「むしろ核攻撃されるリスクが高まる」高市政権で浮上する非核三原則“見直し”に専門家が警告

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「むしろ核攻撃されるリスクが高まる」高市政権で浮上する非核三原則“見直し”に専門家が警告

非核三原則を今後も堅持するかについては明言しなかった高市首相(写真:本誌写真部)



「戦争の惨禍を二度と繰り返させない――」

81年目の終戦の日となった8月15日、全国戦没者追悼式で高市早苗首相(65)はそう述べた。これまで、高市首相が敬愛する安倍晋三元首相をはじめ、歴代首相が「繰り返さない」と言ってきた追悼式でのスピーチ。だが、今年、高市首相が選んだのは「繰り返“させ”ない」という言葉だった。また、石破茂前首相(69)が昨年、13年ぶりに用いた「反省」や「不戦に対する誓い」という言葉もなかった。

いま高市政権をめぐって議論となっているのが、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする「非核三原則」の見直しだ。

「8月6日の広島平和記念式典で、高市首相は『核兵器のない世界』の実現を掲げました。ところが、その後の記者会見で、非核三原則を今後も維持するのかを問われると、『予断を持って申し上げることは控える』と発言。政府・与党内でも、『持ち込ませず』の見直しや、米国の核兵器を共同運用する『核共有』を検討すべきだとの声が上がるなど、非核三原則の見直しに向けた動きが強まっているのです」(全国紙記者)

■「核を持ち込めば、むしろ攻撃対象になるリスクが高まる」

中国、ロシア、北朝鮮という核保有国に囲まれる日本。
「米国の核兵器を日本に持ち込めば、相手も簡単には攻撃できない」という“核抑止論”は、一見すると現実的にも聞こえる。

しかし、国際政治学者で青山学院大学名誉教授の羽場久美子氏は、「むしろ逆です」と警告する。

「核保有国のなかには、NPT(核兵器不拡散条約)を順守する非核兵器国に対し、核兵器を使用したり、使用を威嚇したりしないという“消極的安全保証”を表明している国があります」

羽場氏は、日本が米国の核兵器を受け入れれば、こうした「非核兵器国」としての立場にも影響を及ぼしかねないと指摘する。

「日本は現在、NPT上の非核兵器国であり、非核三原則も掲げています。しかし、アメリカの核兵器を日本に持ち込み、米国の核戦略を担う拠点だと相手国から認識されれば、日本の軍事的な位置づけは大きく変わります。『核を置けば抑止力が高まる』というより、むしろ“攻撃対象”として見られるリスクを高めることになるのです」
つまり、核の持ち込みは「抑止力」を高めるどころか、中国やロシア、北朝鮮から軍事的な標的とみなされるリスクを高めかねないというのだ。

一方、意外なのは、日本政府が「脅威」とみなす中国が、核兵器の先制不使用を強く主張していることだ。

「今年4月から5月にニューヨークで開かれたNPT再検討会議でも、中国は『核兵器の先制不使用』や、『非核国への核使用を行わない』ことを最終文書に盛り込むよう強く求めました。
一方、アメリカやイギリスは核兵器の先制使用を抑止力として主張し、中国の2点を最終文書から削除するよう強く要求しました。

さらにアメリカは『中東の非核地帯宣言構想』にも強く異を唱え、これを削除させました。結局、同会議では核軍縮や中東非核地帯の問題などをめぐって各国の意見がまとまらず、最終文書は採択されなかったのです」

■中国、ロシア、北朝鮮を相手に太刀打ちできるのか……

しかし、近年の世界情勢を見れば、「核を持たない国には核を使わない」という考え方が、本当に守られるのかという不安もある。だからこそ、「核持ち込み」の議論が出ているのだろう。

これに対し羽場氏は、「核の傘の有効性」に疑問を呈す。

「ドナルド・トランプ大統領(80)は、欧州にも日本にも『自分の国は自分で守れ』と言っています。欧州はNATOを軸に地域全体で安全保障を構築しようとしているのに対し、日本は一国で中国、ロシア、北朝鮮という核保有国に向き合うことになる。日本が核を持ち込むことによって、逆に3国から攻撃される口実を与えてしまう。
この3カ国を相手に軍事的に太刀打ちできるでしょうか。私は現実的ではないと思います。」

だからこそ必要なのは、「責められる口実を与えないこと」。

「一度戦争を始めれば、終わらせることは非常に難しい。そして犠牲になるのは国家ではなく、そこで暮らす国民、とくに若者なのです」

■「戦争をしにくい環境をつくることも安全保障」

では、戦争を起こさせないために何ができるのか。羽場氏が重視する一つが、周辺国との経済関係だ。

「特に中国は日本にとって貿易の4分の1を占める重要な貿易相手国です。経済や貿易を通じて関係を安定させ、お互いに戦争をすれば損をする関係をつくる。相手に敵対感情を抱かせず、戦争をしにくい環境をつくることも安全保障なんです」
もう一つの具体策として挙げるのが、「非核自治体」を広げることだ。


「日本ではすでに1740の自治体が『非核自治体宣言』をしています。さらに、広島、長崎の呼びかけで始まった、核兵器廃絶を求める『平和首長会議』には、世界で8589の自治体が参加しています。日本が1740自治体、イランが1017、ドイツが927です」

国同士の交渉だけに頼らず、自治体から「核兵器を持ち込ませない地域」を広げていく。それが、核兵器を使わせない環境づくりにつながるという。

「国レベルでできないのであれば、自治体から始めればいい。非核自治体を日本だけでなく、東アジア、そして世界に広げていく。さらに都市と都市が交流し、経済的にも結びついて、『ここには核を持ち込まない』『お互いに戦争をしない』という地域を増やしていくことが重要です。中東は、イランも含め、すでに非核地帯化を進めようとしています」

逆に、日本政府が米国の核兵器の持ち込みを認めれば、こうした取り組みとの矛盾も生じると羽場氏は指摘する。


「核兵器を持って相手を威嚇するのではなく、核兵器を使えない、使わせない地域を広げていく。日本は被爆国だからこそ、その流れを世界に広げる役割を担えると思います。それが日本にとって一番の安全保障になるのではないでしょうか」

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