愛あるセレクトをしたいママのみかた

伊野尾慧が語る“人生の別れ道” 四畳半で描く無限の選択肢

ぴあ
伊野尾慧が語る“人生の別れ道” 四畳半で描く無限の選択肢

(撮影/堺優史)



今年はドラマ『50分間の恋人』でラブコメディに挑戦するなど、役者としての活動も精力的な伊野尾慧。5月17日からは新国立劇場 中劇場でヨーロッパ企画の上田誠が脚本・演出する舞台『四畳半神話大系』に主演する。伊野尾にとって約2年ぶりとなるステージで演じるのは、バラ色のキャンパスライフを想像していたものの、冴えない大学生活を送る主人公。自身の大学時代を振り返り、役どころに歩みよろうとする伊野尾の今作に懸ける想いに迫った。

腐れ大学生ぶりは、周りとのやりとりで生まれるのかな


京都の“腐れ大学生”が同時に生きる平行世界が描かれる森見登美彦の「四畳半神話大系」をヨーロッパ企画の上田誠の脚本・演出で舞台化。主人公の冴えない大学生「私」を演じるのが伊野尾慧だ。初めてミュージカルに挑戦した『ハネムーン・イン・ベガス』から2年ぶりの舞台出演に心躍らせる。

「お芝居だけの舞台は久しぶりですし、ヨーロッパ企画の上田さんの舞台に出られるということで、ワクワクしますね。
原作の森見さんの独特な世界観を表現することが楽しみであり、難しいところになりそうです。アニメも観ていますが、スピード感と力強さがあるところが魅力に感じました。原作本がアニメになり、今度は舞台で体験できる作品になりますが、自分も参加できることが光栄です」

脚本・演出を手掛ける上田とは、伊野尾がヨーロッパ企画の舞台を観劇した際に話をする機会があったという。

「舞台を観た後に皆で食事に行ったんですが、僕は人見知りなんで、そんなにはお話できてないんですよね。だから稽古に入って、上田さんの考え方やモノ作りを間近で見られるのは、嬉しいです。上田さんが僕のことを『その涼やかな外見の中に煩悩や邪悪や面白をたくさん渦巻かせていそうな人』と最初のリリースでコメントしてくれていたんですが、そんな印象があるんですかね? でも、やっぱり年を重ねてくると余計なことばっかり気になっちゃって、邪悪さや煩悩には確かにまみれていっていると思う(笑)。僕が初めて舞台やった時の演出家さんは、煩悩や邪悪にまみれているっていうコメントはなかったですからね」
原作の森見登美彦は、伊野尾について、「一見、腐れ大学生にはまったく見えません。少なくとも私の大学時代、こんな素敵な学生はまわりに一人もいませんでした。
だからこそ、どんな工夫をされるのか、楽しみしています」とコメントしているが、そのことについて聞いてみると笑顔を覗かせる。

「いや~、ありがたいことですよ。『腐れ大学生に見えない』って言っていただいて。35歳にもなって、腐れ大学生に見えていたら、もう終わりだもん(笑)。腐れ大学生ぶりは、周りとのやりとりで生まれるところもあるのかな。『私』を取り巻く人々は、結構、濃いキャラクターが多いから、そこに乗っかりつつ、バランスをとりつつ、演じたいですね」

サークルの勧誘が怖くて、勧誘される道を通らなかった

伊野尾慧が語る“人生の別れ道” 四畳半で描く無限の選択肢


物語は、複数の平行世界を行き来する、おかしくもほろ苦い青春ストーリー。四畳半でくり広げられる世界は一体どんなものなのだろうか。タイムリープものが好きだという伊野尾にその理由を聞いてみると……。


「映画やアニメでタイムリープものの作品ってたくさんありますよね。状況を打破するためにタイムリープするみたいな話は面白いなと思います。『四畳半神話大系』においてのタイムリープは、またちょっと違っていて。人生において、大学生の時の選択肢って、結構無限に広がっているじゃないですか。選択ひとつで、何か変わるようで変わってなかったりするんだけど、選択の可能性って無限にあるというところが描かれます。アニメや映画だと分かりやすく表現できますけど、舞台でタイムリープをどうやって表現するのか楽しみなところ。ちょっとサイケデリックな映像になるんじゃないかな」

伊野尾が演じる「私」は、バラ色のキャンパスライフを想像していたものの、現実は上手く行かずに悶々としている冴えない大学3年生。むっつりと畳の上に座り、妄想や他責思考や自省を語るようなユニークな役どころだ。


