アカデミー賞候補の仏映画『レ・ミゼラブル』。監督と出演者が語る「現代の問題」
フランスの文豪、ヴィクトル・ユゴーの傑作『レ・ミゼラブル』と同じタイトルが大胆にもつけられた本作は、フランスの新鋭、ラジ・リ監督の長編デビュー作。惜しくも受賞は逃したが、本年度のアカデミー賞で国際長編映画賞部門にノミネートされるなど、世界中の映画祭で反響を呼んだ注目の1本だ。
ラジ・リ監督にとって本作は念願の1作だったと明かす。「映画の舞台はパリ郊外に位置するモンフェルメイユ。ユゴーの小説の舞台でもあるこの地域は、いまや移民や低所得者が多く住み、犯罪多発エリアと化している。実は、このエリアで僕は育った。そして、いまも暮らしている。このエリアのリアルな現実をきちんと描いて、世界に届けたいと思ったんだ。
というのも、パリの光と影ではないけど、フランスにはパリの輝かしさとは無縁、貧困化と治安悪化が進む郊外がある。そこにスポットを当てた、いわゆる“郊外映画”がよく作られているんだけど、当事者の僕からすると納得できる内容の作品がほとんどない。実際に暮らしていない監督が作っているからか、とってつけたような社会のイメージやレッテルで語られる。そのエリアに流れている空気や、生きている人間の息吹が感じられない。