ストレイテナー、Texas 3000をゲストに招き「好き」を貫いた夜 すべてをつないだ、w.o.d.が示したロックの現在地
Text:横堀つばさPhoto:小杉歩
2026年4月23日、w.o.d.が東京・恵比寿LIQUIDROOMにて自主企画『TOUCH THE PINK MOON』を開催した。メンバーが敬愛するゲスト出演者を招く音楽×カルチャーイベントとして2022年に始動した同企画。5回目となる今回はストレイテナーとTexas 3000を招くとともに、TAISHI IWAMI(SUPERFUZZ)、eitaro sato(indigo la End)、Ken Mackay(w.o.d.)がDJを担当。さらに、メンバー考案のパッタイが提供されたり、シルクスクリーン体験が行われたり、香水の香り漂う会場にモニュメントが飾られていたりと、仕掛けも盛りだくさんである。
聴覚のみならず五感で楽しめるパーティーとして拡大してきた『TOUCH THE PINK MOON』。この背景にあるのは、先人や同期、後輩たちと相互にインスパイアし合う関係の広がりであり、「自分たちの愛するものを知ってほしい」という純然たる願いであろう。いくつものインタビューや作品群を見れば分かる通り、w.o.d.という音楽集団は自らのルーツに極めて自覚的である。だからこそ彼らは、このイベントを通じて「俺らを構成する要素が何なのか」を、ギター/ベース/ドラムにとらわれない形式で表現してきた。
そんなメッセージに共鳴してか、随所を彩ったTAISHI IWAMIやeitaro satoの選曲も実にカラフルだ。The Cribs「Men’s Needs」からkurayamisaka「sunday driver」をつないだかと思えば、My Chemical Romanceとハリー・スタイルズを横断してみせるなど、今宵集ったミュージックラバーたちにさらなる門戸を開いていった。
Texas 3000
さて、巨大な月のモニュメントによってデコレーションされた舞台を最初に踏みしめたのは、東京を拠点に活動するスリーピースバンド・Texas 3000。「ハッ!」と大きく振りかぶった崎山(ds)の一声を合図に、潮混じりの海風を彷彿とさせる乾いたギターが重なっていく。オープニングナンバーは「Connector Fuck Man」だ。パワフルな響きを軸としながら、時につんのめり、折に加速するドラミングが生む得も言われぬテンポ感。ボトルネック奏法を駆使した音の揺らぎを強調するサウンドや、一歩踏み外せば不協和音にもなりかねないスリリングなコードチェンジ。「Bones For Doug」に顕著に表れている、Jojo(vo,g)とkirin(b)の2声がおどろおどろしく重なり、一度の静寂を挟んで再び爆発する構成。
w.o.d.が有するオールドかつグランジーな質感をぐにゃりと歪ませたかのような楽曲群が、「『TOUCH THE PINK MOON』お疲れさまです!」といったラフなMCを挟みながら積み上げられていく。「さぁ、今日はかましましょう!」と締めくくられた「V Ni Ha Naranai」まで、ドリーミーな空気と、筋肉のしなりをそのまま変換したかのような肉体性を融合し続けたTexas 3000。大仰な旋律があるわけでもなく、決して言葉数が多いわけでもない。だからこそ、鳴り響くローな音塊の隙間を突き抜けて疾駆するビートには、切実な痛みと寂しさが滲んでいた。
ストレイテナー
ライブ中盤、「少年だったKenがコピーしてくれた曲を」と「KINGMAKER」をドロップした2番手・ストレイテナー。空気を裂くスラップに快哉が上がった場面からも窺えるように、Kenにとって日向秀和(b)は紛れもないベースヒーローなのだろう。そして、こうした憧れはw.o.d.とストレイテナーを結ぶ糸でもあったはずだ。つまり、この日のストレイテナーに求められていたのは、青春を捧げたバンドが遂げてきた変化と、ロックバンドを続ける意義を提示することだったと言える。
そう考えると、「紹介してもらったわけじゃなくて、自分で見つけたんですよ」とw.o.d.との邂逅を語った彼らは、その期待を見事に打ち返した。序曲「Melodic Storm」から、ストレイテナーはロックバンドとしての情動に満ちたアイデンティティを失うことなく、フロアをかき乱す手法を顕示してみせたのだ。立ち上がったホリエアツシ(vo,g,key)が鳴らす玲瓏なキーボードに導かれ、<嘘みたいな赤い月がぼくを見てる>という一節が今宵のコンセプトと重なった「メタセコイアと月」の壮麗さも見事だったが、特筆すべきは「最後に踊ろうぜ!」と届けられた「KILLER TUNE」だ。ナカヤマシンペイ(ds)の細やかなハイハットと大山純(g)のカッティングで観客の踵を浮かせつつ、サビの<Yeah, yeah>で一気にブレイクへ。「SIX DAY WONDER」で見られた一語一語を置くような歌唱とは異なり、がなりと破裂を含んだホリエの唱法はパーカッシブな役割を果たし、フロアを波立たせていく。ダンスナンバーでありながらリピドーを滾らせるその筆致は、生来のストレートな音像へ電子音を融合させつつある近年のw.o.d.にも通底していた。
w.o.d.
最も自然体でありながら、生と死、そしてバトンタッチの大きなダイナミズムの中でいかにあろうとするかに対峙するステージだった。まず克明にw.o.d.の現在地を映し出したのが、「1994」から「YOLO」を連投した場面だ。
<あなたがくれた アイスのように 平成は空にとけた>という手のひらサイズの話題を時代と自然へ溶かし込むこの名ラインを客席が大合唱すれば、サイトウタクヤ(vo,g)は「分かってるやん」とでも言いたげに不敵な笑みを浮かべる。そもそもシンガロングを前提としていなかったこの曲がここまでの代表曲となっている喜びもひとしおだが、何より「YOLO」を続けたことが重要だ。
なぜなら、1月にリリースされたEP『YOU ONLY LIVE ONCE. EP』収録の同曲は、「1994」のセルフオマージュとも言える要素を随所に含んでいるからである。つまり、2ndアルバム『1994』以降の6年間は、この2曲の差異に凝縮されているとも言えるだろう。そして「YOLO」のクライマックスに配されたラララのメロディーは、3人とファンが築いてきた関係性の発露でもあった。それだけの安心感があるからこそ、「バンドをやってて良かったなと思いました」「好きな人と楽しいことをやりたいだけなんです」という言葉が自然と飛び出すのだろう。ミスをしても一切誤魔化さない理由もよく分かる。要するに、現在のw.o.d.はこれまで以上に赤裸々なのだ。
そう考えると、最新曲「NON-FICTION」で<嘘みたいでも クソみたいでも たった一つだけのノンフィクション><ふざけた世界で 俺らは生き抜くのさ>と歌ったのも必然だろう。「ありがとう、また遊ぼうぜ」とラストを飾ったのは「My Generation」。この楽曲は今や、時代への宣戦布告であると同時に、「俺らのテリトリーを守りながら広げていこう」という呼びかけでもある。揺れに揺れる会場は、w.o.d.が負の感情すら軽やかに乗り越え、仲間とともに歩んできた軌跡を映し出していた。
<公演概要>
w.o.d.『TOUCHI THE PINK MOON』
4月23日東京・恵比寿LIQUIDROOM
LINE UP:w.o.d. / ストレイテナー/Texas 3000
DJ:TAISHI IWAMI(SUPERFUZZ)、eitaro sato(indigo la End)、Ken Mackay(w.o.d.)