「僕はアニメを見てしまっているから、アニメの『私』に結構引っ張られてしまいそうな気もしますけど。『私』というキャラクターは、自分の理念はありながら、やりたいことを行動に移せているようで、移せない部分があって、悶々としているんですよね。頭でっかちで、思考や妄想でグルグルしている人なのかな。その辺りを上手く表現できたらいいなと思います」

「私」はプライドが高く、臆病な性格だ。一回生の時、サークル選びを誤り、くすぶった生活を送っている。キャンパス生活を謳歌する学生たちを羨ましく思っている。青さ全開の役どころだが、伊野尾にとってはどこか懐かしささえ感じられる設定だ。

「バラ色の大学生活って、サークルで楽しんでいる大学生のことだよなって思ったことはありましたね。
実際は、サークルの勧誘が怖くて、勧誘される道を通らなかったので、サークルに入らなかったですけど。サークルでいろんな人と交流して、立場や環境の違う人とコミュニケーションを取ることって、すごく大事なことだとおもいます。僕の学生時代は、周りは学生だけど、僕だけひとり芸能活動をしていて、社会人でもあったので、皆とはちょっと違う風に見られることが多くて。人とのコミュニケーションからちょっと逃げてしまっていたけれど、今考えるともっと普通の大学生として楽しんでも良かったのかなって。ちょっともったいないことをしたかな(笑)」

どのコミュニティに属するかで、人生が変わる気がします


「私」はもちろん、学生時代に誰しも抱えていた悩みには共感できるという伊野尾。自らの過去を振り返りながら、話してくれた。

「大人になって改めて学生時代を振り返ってみると、あの頃が人生の分かれ道だったな、と。人生の選択は無限にありますし、可能性っていうのは多岐に広がっているわけですからね。
あと、どこのサークルに入るかによって、交友関係が変わりますよね。交友関係が変わると、やっぱり自分の人間性っていうのが変わってくるもの。大学は小さなコミュニティがいっぱいあるから、その中のどのコミュニティに属するかで、意外と人生が変わる気がしますね。僕の場合は、大学4年生の時に、自分で決めて研究室に入ったんですけど、違う研究室に入っていたら、また違う未来があったのかなと思います」

大学生時代の経験をふまえて、今回の役作りに活かせるなと思うところはという質問には、四畳半に佇む役どころと自分を重ねて、意外にもリンクしていることが判明。

「『私』がボロアパートの4畳半の中で生きているのと、僕が大学4年生の時に研究室に配属して、研究室に入り浸ってたところはちょっと似てる気がするんですよ。僕にとっては、その場所が大学の全てみたいな感覚だったんですよね。それが意外と居心地が良かったな。大学4年間で4年の1年間がいちばん楽しかったから、もうちょっと学生をやろうかと思って、大学院まで進学したんです。
4畳半を神話的に捉えてる感覚と、大学の研究室を神話的に捉えてる感覚は、もしかしたら一緒かも!? 研究室ではなんだかよく分からない伝統が引き継がれていて面白かったですよ」

学生時代の「私」のように最近は、ちょっと上手くいかなくて悶々とする経験は最近あったか尋ねると、「最近はなくなってきてますねぇ(笑)」と大人な表情に。

「何か問題が生じた時とか、自分で解決に動ける行動力があるようになりましたね。ちょっとした失敗をして、悩んだり、考えたりすることはもちろんあるけれど、誰かに相談しなくても自分で何とかなってますから」

共演者には物語の世界観を描き出すのにふさわしい顔ぶれが勢ぞろい。明石さん役に元日向坂46の加藤史帆、小津役に劇団イキウメの大窪人衛、猫ラーメンの店主をお笑いコンビ・しずるの池田一真、相島先輩役にはしずるの純、羽貫さん役には剛力彩芽ほか、個性あふれる登場人物を演じる面々は豪華だ。

「僕が初めてやった舞台が3人での舞台だったから、大勢の魅力的なキャストの皆さんと共演できるのは、楽しみですね。年齢の幅も肩書きもかなりグラデーションがあるカンパニーになるので、ひとつの作品を横並びで作れるのは面白いですよね。原作やアニメの中だと『私』は一人で自問自答を繰り返している印象ですけど、舞台だと思った以上に自分を取り巻く人たちと関わって話が展開していくんですよ。皆さんと稽古しながら会話劇の部分は、作り上げられると思うので、どんなものになるか期待していて欲しいです」

年齢を感じさせない美肌の秘訣は?

