くらし情報『興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕』

興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕

興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕


レベッカに影響されて自由思想を掲げるもつねに諦観を纏っている、そんな捉えどころのない“生まれてから一度も笑ったことのない男”ロスメルを、森田が穏やかな物腰にかすかな絶望の匂いを潜ませて体現。どこか魂が浮遊しているような風体が非常に魅力的でありながら、同時にじりじりとした焦燥も誘い出す。ロスメル家の権力を頼り、宗教を政治に利用しようとロスメルを訪ねるのは、亡き妻の兄で保守派のクロル教授(浅野雅博)、そして急進派の新聞編集者モルテンスゴール(谷田歩)だ。ロスメルの家庭教師だったアナーキスト、作家のブレンデル(櫻井章喜)の無礼な訪問も、名家の枷から逃れようとするロスメルの意志に揺さぶりをかける。浅野、谷田、櫻井それぞれの濃くも細やかな人物描写が、ロスメルやレベッカの精神を波立たせていく。そうした政治闘争の話に被せて静かに浮上して来るのは、妻ベアーテの死の真相である。もとはベアーテの話し相手としてロスメル家に来たレベッカが、ロスメルへの思いを語り出し、ロスメルもレベッカの存在について自身に問い質し、罪悪感に苛まれる。時代の世相から男女の問題へと急激に焦点を絞ったイプセンの眼差しに、戸惑いつつも引き込まれずにはいられない。

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