的被害を伴う入植者による襲撃は38件。住民への暴行や住宅への放火、農地からの追い出し、オリーブの木の破壊など、非人道的な行為が繰り返されている。

こうした状況で日本政府がイスラエル企業に巨額の公金を投入することについて、平山さんは日本政府の“ダブルスタンダード”を指摘する。

「日本政府はウクライナ侵攻を受けてロシアに制裁を科し、『力による現状変更を許してはならない』と言ってきました。ところが、ガザや西岸でこれだけのことが起きても、イスラエルには『人道状況を懸念する』という程度で、なおかつ大規模な投資も止めない。あまりにも露骨なダブルスタンダードを続ければ、日本が守ると言ってきた国際秩序そのものへの信頼も壊してしまいます」

■伊藤忠、イスラエル製ドローン……市民の抗議で変わった例も

では、市民が声を上げることで、本当に政府や企業を動かすことができるのだろうか。

平山さんが挙げるのが、これまでの二つの成功事例だ。


「伊藤忠商事の子会社『伊藤忠アビエーション』は2023年、イスラエルの軍事企業『エルビット・システムズ』と協力覚書を締結しました。これに対して、BDS Japan Bulletinは、伊藤忠傘下のファミリーマートのプライベートブランド『ファミマル』などの不買を呼びかけました。こうした運動も奏功したのか、伊藤忠側は2024年2月、エルビットとの協力関係を終了すると発表したんです」

もう一つ成果を挙げたのが、平山さんたち「卒業生の会」が主となって取り組んでいる防防衛省によるイスラエル製攻撃型ドローン導入への反対運動だ。

「私たちは複数の市民団体で、防衛省に対してイスラエル製を購入しないよう訴え続けていました。その結果、今年2月の入札では、それまで候補に挙がっていたイスラエル製は参加せず、オーストラリア製が落札されました」

平山さんらは、今後の攻撃型ドローンの調達でもイスラエル製を選ばないよう、防衛省への働きかけを続けている。■「遠い国の話」ではない

今回の1600億円はすでに支出が決定しているという。では、いまから声を上げても遅いのではないか――。

「助成の条件の一つに『10年間の事業継続』があります。
市民社会の反発によって事業を継続困難に追い込めば、助成を取り消すこと不可能ではないでしょう」

そして平山さんは、ガザで起きていることを「遠い国の出来事」として見過ごすことは、日本の安全保障にも跳ね返ってくると指摘する。

「『強い者が勝てばいい』『力でねじ伏せればルールなんてどうにでもなる』という価値観がまかり通れば、それは日本の安全保障も脅かします。そういう世界で生き残れるのは、力の強い国だけです」

つまり、今回の1600億円だけの問題ではない、ということだ。

「ここで『イスラエル企業との取引にはリスクがある』と政府や自治体、企業に認識させることができれば、これからイスラエル企業を誘致しようとする自治体への牽制にもなります。粘り強く市民が声を上げる意味は、そこにもあると思います」

私たちの税金を、どこに何のために使うのか。その選択もまた、決して戦争と無関係ではない。

提供元の記事

提供:

女性自身

この記事のキーワード