伊野尾慧が語る“人生の別れ道” 四畳半で描く無限の選択肢


ヨーロッパ企画の舞台の魅力のひとつに「緻密に計算されたセリフの掛け合いにある」という伊野尾。「夜は短し歩けよ乙女」のアニメ映画の脚本、2021年上演の舞台版の脚本と演出を手掛けるなど、森見作品を熟知した上田の舞台で学びたいことは、台詞のテンポ感なんだとか。

「この間、ヨーロッパ企画さんの舞台を観に行った時に、会話のテンポ感がものすごく気持ち良かったんですよね。独特なテンポの台詞の掛け合いが魅力の舞台でした。なので、僕も今回の舞台で台詞のリズム感っていうところを、勉強できたらなと思っています。どうしてもお芝居する時に、感情で演じる部分が多いですけど。映像でも舞台でも、いろんな役者さんのお芝居観ていると、素敵なお芝居をされるなぁという方を分析してみると、やっぱりセリフのリズム感が気持ちいい方なんですよね。スピード感のある作品だからこそ、この舞台では語感を大事にして挑めたら。怒涛の台詞になりそうなので、気持ちよく台詞を届けたいです」

舞台の情報解禁時には「35歳、大学生役、頑張ります!」とコメントしていたが、年齢を感じさせないフェミニンなビジュアルが魅力の伊野尾。大学生役を違和感なく演じられそうだが、年齢を感じさせない、その美肌の秘訣とは?

「え、美肌の秘訣ですか? やっぱり日焼けしないようにすることが大事なのかな。最近は、日光にめっきり弱くなってる感じがするので、日焼け止めを塗るようにしています。保湿のこだわり?いやいや、そんなにないですよ(笑)。普通に化粧水を塗って、乳液を塗るくらい。いい化粧品を使っていた時期もありましたけど、お手入れを忘れて寝ちゃうこともありますし。でも、やっぱり保湿とか、ちゃんとやってた時の方が、肌が綺麗だったなって。仕事が忙しい時は、“ちゃんと綺麗にしてなきゃ”っていう意識が働くので、仕事があることが、やっぱり綺麗でいられることとイコールな気がします(笑)。何もないと自分の生きたいように生きちゃうからね」

無限の選択の中で揺れている大学生の「私」を演じる伊野尾は、大学院修了の経歴を持ち、建築アイドルとしても知られている。いろんな才能を持ちながらエンターテイナーの道を選択して生きていくことを選択した理由を問うと、グループ愛やファンへの想いがあふれた。

「最初はテレビに出ている人たちって何か楽しそうだなという印象から入ったんですよね。アイドルは、バラエティ番組に出演したり、ドラマでいろんな役を演じられたり、いろんなことにチャレンジできる仕事じゃないですか。飽きっぽい自分にとっては、日々違うことと向き合えるのは、楽しいですね。年を重ねてきて、Hey! Say! JUMPとして積み重ねてきた時間が、本当に尊くて大切なものになってたんですよね。昔はグループがずっと続くのが当たり前って思っていたけれど、ずっと続けていくということは非常に難しいこと。だからこそ、大切なHey! Say! JUMPを続けるために、個人として何ができるかということを大事にして仕事をしていきたい。あとは、長い活動を続けてきて、僕のことが好きで応援してくれてる方々に楽しい人生を過ごしてほしいなという気持ちもあって、皆さんの活力になれるように芸能のお仕事をしていますね」

最後に舞台を楽しみにしている皆さんへのメッセージでは、「チケットを買って下さった皆さん、ありがとうございます!」とまずは感謝の言葉を。

「とにかくすごく楽しい舞台になる気がしています。本を読んだ段階でも、すごく役に共感できる部分があったので、稽古を積み重ねることによって、どんどん進化していく『私』になれると思っています。ぜひ楽しみに劇場に足を運んでいただければ」

<公演情報>
『四畳半神話大系』

原作:森見登美彦(『四畳半神話大系』角川文庫刊)
脚本・演出:上田誠(ヨーロッパ企画)

出演:
伊野尾慧/加藤史帆大窪人衛田中偉登菊池日菜子金子鈴幸町田マリー/
石田剛太酒井善史諏訪雅/内田倭史日下七海ヒロシエリ松尾敢太郎/
池田一真(しずる)純(しずる)/剛力彩芽

【東京公演】
2026年5月17日(日)~31日(日)
会場:新国立劇場 中劇場

【大阪公演】
2026年6月4日(木)~9日(火)
会場:東京建物 Brillia HALL 箕面(箕面市立文化芸能劇場) 大ホール

関連リンク
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2667074(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2667074&afid=P66)

公式サイト:
https://www.yojouhan-stage.jp/

撮影/堺優史、取材・文/福田恵子
ヘアメイク/坂部めぐみ
スタイリスト/寒河江 健(Emina)

提供元の記事

提供:

ぴあ

この記事のキーワード